設定は読み飛ばす主義(2)
料理を注文して、その待ち時間にレオンは自分にそっくりなレンヤに聞いてみる。
イオとトランは厨房の前で待っており、ここからは話し声は聞こえない距離だった。
「レンヤは勇者でルカの恋人……それで間違いないな」
「はい、そうです」
「けれど何で、カノンはあんなに敵意むき出しなんだ?」
「……俺は人よりも勇者の力が強いので、それに反応しているのかも知れません。ルカが攫われて、俺も焦っていましたから……そうですね、少し抑えることにします」
そう、レンヤが答える。
同時に、レオンはレンヤから感じていた居心地の悪さというかプレッシャーが弱まるのを感じる。
力に対する無意識の恐れかと思って、自分は弱いなとレオンは悲しくなりはしたが、
「それで、聞きたいことは俺達が未来から来たということでしょうか」
「ああ」
「……先ほど、ホーリィロウという勇者にもお話しましたが、それを証明する手段が俺達にはありません」
「ホーリィロウにあったのか? 良く俺達と一緒にいるのを許したな、あいつが」
「力が強いので彼らでは制御できないと判断したようです。……本当に、ルカに手を出そうとて……」
「え?」
「いえ、貴方に俺たちが何か危害を加えるのではということだそうです。得体の知れないもの達ですから、俺達は」
「なるほど。……それで、魔王繋がりで頼ってきたのか?」
「……そうですね、それもあります」
「他には?」
「……全てが終わった時にわかるかと。今はお話できません」
「……そうか」
そこで会話が途切れる。
よくよく考えれば、ルカから聞きたい事の方が多い気がする。それに、
「あの、ルカという魔王はなんでカノンにあんなに可愛がられているんだ? さっき会ったばかりだろう?」
「魔王の血はは特別ですから。基本的に魔王は一人の子供しか作れず、その姿は瓜二つで、血筋の者を本能的に理解して可愛がる性格を引き継いでいるのです」
「……要するに、親馬鹿のようなものか」
「そうですね」
「……嫉妬しそうだ」
「俺もです」
微妙な空気が流れて、レオンが試しに話してみる。
「……あの二人は可愛いから目の保養だし、嬉しそうなのも良いんだが、カノンがルカにかまってばかりだと、俺にもかまってくれって思うんだ」
「同感です。ただでさえ、魔王城の地下牢にルカを閉じ込めて、俺だけを見て、俺だけに笑いかけて、俺だけに話しかけるように独り占めしたいのに」
「分かる分かる。カノンにも俺だけを見て欲しいって思うし。それにまだ俺達は恋人同士じゃないし」
「え?」
「人間と魔王だから」
「ああ、なるほど。けれど手に入れるのでしょう?」
「当然さ。そのために色々と揺さぶりをかけているわけだし。……力ずくでどうこう出来ないし」
そう自嘲気味に、レオンが笑ってみせる。
好きで好きで夢中なのに、カノンはまだ手に入らない。
それに何かを思い出すようにレンヤが答える。
「……片想いの期間は辛いですね」
「レンヤはどうだったんだ?」
「気が狂いそうでした。あの頃俺はまだそんなに強くなかったですから、努力すればするほどルカが遠のいているような気がして」
「切ないな」
「切なかったです。けれど、その分今はとても幸せです。ルカも俺の事を愛してくれているから」
さらっと惚気るレンヤに、レオンは羨ましさを感じる。
自分と似た姿のレオンと、カノンに似たルカ。
この二人が恋人達のように自分達はなれるのだろうか、なりたいとレオンは思う。そして、
「でもあの二人は本当に仲が良すぎる」
「そうですね」
「……協力しないか?」
「ぜひ」
そう、レオンとレンヤは握手した。
心が狭い二人の同盟はこの時成立したのだった。
「所で、どうして俺とレンヤはこんなに姿が似ているんだ?」
「……俺の祖先が、王家の傍流の姫が駆け落ちしたそうです」
「なるほど。なんか王家の人間は、光の神と似せているとか何とか言っているから、ここまで似過ぎていると俺の子孫なのかと」
「残念ながら違います。……違わないと困る」
「え?」
「いえ、他に何か聞きたいことがありますか?」
さっと話を変えるレンヤに、まだ何かあるなと思うも今は聞かずにいる。
まだ今日会ったばかりだから、これから聞けば良い。
「……ルカの予知能力について何か知っているか?」
「あれは、ルカを見つけるための指標だったと思います」
「誰が?」
「……俺とルカが出会うための、仕組まれた運命のようなものです」
出会うはずの運命だったという詩的な表現で、惚気られているのだろうかとレオンは思った。
そういうよく分からない詩的な表現をしているような人間がレオンの身近にいた。
そう、ホーリィロウの事だが。
いや、そういう人に突っ込みを入れるのも可哀相なので、レオンはあえて聞かなかったことにして、別の不安を口にする。
「よく分からないが、予知能力は方の直系のものだったはず。それとも、俺がその力を受け継がなかったから……」
「いえ、確か貴方の後からは直系の者に発現したはずです。現に俺の時代の王子も、その力を持っていましたから」
「そうか、それなら良かった」
そう答えながらあれと思う。
「魔王は魔王の子を一人しか生めないってさっき言っていなかったか?、それに予知能力が俺の直系に発現しているって……俺は、カノンを手に入れられないのか?」
そんな恐ろしい事実に、レオンがうなるも、レンヤは肩をすくめた。
「……嘘を言うと綻びが生まれますね」
「嘘をついたのか?」
「……未来が変わると俺達は困るので、あまり話せないのです」
「……そうか、で、どれが嘘なんだ?」
「ご想像にお任せします。……ですが貴方に予知能力が無いのは、俺にも責任がありますから」
「? ……どういう事だ?」
「すみません。これにも俺は答えられない」
そう困ったように笑うレンヤにレオンは推測する。
確か王家の傍流の姫がとレンヤが言っていたから、ミランの血筋ではないかと。そしてミランに予知能力が渡っていたから、俺にも責任があるとレンヤは言っている?。
嘘だといったり、何処までが本当の事なのか。
けれど、カノンとの事は協力してくれるとの事なので、幾つか聞き逃した事もあるが今はそれでよしとしよう。
それに貴重な戦力なのだから。
特にレオンは本物の“勇者”ではないのだから。
そこで、イオとトランに料理が出来たよと呼ばれたのだった。
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