抵抗は無意味だ(1)
「いやぁあああああ」
「ははは、良いではないか良いではないか」
「良くないぃぃぃ――!」
悲鳴を上げるルカに、楽しそうなイオの声。
ちなみにカノンはこの時、床にぐったりしおり、ぴくぴくと体を弛緩させていた。
事の起こりは歓迎会に起因する。
「ルカちゃんもカノンちゃんと同じで、果物しか食べないの?」
「ええっと、我は……人との混血が進んでいますので、何でもたべることができる……ますです」
「じゃあ、これとこれとこれで良いかなー」
と、イオが料理を取り分けて渡すと、
「ありがとう」
ふわりと優雅に、ルカは花が綻ぶように笑う。
その綺麗さに、イオは思わず固まって見惚れてしまう。
何だこの生き物は。
「……あの、我の顔に何かついているのでしょうか」
「あ、ごめん。顔はそっくりなのに、ルカちゃんはお嬢様のような気品があって、カノンちゃんは粗暴な感じだから」
「粗暴って何だ」
そのイオの言い草に、カノンは半眼で突っ込みを入れた。と、
「ううん、カノンちゃんはそのままで良いんだよ? ちょっと生意気な感じとか、こう、征服欲をそそる感じがちょっといじっても良いかなって気になるし」
「良くない、全然良くない!」
「いやー、美人さん二人でタイプが違うって本当に美味しいな。絶対踊りを教えてあの衣装を着せたい! そう思わない、トラン」
と話しを振るとトランがカノンとルカの二人を見て、カノンに向って、
「……すまない。多分今回も止められない」
「いや、止めてすらいないだろう、トラン! 本当にイオを止める気があるのか!」
「実害が無いから」
「あるよ! 大有りだよ!」
「でもレオンは喜んでくれると思うが」
カノンがくるっとレオンの方を見た。
じっと見つめるその目は、レオンは違うよねと言って欲しいように見えた。
カノンの潤んだ瞳に少し赤みのさした頬。
少し突きたくなるような可愛さがあり、レオンはくらっとした。
なのでレオンは、自身の欲望に従った。
「うん、着てほしいな。カノンには。この前だって可愛かったし」
「……可愛い」
「そうそう」
「だが断る」
「何でだよ、良いじゃないか!」
「恥ずかしいもん!」
「俺は恥ずかしくない!」
「当たり前だー!」
そう怒ってカノンはぽこぽこと、レオンをばかばかたと叩く。
そんなに力が入っていないので、痛くもなんとも無いのだが……最近カノンが特に可愛い仕草をレオンにするようになって、嬉しい反面困りものだった。
本当にもう……。
「だから聞いているのか、レオン……て、レオン?」
不思議そうに覗き込むカノンは無防備で、簡単に押し倒せそうに見えた。
そこで、ぽんとレオンが肩をたたかれる。
見るとトランが君の気持ちは良く分かるが止めておけという様に、生暖かい目で見ていた。
……分かっているさ、そんな事。
ため息を付いて、後ろ髪を惹かれるように目の前の料理に目を移す。食欲が無い。肉なのに。
そんながっかりしたようなレオンを見つつ、イオがとんでもない事を言い出した。
「所でさ、前から聞きたかったんだけれど、カノンちゃんの好きなタイプってどんな人なの?」
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