実は……
「ええっと、ルカちゃん何の事かなぁって、思ったり?」
口を引きつらせながら、イオが問いかけるも、
「いや、取り繕わなくて良い。そもそも記憶操作の魔法は悪くて効かないし、効いた所で三日程度しか効果が無い」
「「「は?」」」
一同がえっという顔をした。
それに困ったようにルカが続ける。
「多分カノンさん……お祖父様は、気付いていない。これまでもずっと、今回のように周りにいる人間が、かかったふりをずっとしていたから」
それに再び一同黙ってしまう。そんなレオン達に、ルカは微笑んで、
「お前達には礼を言う。お前達がいるから、お祖父様はとても楽しい思い出を得られただろうから」
「……ルカちゃん。ルカちゃん、今、お祖父様って言わなかった、カノンちゃんの事」
「うむ、言った」
その途端、イオが真っ青になりトランを見て、それから二人はレオンの様子を伺った。
しかしレオンに、特に落胆した様子は見られない。
何でだろうと二人が思っていると、レオンが二人に苦笑して、
「心配してくれて嬉しいが、ルカは未来から来たのだろう?」
「うむ」
「だから問題ない」
そうきっぱりと答えるレオンに、ちょっととイオが突くと、レオンは肩をすくめて、
「……自分が創った孫だと確信が持てるなら、カノンはルカに対してもっと親馬鹿になっているだろうさ」
「ああなるほど。うん、そうだね。いやー、びっくりした」
そう頷くイオとレオンに、逆にルカは冷や汗をたらして、
「……我は、お祖父様に信用されていないのでしょうか」
「いや、信用されていると思うぞ? ルカの事を凄く優しげに見ていたし。ただ、今は自分に似た友達にあって大好き、というレベルのような気がしなくも無い」
「……確かに以前あったお祖父様は、もっとスキンシップが凄くて……言われてみればそうかもしれない」
考え込んでしまうルカ。それがカノンにそっくりで、レオンは知らず知らずに頭を撫ぜてしまう。
「むう」
呻って大人しくなぜられているルカ。
それがカノンと違った意味で可愛く見えて、レオンは笑みが零れてしまう。
「……そういえば、カノンはルカの祖父なのか? だったら、カノンの伴侶に会った事があるのでは?」
「……未来が変わると困るので我は答えられない」
表情から読み取ろうとレオンはするも、ルカはにっこりと笑ったまま。
カノンよりも扱いにくいなと、レオンは心の中で舌打ちをする。
そしてレオンに余計な事を聞かれない意味もあって、ルカは問いかける。
「それでも、お祖父様とどうして一緒にいるのか」
その問いかけに、まずイオが答える。
「……何となくカノンちゃんは放っておけない感じがするから」
それに同じくとトランが答える。
次ぎにルカはレオンの方を探るようにじっと見て、だからレオンは、
「もちろんカノンの体目当てさ!」
と答えた。
そんなレオンの様子を、居心地が悪くなるくらいルカがじっと見てため息を付いた。
「人間は魔物を恐れる。けれど光は闇に恐れと同時に惹かれるもの。魔物が人間にとって恐ろしい時代に代わりは無い。そして我やお祖父様はその魔物達の長なのだ。恐ろしく脅威を感じないのが不思議だ。その好意が気の迷いかもしれないと、我は不安になる」
「でもルカからもカノンからも、恐怖を感じないんだよな、そう思わないか、イオ、トラン」
「そうだね、確かに初めは半殺しにされて凄く怖かったけど、今は平気」
「……俺も、なんだかんだで俺たちのためにカノンが奔走してくれるから……」
そんな三人の様子に、ルカがふっと笑った。
「……そうか、そうか……。ただ、我が言っても信じてもらえるか分からないが、お祖父様はお前達をとても信頼していた。我が聞く限りではな」
「「「!」」」
「だから、これからもよろしく」
そう微笑むルカはとても綺麗で、つい跪いてしまいそうな高貴な生き物に見えた。
そこでレオンが思いついたように問いかける。
「俺たちのところに来たのは予め決まっていることなのか?」
「うむ、聞いた時はお祖父様の冗談なのだと思ったのだが、実際こうなってしまって……。そう、魔王カノンカースが貴方と旅している時に、我に会ったと聞いていたのでな、それもあって会いにきたのだ」
「それで帰る方法はまったく分からないのか?」
「いや、想像はつく。付くのだが……もしかしたならまだ出来ていないかもしれぬのだ。それも含めて一緒に行動させて欲しい」
「ああ、うん、分かった。所で、俺にはカノンに脈はあるのか?」
「……我は、黙秘します」
レオンが聞くと相変わらずルカはにこりと笑い答えない。
だから、50%の確率で、ルカはレオンの孫の可能性もあるんじゃないかと心の中でレオンは自分を慰めた。
そこで、イオがぽんと手を打った。
「所でルカちゃんは、何で自分の事を我っていうの?」
「……えっと、我の事が怖くないのかなって思うわけで。一応魔王なのだが」
「なんかあれだよね。カノンちゃんに似て、間抜けというか可愛いと言うか……」
「間抜けって何だ」
「敵に思えないんだよね。レオンもそう思わない?基本カノンちゃんにそっくりだし」
「そうだな」
そう頷くレオンとイオをルカは衝撃を受けたように見て、最後にトランを見ると同じように頷いていた。
それにカノンは衝撃を受けたようだった。
「ひ、酷い。ただでさえ、我は人間に侵攻しないから、影が薄いとか散々なのに。威厳を保とうと思って、僕ではなく我って言っているのに……」
ルカという魔王は悲しそうだ。
そんなだから、怖がられないんじゃないかと皆は思いはしたが言わない。
だってこの方が可愛いし。
ひとしきりルカは嘆いた後、
「はあ、仕方が無い。では、一応このまま、お祖父様は魔王と気づかれていないという事でよろしいですか?」
ため息をつくルカにレオンは頷く。
「そうだな。じゃあ、今まで通りだな。しかし薄々そうじゃないかと思っていたが全員そうだったとは」
「僕も、トランもレオンも分かっているんじゃないかなって思ってた」
「何でだ、イオ」
「だってレオンは強くて優しいけれど、そんなに甘くないから。それも考えて、カノンちゃんの事本気で落とそうとしていたの、見ていれば分かるし」
「……そっか」
レオンは困ったように笑って、イオに問いかける。
「俺、そんなに色々考えているように見えるか?」
「考えていないと思っているから、カノンちゃんががんばっているんだけど、どう思う?」
「よし、それで行こう!」
そう答えるレオンに、ルカは引きつったような笑みを浮かべる。
そこでドアからカノンが入ってきて、レオンが嬉しそうに近づいていく。
だからすれ違いざまにレオンにルカは囁く。
「予知については後ほど」
それに分かったと表情を変えずにレオンは小さく頷いてカノンへと抱きついたのだった。
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