考えても仕方が無い
ホーリィロウの部屋にやってきたレオンだったが、まず初めに聞いておきたいことがある。
「あのレンヤ達と話してみてどうだったんだ?」
その問いかけにホーリィロウは押し黙り、躊躇したように答えた。
「……アレは一体なのだというのが正直な所です」
あの時レンヤから恐ろしい魔力と殺気を感じた。
確かに以前カノンを挑発した時に感じた恐怖に似ている。
太刀打ちできないと感じるそれだ。
けれど、その答えにレオンは首をかしげる。
「そんな感じは俺はしなかったが……何かやったのか? ホーリィロウ」
「……捕まえようと思って、ルカというカノン君に似た魔族を攻撃しようとしましたが」
「あ、それは仕方が無いな。そういえばルカに手を出そうとしたといってレンヤが怒っていたな」
当然のように頷くレオンに、ホーリィロウは微妙な顔をして、
「……いや、レオン様。それでもアレはやりすぎなのでは」
「……もし俺がレンヤと同じ立場でカノンに対してそんな事をする輩がいたら、同じようになると思う。そもそも傷つけられたり殺されないという保証もないし」
「同じ人間なのに」
「あのルカはレンヤの恋人だ。それも、ルカにぞっこんだし。それなのにそんな事をして……むしろよく無事だったなと」
「……ルカという魔族がレンヤを宥めてくれて」
「……今の所こちらと争うつもりが無いという事だろう? でなければルカが止める理由は無い」
そうでなければ叩き伏せられるかそれ以上の事になっていたはずだ。
あのレンヤの心の狭さはレオンにも身に覚えのあるものだから、どうしようとするのかは大体予想がつく。
けれどそんな事は分からないホーリィロウは、レオンの気楽な様子に溜息をつく。
彼らが信用に足りるかどうかだと分からないのに。
それを気付かせるために、ホーリィロウはレオンに言う。
「……人の王と魔王の血が交わるのは嘘だと、ルカは言っていましたが」
「そうか、それは残念だ」
「……あまり驚かれないのですね、レオン様」
「あの二人の話を完全に信用は出来ないだろう? 嘘だと誤魔化したのかもしれないじゃないか。それでも、何となく俺はあの二人に、特にルカには好意を持っているが」
「レオン様!」
「お前は考え過ぎなんだよ」
「……あのですね、できるだけ自然にレオン様達と接触できるよう、怪しいキノコを狩った後、どのような話をしているのか人を派遣して監視して、情報を流してもらって、酒を買占めたりしていたわけです。僕達は。そしていつまでも勇者の真似事をさせておいても仕方が無いので、一番大丈夫な風の四天王と一番最初に勝負させて戻ってもらう予定だったのです。……結局カノン君にレオン様が気に入られて、惰性的に……」
「あんまり真剣に考えると禿げるぞ」
「誰のせいですか、誰の」
「少なくとも俺のせいではないな!」
ホーリィロウは肩をすくめるレオンを見て、それ以上何も言わなかった。
「監視ばかりでカノン君に接触する機会も無い。はあ」
「いい加減諦める気は無いのか?」
ちょっと余裕がありそうなレオンに、ホーリィロウは恨めしそうに付け加えた。
「レオン様こそ諦めて、ミラン様と……」
「い、嫌だ。寒気がする」
「いや、意外にあの方もレオン様には特に優しい気が……」
「だから、何処がだ! 酷い目に合わされた気がしてならない!」
「ただ最近、ちょっと様子が変なんですよね。……まるで誰かから入れ知恵されたかのように、あんなものを作って」
「? 何の話だ?」
「いえ、こちらの話です」
そう話を切ってしまうホーリィロウ。
そもそもレオンはミランは嫌だ。レオンが嫌がるように、蛇のおもちゃを衣装棚に仕掛けたり、怖い話をしてレオンを怖がらせて、おかげでその日はレオンはミランに引っ付いたままだった。
何であんな事をするんだ。
それにミランの奴、カノンを側室に誘ってたし。
カノンはレオンがずっと狙っている獲物なのに、ぽっと出て掻っ攫おうなんて。……まあ、ミランはそんな事を知らないだろう……ああ、ホーリィロウ経由で伝わっているのかもしれない。
それでも、百歩どころか一万歩でも足りない位譲ったとして、取られるにしてもカノンを本命にしないこと自体が許せない。
と、そこまで考えて取られるつもりが無いから考えるのは無駄だよなと、レオンは思い直した。
そんな様子を観察していたホーリィロウは、ミラン様に勝ち目は無いなと思いつつ、
「……まあ良いですけれど。どうせ今は様子見しか僕は出来ませんし」
「お仕事ご苦労さん」
「……レオン様、そろそろ城に戻る気はありませんか」
「全然ありません!」
そう、元気良くレオンは答えて、ホーリィロウの部屋から逃げ出す。
そんな様子を見てホーリィロウは溜息を付いた。
「勇者って普通は魔物倒していれば良い職業のはずなんですよね、はあ」
そんなホーリィロウを仲間達が慰める。
こういう時ほど、良い仲間がいて良かったとホーリィロウはしみじみと思ったのだった。
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