揺さぶってやるお(´・ω・`)
しくしくしくしく。
「……ごめん、レオン。本当に反省してるから」
「……昨日はカノンの面倒を見たのに」
レオンにとってご褒美に近かったが。
けれどそんな事は知らないカノンは、病気だと勘違いしてレオンがカノンの面倒を見たと思っている。
だからカノンにしては珍しくひたすら低姿勢で謝っている。
さすがにそろそろ良いかなとレオンが思っている所で、ふと、カノンが真剣な表情になり席を立つ。
「……ごめん、ちょっと出てくる」
「どうかしたのか?」
「ん? ちょっと日の光を浴びたいなって。すぐ戻るから」
そう、一人で行ってしまうカノンをレオンが追いかけようとして、イオに引き止められた。
「イオ、俺……」
「作戦会議しよう」
今までイオは結構面白がってにまにましているだけだったのに、珍しい事もあるものだとレオンが思いつつ、
「……カノンを落とすための?」
「そうそう。レオンがあんまりにも一途で、カノンちゃんの事を可愛がって大切にし過ぎるからもう……見ていて哀れで」
「哀れって何だ」
「それはいいとして、やっぱりこう、愛の重さをカノンちゃんに感じさせないといけないと思うんだ」
イオの言う事をしばし考えて、レオンが言った。
「つまり、こういう事か?」
そう話し始めるレオンに、イオがドン引きしたのだった。
外に出たカノンは一つの人形、その人形を人気の無い裏路地に入ってカノンはじっと見詰める。
滲み出る水の魔力。
これはカノン達魔族のもの。この前から人形がカノンの行く場所行く場所にうろついている。
しかもとても攻撃的だ。一度発動すれば建物一つは余裕で瓦礫と化する。
もちろん人間などひとたまりも無い。
本当はカノンに嫌がらせをするために周囲の人間を殺そうとしているのかと思ったが、そんな様子ではない。
「……聞こえているか? このような人形を周りに寄こすな」
「ナゼデスカ」
「そもそも何が目的だ? こんなもの、僕に傷一つつけることなど出来ないのは分かっているだろう? それとも、“仲間”の人間を殺す事で嫌がらせをしたいのか?」
「……秩序が乱されるからですよ。貴方様があまりに人間と親しくされると、ね」
その声に振り返ると黒いローブの男、いや、爛々と輝く金色の瞳から、魔物だとカノンは理解する。そして、フードからはみ出ている青い髪にこの魔力。
「四天王の一人か?」
「はい。水の四天王にいずれなるものです。……そして、貴方の母君様の遠縁に当たります」
母と聞いて、カノンは体を硬直化させた。カノンにとって母親にあまり良い感情を持っていない。
そもそも物心が付いてから一度だって会ったことが無いのに。
「……母の話をするな」
けれど遠縁だと言う彼は、
「貴方にお会いしたがっていましたよ? 何分、父達の嫉妬に曝されて貴方を手放さなければならなかったのですから」
「え?」
そんな事は、カノンは聞いていない。役目としてカノンを生んだことしか知らない。
そんな戸惑うカノンに、揺さぶりをかけるように彼は続けた。
「今は他の魔族と結婚して、子供もいます。貴方の異父兄弟……お会いしたいと思いませんか?」
「それは……」
「もちろん我が城に来ていただければ、我々の意思も確認して頂けます。しかも貴方様の母君と、ご兄弟ともお会いできますよ、如何ですか?」
カノンにとってはそれを断る理由が無い。無いのだが……。
「何を企んでいる?」
「その企みすらも、抗する自信が貴方様には無いのですか?」
挑戦的な問い。それにカノンは哂った。
「いいだろう、受けてやる。近い内に訪ねるから、心しておけ」
「御心のままに」
そう言って、彼は消えてしまう。それを確認してから、きびすを返してレオン達の元へとカノンは戻ったのだった。
「(放送禁止用語のため閲覧できません)とか(ピー、ピー)とか出来たら嬉しいなって」
レオンがまたとんでもない発言をした。先ほどから延々とそれを聞かされるイオはげっそりして、
「……他の選択肢を希望しまする……」
「じゃあさっきのあれとか?」
「いや、駄目だから。レオン、好きだからって監禁は駄目だって」
イオが、さすがにそれは無いだろうとツッコミを入れるも、レオンがふと幸せそうな笑みを浮かべて、
「いや、俺がして欲しい」
「……レオン。その時点で、レオンはされる側に回るんだよ? 分かっているの?」
「!……でもそうすればカノンと一緒にいられる……」
それを考えるとそれでも良いのだろうかとレオンは少し悩むも、
「戻って来い、戻って来るんだレオン。トランも何か一言!」
「いいんじゃないかな。俺もイオなら良いし」
「ああもう、僕はいじり側であってツッコミ役じゃないのに! レオンはカノンちゃんが好きすぎてこれはまずい」
「やっぱり禁欲的な生活は良くないなー」
昨日はカノンを抱きしめて眠ったレオンは、そのような事をほざく。
本当にどうしようかと悩んで、イオは藁にもすがる思いであるものを取り出した。
「以前、エロイ姿が見えるって宣伝で買った鏡があったじゃない? その時付いていたお守り、実は二つあって、好きな人にもう一つ渡して寝ると、好きな人にエロイ事が出来る夢が見れるんだって」
「素晴らしいぞイオ! もう夢でも何でも良いから、カノンを……」
「僕がどうしたって?」
いつの間にやらカノンがすぐ傍にいた。にこにこ笑っているが、
「それで何が素晴らしいのかな? イオが何を言っているのか聞き逃しちゃったけど、レオンのこの反応を見ると……」
「親友同士の持つお守りについて話していたんだよ、はい、カノンちゃん」
そういって白い石の付いたお守りをイオがカノンに渡した。
「親友同士の?」
そうそう、とイオが嘘をつくも、カノンはそれを聞いて嬉しそうだ。
本当に花がほころぶように笑う。
それを見ていたイオは、以前にも増してカノンが魅力的になっているように感じる。これって大丈夫なのだろうか?、と不安を覚えるも、それを守るのもレオンの役目だなと一人頷いた。そこで、
「じゃ、俺はナンパに行くから! さらばだ!」
反応が一瞬遅れたカノンはレオンを捕まえ損ねて、慌てて追いかけていく。
先ほどまでカノンに対してあんなに悶々としていたのにと、イオは脱力した。
けれど、まあそれも彼らなりの付き合いなのかもしれないと、イオは納得した。
結局カノンとレオンの二人は、夕方になるまで帰ってこなかったのだった。
城に戻った、水の四天王候補の彼は椅子に座りため息を付いた。
かの魔王からやけに甘い匂いがする。くらくらする。
フードを被っていたため様相があまり見えなかったのには幸いしたが、そうでなければそのまま攫おうとしていたかもしれない。そうすれば今までの努力は全て水の泡だ。
きっとかの魔王が、悔しいが、人間に恋をしているからあれほど魅力的に見えるのだろう。
「まったく、どうして人形をつけておかねばならなかったのか……カノンカース魔王様は自覚が足りない」
人間共も、その美しさに惹かれている。その危険を分かっているのだろうか?。
しかも、クラウに聞くところによれば、襲われても抵抗できなかったという。
ますます危険だ。
なのに、何故人間なのだろう。もっと、魔物達の方を貴方は見るべきなのに。
そのための母であり、兄弟だ。おそらく顔は似ていないだろうが。
「あまり人間に好意的な感情を持ちすぎては困る。それに、貴方様は我々の王であり、愛する方なのですから」
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