しょくしゅには気よ付けろ
泉の水を汲みに、カノン達はどうしてこんなに依頼料が素敵な事になっていたのか分かった。
「つる系の魔物か」
カノンも先ほど杖を取り上げられそうになり苦戦した。だから触れればすぐに炎系の魔法で燃やしているのだが。
うにょうにょと蠢く緑の蔓がかなり広範囲に広がっていて、時に触手のように攻撃をしてきて倒しても倒してもきりが無い。
一点に集中して突破することも考えられるが、泉に着く前に触手に囲まれてしまう事だろう。
魔王としてであれば、容易にこれを突破できるのだが、さてどうしたものかとカノンが考えていると、
「カノン、ごめん」
「へっ?……わぁぁぁぁぁ」
いきなりレオンにカノンは蔓の中に放り込まれた。
先ほどから捕らえようと蔓を伸ばしてくるだけなので、特に実害は無いと言えそうなのだが。
ずるりとカノンの触れた辺りの蔓が動く。
嫌な予感がしてカノンはそこから離れようとすると、まずその動きを抑えようとするかのようにカノンの手に絡みつく。
「放せ! やめっ! レオン、見てないで……ひんっ」
腰の辺りに蔓が絡み付いて、そのままカノンの服の中に蔓が潜り込む。
肌に直接蔓の冷たい感触を感じて、カノンは鳥肌が立ちびくっと大きく弛緩する。
この、下等な魔物の癖にこの僕に触れようとするなんて、という怒りと、何でレオンはこんな事をカノンがされると分かっているのに放り込んだのかと悲しくなる。
更に数本の蔓がカノンに触れようと近づいた所で、
「よし、今だ!」
一斉にレオン達は攻撃を開始したのだった。
「あのタイプの魔物は餌を捕らえると、本体がそこに近づいて来るんだ」
レオンが何処か得意げである。加えて、カノンの衣服が乱されて、ちょっとエロく見えるのでよっしゃぁと思っていたりする。
だがそんなカノンは、非常に機嫌が悪い。そしてまだ蔓の魔物は沢山いる。ので、
「そうかそうか。こ・ん・ど・は、お前がいけー!」
「や、ちょっ、うわぁぁぁぁぁ」
レオンがカノンによって蔓に放り込まれた。
だが、今度は蔓の魔物の方が嫌だと言うかのように身を引いた。
それに何かレオンは思う所があるらしく、手を近づけると蔓の魔物が逃げていく。
「傷つくわー」
「それは僕の台詞だよ。何で僕はいいのにレオンは駄目なんだ。ちょっとは楽しみ……じゃなかった、レオンにお仕置き……じゃ無くて、どうでもいっか」
「カノン酷い! こんないたいけな"幼馴染"に!」
「誰がだ! だとしたら僕だって"幼馴染"だろ?」
「カノンはいいんだ! 俺が見たかったから!」
よし、少し再教育だ。レオンの体にたっぷりと染み入るように僕の思いを……。
「カノンちゃん、あのタイプの魔物は、受けが専門と攻めが専門がいるんだよー」
「イオ、という事は、攻め専門の魔物を……というか、レオンて攻め?」
「「「………………………………」」」
「そもそも何で僕が受けなんだ。攻めだっていいじゃないか」
「カノンちゃん、現実は残酷だけれど気を確かに持って」
「イオ、言っている事がよく分からない! 僕は男だ!」
「ああ可愛い、本当に可愛いよカノンちゃん!」
「抱きしめて頭なでないでよイオ! むー!」
「そうだぞイオ!そんな羨ましい事!」
「あれ、レオンもしたいの? どうする、カノンちゃん?」
楽しそうなイオの声。そしてレオンに抱きしめられると聞いた瞬間、カノンはなんて事を言うんだイオを見た。一方レオンは、
「え?、俺に抱きしめられて頭撫でられたいのか、カノン」
と、情緒とか、顔を赤らめるとか何も無い。それがカノンには本当に悔しくて悔しくて悔しくて……。
呪文を唱えて、一匹蔓の魔物をしとめた。
「……カノンちゃん、怒ってる?」
「何が?」
冷たくイオに答えると、怖ーい、とイオはカノンを放した。
そして、そこで異変が起きる。
蔓の魔物達が道を開ける。そして何処かへとずるずると去って行く。
「……何が起こったんだ? こちらには都合がいいが……カノン?」
「………………………………」
カノンはいなくなった魔物の方角をじっと見つめる。
その魔力の気配は懐かしいもので、というか、父のものだ。
引き篭もり気味の父が出て来たという事から、あいつも居るのは間違いないとして。
いや、だいっっ嫌いなあいつが父を守らなければどうなるか不安で仕方ないから良いのだが。
非常に不本意だが。
――でも、今回は助かったかな。
実の所、既に町に戻ることが出来ないほどに蔓の魔物に囲まれていてどうしようかと思っていたのだ。
広範囲から狭められて気付かなかった。力を抑えているのが災いしたか。
それにその事をレオン達に話せばなんで分かるのかは誤魔化せるにしても、もしそれをどうにかしようとしたなら……力を隠していたこと、ひいては何故そんなに強いのかという点から記憶操作が解けてしまうかもしれない。
もしそうなったなら、"仲間"全員が敵に回る。罵倒され、カノンを殺そうと襲い掛かるだろう。
――レオンに憎しみの篭った目で見られて、剣を向けられる……そんなの、嫌だ。それに、イオにトランだって短い間だけれど一緒にいて、もっと僕はここにいたいと思った。
確かに魔王と襲った時はただ利用するためだけのつもりだったのに、確かにあの時はそんな目で見られても何とも思わなかったのに、今は、少しでも長くその時が来なければいいとカノンは思ってしまう。
戸惑うような仲間達。そこでイオが、
「んー、なんか変な気配を感じる……カノンちゃんは?」
「僕は良く分からない。でも、これで依頼は簡単にこなせそうだね」
「……そうだね。じゃあ、急ごうか」
そう、にっこり笑うイオが、カノンに見えない位置でレオンとトランに目配せするのをカノンは気づきもしなかった。
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次回更新は未定ですが、クリスマスに出来たらなと思っています。よろしくお願いいたします




