言い訳は難しい
事の次第を聞いたトランが、微妙な顔をした。
「イオ……」
そしてレオン達はホーリィロウ達と合流した。そういえば、戦士が僧侶イータの本性にショックを受けていたような気が、とカノンが思っているとその視線に気付いたのか、
「俺が惚れた僧侶は見かけだけじゃないし。ちょっと装っていた程度でとりつくろえるものじゃないさ」
と言っていた。
少しうらやましさを感じながらカノンが僧侶イータを見ると、そっぽを向いていた。
けれど耳が真っ赤になっている。
ああなるほどカノンは思って、ついでにお前ら付き合ってしまえとも思った。
そうすれば僕の"幼馴染"のレオンに手を出してこないだろうから。
さて、ホーリィロウ達は彼を含めて4人のパーティであるから、カノン達含めて7人となった。
そして四天王の城となると有名なので、すぐに場所が知れる。
どうやら四天王達は結構、人と交流しているらしい。故に、道がある。
その道を歩いていく事一日、その城はあった。
「城の形はこの前の四天王と同じだな」
そうレオンが呟く。けれど以前の城のように一向に、出迎えが無い。
そのため扉を無断で開けて進入する。そこは階段となっており地下に続いているらしかった。
吹き抜ける風は冷たく、通路の遠くが薄暗い闇となっており今にも何かが飛び出してきそうだった。
お互い顔を見合わせて、中へ入っていくと今度はその扉が自動的に閉まる。
魔法の明かりが一つ、また一つと灯る。
「前の城も地下があったのか……」
「そんなはず無い」
カノンが小さく呟いた。けれどレオンの怪訝は表情に気付いて、慌てて取り繕う。
「なんでもないよ。それよりも早く行こう」
と、カノンが答えるのを合図に何か大きなものが転がる音がする。
その音がすぐ傍まで聞こえてきたと思うと同時に、大きい石の塊が転がるのを目視する。
通路にすっぽりと収まるようなそれに、反射的にレオン達は逃げ出そうとする。けれど、
――逃げられないな。
そう判断して、カノンはそれを一瞥して魔法を放つ。
その一撃でその石の塊は粉砕され、瓦礫と化した。
砂埃がカノンに吹き付けるが、フードをかぶって顔を極力見えないようにしているカノンにはフードからはみ出た銀色の髪が風に揺られた程度に過ぎない。
その圧倒的な力に感嘆してホーリィロウは、
「……相変わらず素晴らしいですね。ぜひ、我々のパーティに入って頂けませんか? カノン君」
「気持ちだけ受け取っておきます」
「いずれ返事を頂けると期待しています」
それにカノンは答えず、道を進み始めた。
そこで、声が聞こえる。
「まったくやりきれん。そう思わないかね、弟よ」
「まったくだ。しかし我らの上司だから仕方が無い。それに今上手く我々は逃げ出せたではないか、兄者」
「しばらく休憩してから、また……弟よ、人の気配と、なんか凄く良い匂いがしないか?」
「兄者、同感だ。もしや侵入者が?」
「ふむ、では戦略的撤退をしようではないか。戦うの面倒だし、弟よ」
という声が聞こえて、次の瞬間ばったりと曲がり角の通路から魔族が出てきた。
その魔族は双子のようで、レオン達を見て面倒臭そうな顔をした。
「どうしよう、兄者。遭遇してしまった」
「うむ、言い訳をするために一応戦っておこうか、弟よ」
そうこちらに向い炎の魔法を使ってくる。それに対して、レオン達も攻撃を加えるが、全て一撃を加えた際、
「ぐふ、やーらーれーたー、ぱた」
と、二人とも簡単に倒れてしまう。
カノンはさすがにこれは無いと思った。何でこんなにやる気が無いんだ?。
魔族がまさかこんな状態になっているなんてと、カノンは戦慄を覚えると同時に怒りが湧いてくる。
「……魔族として、わざと負けるのは恥ずかしくないのか?」
だがその問いにその魔族はカッと目を見開いて、
「言い訳だって考えるのが大変なんだぞ! そんな『空が青かったから』とか簡単な理由でサボれないんだからな!」
「そう、我々はただ一生ひらで良い、平穏な生活さえ出来ればいいんだ!」
あまりにも酷すぎる回答で、カノンは固まった。
一方レオン達は、とりあえず倒せたって事だからとその魔族を素通りする。
「カノン、早く来い! 置いて行くぞ!」
「レオン、すぐ行く! 少しこいつ等に言いたい事があるから……」
カノンはそこまでしか言えなかった。
カノンとレオン達を隔てるように石の壁が落ちてくる。
そしてその音は連続して聞こえてくる。
レオンがその場を離れろと叫ぶのが壁越しで聞こえた。
呆然とカノンがその石の壁を見つめて、そしてすっとその双眸を細めて二人の魔族を見た。
二人の魔族は、ゆっくりと立ち上がり、カノンに向って敬礼した。
「よくいらっしゃいました、魔王カノンカース様。我が城の主がお待ちです」
そう、二人の魔族は機械的に冷たく告げた。
先ほどの感情ある様子は一切見て取れないほどに、凍り付いて見える。
その影響を受けているわけではないが、カノンの声も自然と冷たくなる。
「初めからこの予定だった?」
「一番の目的は、我が城の主が貴方様にお会いする事でした。けれど思わぬ良いものを得られたと主は喜んでいます」
「イオは無事なのだな」
人間を心配した事に魔族の二人はしばし沈黙するも、
「……確かにあの人間は無事にございます。彼は我が城の主の客人でもありますので」
と答えた。けれどカノンが気になることはそれだけではない。
「レオン達におかしな事はするなよ?」
「彼らもまた当城の客人でございます。そういうものであると貴方様もご存知でしょう」
淡々と告げられて、腹の探りあいをする相手ではないとカノンは判断した。
「分かった、お前達案内しろ」
御意、とその二人の魔族はカノンに再び一礼したのだった。
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