全部お前が悪いんだ
ルカが、頷いて話し出す。
「予知能力に関してはどうして魔王である我に在るのかについては、以前話したように……」
「ホーリィロウには嘘だって言ったんだろう? どこまでが本当なんだ?……と聞いてもいいんだが、答えられないだろう?」
「ええ。そして出来ればあの技は使わないほうが良い」
「“光の神”に乗っ取られるからか?」
「それも含めて、危険性がある限りは排除したほうが良いと我も思うのです。多分杞憂に過ぎないと思うのですが……そうだな? レンヤ」
「そうだな」
ルカがレンヤに問いかけてると、頷く。なぜ彼に聞くのだろう。
レオンが不思議そうな顔をしているからだろう、ルカが説明を付け加えた。
「その、レンヤは“勇者”なので、そういった事に詳しくて……」
「……分った、そういう事にしておく」
「助かります」
「それに、なんかあの力を使うと体に負担が大きいし」
「はは、我もあの力を使っていた頃は、表情が出せなくなりましたから」
「ちなみに、どれくらい先まで見えるものなんだ? ミランは一日と言っていたけれど」
「一ヶ月です」
さらっとレベルの違いを見せ付けられて、レオンは何だかなと思った。
本当に魔王という生き物は規格外で想像を超えている。けれど、
「そんなに力を使っていたのなら、封じられて支障をきたさなかったのか?」
「……初めは戸惑いましたが、でも、何も見えなくて手探りなのも幸せだと思います。我が予知能力を持っていることを知られた時点だ悲惨な結末しか見えなかったから」
そう悲しげにルカは笑って続ける。
「確かにこの力を使って数多の結末を見続けたことで、他の魔族よりも多くの経験を得て、そしてよりよい方向に導けたと思う。けれどそれはずっと一人で戦わないといけない事であったから……それでも大切な父様や四天王や、魔族達を守れたからそれはかまわなかった。でも、それを封じられてほっとした自分がいるのもまた事実で、未来が分らないのも楽しいのも事実で……それにレンヤと居る今が幸せだからそれで良いと思っている」
そういうとレンヤががばっとルカを抱きしめた。
小さくごめんとレンヤが謝っているがなぜだろうと思うも、とてもルカは優しげで、二人は本当に思いやっているのが見て取れる。
そこでレオンの腕の中のカノンが小さく呻く。
「話はそれで終わりか? そろそろカノンをベッドに連れて行きたい」
「あ、はい、すみません……カノンさんをよろしくお願いします」
そう、ルカはレオンに言ったのだった。
宿に戻ると、トランとイオがすでに眠っている。
起こさないように静かに扉を閉めて、ベッドの上にカノンを寝かせる。
窓から差し込む月の光に照らされたカノンの肌は驚くほど白く滑らかで、そのほほにレオンは手を触れた。
幼さが垣間見える穏やかな寝顔。
きっと温泉で言ったことはカノンは覚えていないだろう。
その願いをレオンは叶えられなくて、けれどカノンの事は絶対に手に入れる。
酷い事だとレオンは思うが、だからといって止めるつもりも無い。
そしてレオンはカノンの優しさも強さも知っている。
一緒に旅をして、幼い時に出会って触れ合ったあの時と少しも変わっていなくて、だから余計に欲しくて堪らない。
全部レオンを魅了するカノンが悪いのだ。
こんなにもレオンを夢中にさせて、今更余計に逃がしてやれない。
初めから逃がすつもりなんてさらさら無かったが。
「カノン、愛してる」
そう囁いてレオンはカノンにキスをして、ふと悪戯心を起こして首筋にキスをしてきつめに吸ってやる。
白い肌に赤い跡が残る。
さて明日が楽しみだなとレオンは、そっとカノンを抱きしめてその日は眠りについたのだった。
次回、一時間後。よろしくお願いします。




