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抵抗は無意味だ(2)

 カノンがピシッと凍りついたように固まった。

「あ、それは俺も聞いてみたいな」

 と、にまにま笑いながらレオンが続けるも、

「……だったら、レオンはどうなんだ? レオンが答えるなら僕も答えても良いぞ」

「俺? 以前好きな人がいるって話しただろう?」

「え?」

 その言葉に何故かルカが反応した。そしてとても不安そうに、

「あの……それは我も知りたいかなと」

 と言い出す。何でだろうとレオンはいぶかしむも、まだカノン本人の前で言えない状況なので、

「……そうだな、ルカみたいな人かな」

 と言ってみた。

 だってルカはカノンにそっくりだし、何処となく性格も似ているから、嘘は言っていない。のだが、

「レオンさん。後で少しお話が」

 レンヤがにこやかにそう告げた。しかもさん付けだ。目も笑っていない。

 なので慌ててレオンは続ける。

「いや、そういう意味じゃないから。銀髪の人が好きだというだけで……」

 そういうレオンにカノンがにこやかに付け加える。

「そうそう、レオンは昔から好きな銀髪の人がいるんだよね」

「うん、間抜けだけれど気が強くて優しくて可愛くて綺麗で……ずっと好きな人なんだ」

 それを聞いてレンヤは大人しくなる。

 誰の事を言っているのかがわかったから。

 一方、カノンはそれを聞いて憂鬱な気持ちになる。

 それでもどれを悟られるのは悔しいから表面上笑っているように装う。

 何がいけないんだろう。僕の何がいけないんだろう。同じ銀髪なのに。

 そんなどろどろとした醜い感情が蠢いて、カノンは胸が締め付けられるようだった。と、

「じゃあ、カノンはどんな人が好きなんだ?」

「そ、それは……」

「俺も幼馴染として知りたいし」

 と答えつつ、そんな男やら何やらが来たら、カノンとフラグが立つ前に追い払ってしまおうと思った。

 そんなカノンはチラッとレオンの事を見つつ、レオンにはもう少し強くなってほしいかな、と思ったので、

「……弱い奴は嫌い強い奴が好きかな」

 しかし、その言葉にルカがダメージを受けていた。

「あ……そ、そうですか。弱い人は……」

 そんなルカの様子にカノンははっとする。

 そういえばルカは今一般人と同じになっていたのだった。しかもこんな自分の知らない世界に飛ばされて心細くないはずが無い。

 なのでそんなルカを慰めるようにカノンが、

「違うから、ルカは特別だから。別にレオンにもう少し強くなって欲しいから言ってみたとかそんな理由だから、て、何をやっている!」

 悲しそうなルカを慰めるように、レンヤがルカの髪を一房掬い上げてキスをする。

 ルカの顔が真っ赤になった。

 カノンも別の意味で真っ赤になった。

 そんなカノンの様子と、ルカにぞっこんなカノンにちょっと悔しさを覚えて、ついでに今の様子から色々推察して、カノンの長い銀髪を一房掬い上げて、ちゅっとキスをする。

 そして、レオンはカノンを見上げると、カノンはレオンの方を見て顔を真っ赤にしてあうあう言っていた。

「な、なんで……」

「して欲しいのかと思って。羨ましそうに見ていたから」

「ば……そんなんじゃなくて……」

「嫌だったのか?」

「嫌……では無い……かも」

「なら良いじゃないか。それよりご飯食べよう」

 と、なんでもないことのようにレオンが続けると、カノンが何か良いたそうでそのまま自分の目の前の果物に思いっきりフォークを突き刺した。

「……どうしたんだ、カノン」

「……別に」

 本当にレオンは鈍感だとカノンは思う。

 本当に、こんなにレオンに触れられるだけで動揺するなんてカノンは自分が信じられなかった。

 たかだかキスで。それも唇ではなく、髪にするだけで。

 キスなんて親愛の証でしかなくて。

 それではもうカノンは足りなくて。

 そこまで考えてカノンは恐ろしくなって、自分が違うものに変わってしまうような気がして、考えるなと心の中で繰り返す。

 どうしてこんなに心を乱されるのだろう。

 そこで、ルカがレンヤの頬についたソースをぺろりと舐め取る。

 そんなルカの様子にレンヤは目を細めて微笑みながらも何処か熱を帯びた瞳でルカを見て、そのままちゅと唇にキスをした。

「ああー!」

「カノンちゃん食事中」

「でもイオ、ルカにキスして……」

 そんな、そこまで信頼しあっているのが、カノンには何か許せなかった。ルカが取られてしまう気がして。

 けれど、イオがため息を付いて、

「恋人同士だから良いじゃん……カノンちゃん?」

「恋人同士ってキスをするものなの?」

 全員が黙った。気まずい空気がそこら中に流れて、カノンが独白するように、

「……キスは信頼しているからするものだって聞いた。舌入れたりするのももっと信頼しているからだって」

 以前人に紛れてパーティにはいった時たまたまそういう現場に出くわして、そう聞いたのだ。

 カノンは人間のパーティに紛れて、彼らから様々な事を教わった。

 彼らは嘘は言わない。でも、この反応は……。

 そう悩むカノンにレオンは軽く肩を叩いた。

「うん、間違ってはいないぞ。カノン」

「本当に?」

「本当だよ」

 恋人同士は信頼しあうものだから、間違ってはいないからな、とレオンは心の中で舌を出す。

 けれど、カノンはほっとしたようだった。

「そっか、そうだよね。じゃないとレオンと恋人同士になっちゃうし。レオンには好きな人がいるから、僕とそうなったら困るし」

「……そうだな」

 そう言われるとそれはそれでレオンはがっかりする。

 もう少し、カノンも俺に夢中になってくれないかなと思って。

 けれどそういいながらカノンの手がレオンの手をぎゅっと握った。

 まるでレオンをその見知らぬ恋しい相手に取られまいとしているかのように。

 それには何も言わず、レオンは手を机の下で握りながら食事をする。

 そんな二人の様子をルカは複雑そうに見ていたが、テーブルの下で手を握り合っているのに気付いて、優しげで嬉しそうな笑みを浮かべた。

 そんなこんなで食事やら雑談をして……全てが食べ終わった頃に片づけをしながらイオが言いだした。

「さて、それではルカちゃんとカノンちゃんには、逃げられないうちに着替えてもらいましょうか☆」

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次の更新は未定ですがよろしくお願いいたします。

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