良い物を見た気はするのだが
「はじめまして、俺の名前はレンヤといいます。そして……」
「我の名前はルカです」
現れた二人は確かにレオンとカノンに瓜二つだった。
しかも雰囲気すら似ている。
「うーん、世の中には三人は似た顔の人がいるというけれど、本当にそっくりだね」
まじまじとイオが二人を見比べて、トランもそれに頷いている。と、
「……ルカは、僕のま……親戚なんだ」
「え? そうなの? 道理でそっくりなはずだね……ふふふ」
そう聞いた瞬間、イオが不気味な笑い声を上げる。
カノンはしまったと思い、ルカは何かを感じ取ったのかレンヤの後ろに隠れた。
そんなルカに、レンヤは小さく苦笑して、
「実は、諸事情により、皆様方にご同行をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか」
そう、レンヤは切り出す。
イオとトランがレオンを見た。どうやらレオンに決めてくれといっているらしいので、
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
聞いた範囲ではとても強い勇者と、多分とても強いであろうレオンが借りる予知能力を持った魔王なので、戦力としても申し分が無い。
そもそも彼らからは色々と聞きたい事もある。
そして、気前よく力を貸してもらったからというのもあるのだが、何となく、レオンに対してルカは心を許しているような、そんな感じではある。
理由は、レンヤという恋人に似ているから、というだけでは無い気がするのだ。……なんとなく。
加えて何となく、レオンはルカが、心の底から可愛いと思ってしまう。恋愛感情ではなく。
なんだろうこの変な感覚。
とはいえ、今はそんな事を考えている場合じゃないと、それらを瞬時に考えて即答したレオンだったのだが、
「……断る」
珍しくカノンが、冷たく言い切った。
先ほどの事もあったのでレオンもそうなるだろう事は分かるのだが、なぜレンヤ……彼にこれほどまでにカノンが憎悪に似た思いを抱くのかが、分からなかった。
それに、それは自分で言うのもなんではあるのだが、レオンにそっくりなレンヤにカノンが敵意を向けることが悲しく思えた。
「あの……カノンさん、我からもお願いします」
ルカが甘えてねだるように、カノンに言う。
途端、カノンの雰囲気が奇妙なほどに柔らかくなる。
柔らかく愛しげにルカを見て、今にも頭を撫ぜに行ってしまいそうだった。
それがレオンには面白くない。
こんな蕩けるような笑顔なんて、レオンだってめったに見れないのに。
そして再びルカがカノンに甘えるようにお願いした。
「あの、カノンさん、駄目でしょうか」
「……仕方が無い。ルカのお願いだから、大目に見ても良い。但し、レンヤ、後で個人的に話があるから」
と、じろりとカノンは睨みつけながら、レンヤに告げる。
そんなレンヤは苦笑しながらも頷いた。そこで、
「よし、じゃあ二人の歓迎会をやろう!」
イオがパンと手を打つ。
この雰囲気はあんまり好きじゃないからねー、と、イオはレオンに目配せする。
それにレオンは小さく頷いて、
「じゃあカノンとルカはここに残っていてくれ。積もる話もあるだろうから。それとレンヤさんには、手伝って頂いてもよろしいでしょうか」
「さんは付けなくてもかまいません。俺は貴方ほど……」
「あーあー、じゃあレオンと俺の事も呼び捨てにしてくれ」
レオンはレンヤが何を言うのか想像がついたので、話を変えた。
丁寧語な辺りからも嫌な予感がしたのだ。
というか未来人なはずなのになんで知っているんだよ、と思いつつ、容姿が良く似ているから、何処かで繋がっているのだろうかと思って、本当は未来から来ていないんじゃないかとレオンは疑念すら湧いてくる。
かといって、確かめる術も思いつかない。
分からない事だらけで、推測していても仕方が無いので、まずは話を聞かないといけない。
ついでに、レンヤとカノンを一緒にさせるのもあれなので、どちらか片方から話を聞いておいたほうが良さそうだからまずレンヤからとレオンは判断したのだが。
「じゃあ、ルカ、僕とお話しよう!」
「はい!」
やけに嬉しそうな二人。
可愛いものが二つで、しかも大好きなカノンとカノンにそっくりな二人の様子は見ているだけで目の保養といえそうだった。
確かに楽しそうにキャキャと話している二人は、レオンにとってもなんか良いもの見たなー、という気持ちにさせられるのだが。
素直に喜べない。
だってカノンがあんなに楽しそうにしているから。
いや、カノンが嬉しそうなのは良いのだ。それはレオンにとっても喜ばしい。
けれど。
あのカノンの笑顔を独り占めしたいとつい思ってしまう。
そんな複雑な感情を抱きながら、レオンは部屋を出る際に振り返り、カノンの笑顔を目に焼き付けてからその場を後にしたのだった。
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