より悪くない方を選ぶ
「“光の神”は人間を作り、魔族と戦う力や“勇者”を生み出している敬愛すべき神、だったはず。簡単にまとめると」
「……魔族が先住民族とか、この世界を作ったのはもともと闇の神が作ったもので、魔王は闇の神の化身だとかそこら辺の情報は? 一応王族ですよね? レオンさんは」
「え? いや、俺が知っているのはせいぜい、魔族が都合上人間をある程度存続させた方が良さそうだからとか、実は歴代勇者は魔王を倒せてなくて結構酷い目にあっているとかそれ位しか知らない。そういえば、さっきカノンが勇者は魔王への嫌がらせとか何とか言っていたな……」
そうレオンに言われて、ルカは少し黙ってレンヤの方を見ると、
「……人間は寿命が短いから本当の事が消えていったのだと思う。そして人間にも都合が良く魅力的な話に変わり一般に広がっていると。それに、人間が自分を讃えるのは当然だと“光の神”は思っていたから」
「でも、人の王族には多くの本当の話が代々受け継がれていたはず。現に魔王が倒されていない話やその他諸々を知っているし……何で一般人が信じていそうな話の方を……」
その、ルカの一般人云々の話を聞いてレオンはああと納得がいった。
「あ、そういえば俺、予知能力が無いからって事であまり相手にされてなかったような気も……」
「いえ、それでも一般人の話を聞くような機会なんてあまり無いはずです……よね? あ、もしや今旅をされている間に?」
「いや、まあ剣とか魔法やらその他の勉強は一通りしたが、あの城が俺には居心地が悪くて小さい時からしょっちゅう抜け出していたし、その時に聞いた気もする……カノンに会ったのもその時だったんだよな……」
そう懐かしげにレオンは目を細める。
あの時俺は若かった。
そして青かった。
何で初めてカノンに会った時、あんな偉そうな態度をとってしまったのだろう。
理由は分っている。
カノンに一目ぼれしたからだ。
その後も取っ組み合いの喧嘩をしたりして……そういえばカノンが記憶操作をして利用した幼馴染の魔族とのハーフはカノンの友達でもあったはずなのだが……あの様子を見るとすっかり忘れている。
魔王であるカノンと人間である自分達の時間の流れは違うし、一時外に出ているのがばれて、その後ほかの方法で城を抜け出す力を手に入れるまで時間がかかり、そしてその頃にはカノンはそこから居なくなっていて。
一応、もしもの事も考えて告白だけしておいたから、でも、結局返事はもらえなくて……。
まさか魔王だとは思わなかったんだ。
お見合いから逃げたのだって本当はカノンを探すためで、何の手がかりも無い事だって分っていてそれでも諦め切れなかったから。
そうして、偶然が微笑んで今の状況になったから。と、
「……大体の事は分りました。でもそんな頃からレオンさんはカノンさんが好きだったのですね。だから歴代勇者が酷い目に魔王に合わされることを知っていても、カノンさんが好きなのですね?」
「ああ、カノンの事はよく知っているから。それに、その前の代の魔王が勇者ととても良い関係らしくて……」
「トリューカースですね……確か彼の代で、特に人間との戦闘を甘くせざる負えなくなったと聞いています。何でも倒される人間が血だらけになっているのを見て卒倒して、トラウマになったとかで。だから、今も四天王との勇者との戦いは選んでいるとはいえ“客人”扱いだと聞いていますが、どうでしたか?」
「……確かに、“客人”扱いだったな。と言うか言われたし」
「……我の父と我の代では、ある一定以上の力があるか見定める方式に戻しました。それでもその前の前の代といった昔よりは甘くなっています。……でも、それならば安心です」
「何がだ?」
「レオンさんがカノンさんを大好きだから」
「はは、ライバルが多いけれどな。四天王のやつらも狙っているし、ホーリィロウだって……」
「以前も言いましたが、レオンさん、貴方が思っている以上にカノンさんは貴方に囚われているのですよ? それに、どれ程憎しみの過程を経たとしても、勇者は魔王を魔王は勇者に惹かれる。光と闇はそういうものです」
その勇者という言葉に、レオンは自嘲気味に笑った。
「さっきカノンに、強い勇者になって、僕の所に着てって言われた。はは、俺は本当は勇者ではないのに……出来ない事を人に要求してはいけないっておもうけれど、これも全部俺のついた嘘が原因なんだよな」
「……ならばもっと強くなればよいのでは?」
「……カノンの魔法の質を見ていると、とてもじゃないけれど人間に敵うのかなと思う」
「ああ……それは、事情により魔族が人間の文明の発達レベルを調整しているから……“光の神”から魔王や魔族を守るために。ただ、最近魔法に特化してもどうなんだろうなと。我みたいに体力その他もろもろの接近戦が非常に弱くなってしまったし」
また凄い話を聞いてしまってレオンはどうしようかと思うも、考え方を変えるとそれは、
「……魔族の事情も複雑だな。あっちを立てればこっちが立たず。それに、簡単に善悪と割り切れないのも現実だし、より悪くない方を選ぶ……そうだな。俺だってカノンを絶対に口説き落としたいからこうがんばっているんだし……多少の嘘は仕方がないか」
「そうですそのいきです!」
そうルカがレオンを応援する。
そうなのだ、多少の嘘は仕方がない。それでも欲しいと望んだのはレオンなのだから。
レオンは、カノンの願いは叶えてやら無いのに、カノンの事は奪うつもりだ。それでも、
「……こんな魔王なんて大きな存在に俺の手が届くだろうか?」
「的は大きい方が当てやすいであろう?」
そう悪戯っぽくルカに言われて、それもそうだなとレオンは思った。
考え方一つでこんなに変わる。
「よし、また俺もがんばって、カノンに揺さぶりをかけるぞ!」
そう元気良くレオンが叫ぶと、ルカが微妙な顔をした。
「それは少し控えたほうが良いのではないかと。さすがに、カノンさんが気の毒です」
「ふふふ、完全に逃げられなくなるまで獲物を追い詰めてしまえば、逃げられなくなるだろう?」
「えっと、多分カノンさんはもうすでに自分が獲物で、追い詰められていることも薄々感づいているんじゃないかなって我は思うので、手加減を……」
「分った」
そうどう考えても約束を破るようなにこやかな笑みで、レオンは頷いた。
それにルカはどうしようとレンヤを見るも、レンヤは何も言わずに、けれど大丈夫だよと言うかのようにルカの手を握った。
それにふわんと安心したようにルカが笑う。
よし、これ以上はどうこう言われないぞとレオンは確信して、そういえば何か忘れているような気がして、そして思い出した。
「そういえば予知について、話すことがあったんじゃ無いのか?」
次回、一時間後。よろしくお願いします。




