正しい事は正しくない
温かくて気持ちが良い。それに良い匂いもするし。
もう少しこのままでいたいなと、カノンは幸せな気持ちで目覚めかけていた。
だって本当に心地が良いのだ。ずっとこうしていたいくらい。
頭だって優しく撫ぜてくれるし。
本当に気持ちが良い。
うにゃぁ。
そんな風にぼんやりとした頭で考えて、もう一度眠ってしまおうとカノンは考えた。
考えはした。
――……何かがおかしくないか?。
目を見開くと、目の前にレオンがいた。
しかもちょっと服が乱れていて、鎖骨の辺りが見えて、いつもの子供っぽい雰囲気ではなくこう……なんというか、大人、というか、男というか……つい、カノンはどきっとしてしまう。
してから、自分がどういう事になっているのか確認した。
ここはベッドの上だった。しかもレオンの一人部屋である。そういえば昨日部屋に戻った記憶が無い。
そしてベッドの上でレオンに抱きしめられている。
えっと、えっと、えーと……いけない事のような気がする。凄くいけない事のような気がする。
そこでレオンの顔を見る。レオンの目は瞑られていて、乱れた服装に目をやらなければ確かに普段の子供っぽさが見えるなと、カノンはどきどきと高鳴る胸の鼓動を必死で抑えようとする。
けれど、その幼なさの垣間見れる顔に、カノンは懐かしさを覚えた。昔会った人に似ているのだろうか?。
しかし寝ぼけているとはいえ、こう優しく頭を撫ぜられると、カノンも怒れない。
もう少しだけこうしていたい、と思い目を閉じる。
そうしていると、撫ぜる手が止んでレオンが起きる気配をカノンは感じた。
そして、頬を指でぷにっと押される。
一応カノンも寝たふりをしている手前、文句が言えない。
ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
「っ……いい加減にせんかー!」
カノンは飛び起きた。飛び起きてすぐ目の前にレオンの顔があって、あまりに近すぎて。
カノンは後ろに退こうとして、レオンに掴まれた。
やけにじいっと見詰められて、カノンの額にレオンの額をこつんと付ける。
「な!」
すぐ傍まで近づいてきたレオンの顔に、あ、綺麗だなとかキスしたいとかそんな欲望が自然と湧いてきてカノンは焦った。けれど、
「……熱は無いみたいだな」
「え? どういう事?」
「いや、昨日突然床にへたり込んだと思ったら、やけに体が熱くて……それで、心配で一緒に寝たんだが……もう大丈夫みたいだな」
そうレオンに言われて、昨日は満月だった事を思い出す。
そしてレオンを見て、カノンは自分が大丈夫であった事を確認する。もしもカノンがレオンを好き過ぎたなら、レオンは今頃この世にいない。
少し複雑な気持ちではあったが。
しかし、今までこんな風に意識が飛ぶ事なんて、今まで無かったのにとカノンは不安に思う。
思ってレオンを見上げた。
するとレオンににっこりと微笑まれて、カノンは体が沸騰しそうに熱くなる。
何故かはカノンには分からない。
けれどいてもたってもいられなくなり、靴を履いて逃げようとして……部屋のドアが開いた。
「カノンちゃん、やっぱりここにいた。そして、おめでとう!」
何故か興奮しているイオ。カノンは何が何だか分からない。と、
「……イオ、俺はまだカノンには何もしていないからな」
疲れたように言うレオンに、イオがありえないという顔をした。
「ええ! 一晩一緒にいて、カノンちゃんも……」
イオは途中で言葉を切った。切って、レオンとカノンを交互に見て、すぐ後ろのトランにため息を付く。
「これはもう、駄目かもしれないね」
「イオ、不吉な事を言うな」
「いや、だって……普通は、ねえ? ……どう思う、トラン?」
「……黙秘する」
「俺は何も間違った事をしていないのに、何でそんな冷たいことを言うんだ!」
レオンがむすっと膨れる。
それにイオとトランが、肩をすくめた。
そしてそんなむくれるレオンに、カノンはさっきの仕返しとばかりの頬をぷにぷにとしてやる。
「ふふ、仕返し、仕返しっと」
「……やっぱり我慢なんてしないで襲っておくか」
「え? ちょ、レオン! 右手押さえて、何で服に……、やぁ、冷たいっ! くすぐったいよう!」
お腹の辺りからだんだんと上に這っていく手に、カノンは酷く身の危険を感じて、レオンを蹴り上げたのだった。
お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。
次回更新は2/17,21:00です。よろしくお願いいたします。




