誤解ですか、うふふ
「カノンちゃん、レオンをそんなにロープでぐるぐる巻きにしてどうするの?」
「寝たふりをして様子を見ていたら、早起きして逃げようとしやがりましたので」
「うーん、縄抜けされたら終わりなんじゃない?」
「……レオン、縄抜けとか出来たりする?」
「ふ、俺の辞書に不可能という文字は無い」
「欠陥品の辞書の話は良いとして、出来るの?」
「見よ!この華麗なる技!」
しゅるんと縄から抜け出るレオンを見て、そしてそんな自慢げなレオンを見て、カノンはレオンの手を握った。
「え?」
「この前服を掴んでいたら逃げられたから、手を握る事にした。こうしていれば逃げられないでしょ?」
「え、あ、うん。ソウデスネ」
「レオン、良かったね」
まったくレオンには困ったものだ。やっぱり僕が付いていないといけないらしいと、カノンは嘆息する。
そんな二人の様子を、イオがにまにまと笑ってみていたのだった。
「じゃあ、僕達も手を繋ごうか、トラン」
「うむ」
そんなイオとトランと別れて、防具屋へ。
「えーとこれとかこれは? これぐらいで……」
店員と交渉していると、ちらちらと客がカノン達の方を見てくる。なんだろうと思っていると、小さい声で誰かが舌打ちして、
「ち、アベックで買い物に来るなよ」
え?、誰がアベッグ?、いや、そういえば恋人同士は手を繋ぐもので、今カノンはレオンと手を繋いでいて、いや、だって逃げないようにしているだけだから。
これでお願いしますと、防具を買って、慌てて外に出る。
「カノン、どうしたんだ?」
「防具を買ったから、もう手を離してもいいよね。レオンも好きにしていいよ」
「じゃあ、俺はもう少しカノンと手を繋いでる」
「何故!」
だって、それでは本当に恋人同士みたいではないか。カノンとレオンが恋人同士。カノンはそう考えると胸の鼓動が速くなり、頬が熱くなる。
「カノン、顔が赤いぞ?」
「だ、だって手を繋ぐなんて……」
「昔は繋いでいたじゃないか。子供の時。"幼馴染"なんだからおかしくないだろう?」
言われて、そうかもとカノンは思った。友達と手を繋ぐ事は良くある事だ。
「そ、そう言われてみれば、そうかも」
「何だカノン、恋人同士に見られるかもって思ったのか?」
「う、それは」
「言わせたい奴には言わせておけばいいさ。それに手を繋いでいれば、はぐれる心配も無いだろう?」
レオンのくせに、もっともな事を言うとカノンは少しむくれる。
そんなカノンをレオンが引っ張る。
「せっかくだから名所を見に行こう。それくらいは良いだろう?」
「……帰りにギルドによって、依頼を探すから、それを忘れなければ別に……」
「ようし、そうと決まれば俺、がんばる!」
「何をだ!」
そんな事を話しながら、カノンはレオンに手を惹かれて走り出したったのだった。
綺麗な花畑が広がっている。確かに美しいし、それを見るのはカノンも好きだ。だが、
「何でそこら中でいちゃいちゃと……」
カノンは彼らを見て、頭が痛くなる。あと人前でキスをするな。もっと慎み深さを持て。
そんなカノンを見てレオンが、
「いや、名所ってそういうものだから」
「……二人っきりになれる所が良い」
「え?」
「あいつら目障りだから、静かな所に行きたい」
仕方が無いなと、レオンに手を引かれたその場所は本当に人は居なくて、花畑が一望できる場所だった。
「カノン」
名前を呼ばれて振り返ると、レオンの手に一輪の花があって、その花をカノンの髪にさした。
「綺麗だよ、カノン」
「な!」
そんな事を言ってレオンが優しく微笑むから、カノンは顔を真っ赤にしてしまう。
そのままカノンの髪にレオンが触れて、カノンは急いで逃げ出した。
けれど手を握ったままだから、すぐ引き寄せられて、カノンは何にが何だか分からなくなる。
顔が熱くて頭がぐるぐるして、まともにレオンの顔が見られない。
「どこにも行くなよ?」
「え?」
「消え入りそうに綺麗だったから、不安になった」
「……もう、ギルドに行こう。やっぱり早めのほうがいい依頼が有ると思うから」
「カノンがそういうならそうかもな」
レオンがすぐに納得したように頷く。だからカノンはほっとした。
自分は魔王だから、いずれレオンの前に敵として現れるだろう。
けれどそのとき自分は本当に……カノンは、小さく溜息をついたのだった。
「以前来られませんでしたか? あ、その人は赤い目でしたね」
カノンを見た受付の人が、そんな事を言うのでカノンは心の中で思った。
自分みたいな者は、引きこもりになっている父様くらいだろう。失礼な。
そして依頼が一つ。
「泉の水を汲んでくるだけで、1500リン?」
破格の値段だが、この程度ならば大丈夫だろうと受けることにした。そして、
「そういえばレオン、新しい技、どうする気だ?」
「もう決めた」
「……聞いていい?」
「見てのお楽しみだ」
即座にその技を忘れさせようとするカノンとレオンの攻防は、宿に着くまで続けられたのだった。
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