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12/15

嘘は事実より少しだけ先を行けばいい

自分がもうすぐ切り捨てられると信じている人間。


そういう人間は動く。


問題は。


どう信じさせるかだった。


カイルは木に背をもたせて座り、焚き火を見つめた。


盗賊たちは少しずつ散らばっていた。


ドルマンは小屋の中に入った。


バルクは他の盗賊二人と話をしていた。


ボルトは焚き火の近く。


テルンは食糧の入った袋を整理していた。


カイルは何も言わなかった。


待った。


政治において言葉を多く発することより重要なのは。


いつ言うかだった。


特に嘘は。


先に言えば説明しなければならず。


相手が気になった後に言えば情報になる。


カイルは目を閉じた。


そして待った。


*


どれくらい経っただろうか。


足音が聞こえた。


カイルが目を開けた。


ボルトだった。


手には木の器が持たれていた。


薄い粥のようなものが入っていた。


ボルトが器を床に置いた。


「食え」


カイルは縛られた手を一度見下ろした。


そしてボルトを見た。


ボルトも縄を見た。


「ああ」


しばしの沈黙。


カイルが言った。


「かなり気が回るんですね」


「黙れ」


ボルトが腰から短剣を取り出した。


カイルの視線が刃に向いた。


ボルトがふっと笑った。


「怖いか」


「少し」


「言葉は素直だな」


ボルトはカイルの手を縛った縄を切らなかった。


代わりに結び目を少し緩めた。


手を前に持ってこられる程度だった。


「食ったらまた後ろで縛れ」


カイルは手首をこすった。


赤い痕がはっきり残っていた。


器を取った。


一口。


味はなかった。


それでも食べた。


今日はヘルンの朝食以来まともに食べていなかった。


ボルトは行かなかった。


カイルはその事実を知らないふりをした。


二口目。


三口目。


結局ボルトが先に口を開いた。


「おい」


カイルは粥を食べながら答えた。


「はい」


「さっきの話」


「どの話ですか」


ボルトの表情が歪んだ。


「バルクの話」


カイルは内心笑った。


(来た)


だが表には出さず、匙を止めなかった。


「私はいろいろ言いましたので」


「物を抜いてるって話」


カイルがボルトを見た。


「ああ」


「何を知ってる」


ここで重要なのは。


すぐに答えないことだ。


カイルはしばらくボルトを見つめてから、また粥を食べた。


「言え」


「確実なことはありません」


ボルトの表情が微妙に変わった。


期待していた答えではなかったようだ。


「何?」


「私が直接見たわけではないので」


「じゃあさっきはなんでそんな話をしたんだ」


カイルは匙を置いた。


「あなたたちの反応を見ようとして」


ボルトの顔が固まった。


「俺たちの反応?」


「はい」


「からかったのか」


「おかげで分かったこともあるので、からかったわけではありません」


ボルトがカイルの胸元を掴んだ。


「何が分かったんだ」


カイルは手に持った器を見つめた。


粥が少しこぼれた。


「食べていたところです」


ボルトが手を離した。


「言え」


カイルは襟を整えた。


「バルクを疑っているということ」


ボルトが口をつぐんだ。


「あなただけでなくテルンも」


「……」


「そしてかなり長い間だということも」


「それをお前がどうして分かる」


「今日初めて生まれた疑いなら、穀物袋が8個だったという数字まで覚えている理由がありませんから」


ボルトの表情が固まった。


カイルは内心思った。


ここまでは事実だ。


これから。


一歩だけ前へ。


「そしてバルクも知っています」


ボルトの目が動いた。


「何を」


「あなたたちが自分を疑っているということをです」


静寂。


嘘だった。


カイルには分からない。


バルクがどこまで気づいているのか。


だが可能性は十分にあった。


さっきあれだけ言い合いをした。


全く気づかなかったという方がむしろ不自然だ。


ボルトが言った。


「当然分かるだろ。さっきあんなに言い合ったのに」


「さっきのことじゃありません」


ボルトの表情が固まった。


カイルはそこで止めた。


ボルトが聞いた。


「どういう意味だ」


カイルはすぐに答えなかった。


「おい」


「私が間違っているかもしれません」


「話を逸らすな」


カイルがボルトを見た。


「バルクがさっきからあなたを見る目つきが妙でしたね」


嘘だった。


正確には。


解釈だった。


ボルトの目つきが揺れた。


カイルは付け加えた。


「私があなたの話を出す前からです」


今回は完全な嘘だった。


だがとても小さかった。


ボルトは今日一日バルクと一緒にいた。


自分の記憶の中でその言葉を確認しようとするはずだ。


人間の記憶は思ったより正確ではない。


特にすでに疑っているなら。


ボルトが口をつぐんだ。


カイルは再び匙を持った。


それ以上言わなかった。


ボルトに自分で考えさせておいた。


しばらくして。


ボルトが聞いた。


「それで?」


「何がですか」


「バルクが俺の疑いに気づいているとする」


カイルは粥を一口食べた。


「それなら何も起こらないでしょう」


ボルトが目を眇めた。


「何?」


「あなたが間違っているなら」


カイルがボルトを見た。


「バルクが本当に何も抜いていないなら、あなたが疑おうと構わないでしょう」


ボルトの口が閉じた。


「ですが」


カイルはそこまでしか言わなかった。


ボルトが待った。


「ですが何だ」


「本当に抜いたものがあるなら」


カイルは肩をすくめた。


「私なら居心地が悪いでしょうね」


「……」


「自分のしたことを疑う部下がいるのですから」


ボルトはしばらく何も言わなかった。


カイルは粥を食べ終えた。


終わりだった。


これ以上言えば過剰になる。


ボルトが立ち上がった。


「余計なことを言うな」


「私が先に話を切り出したことはありません」


ボルトがカイルを睨んだ。


しかし反論しなかった。


背を向けた。


数歩。


カイルが呼んだ。


「ボルト」


ボルトが止まった。


「何だ」


「今夜は一人でいない方がいいと思います」


ボルトがゆっくりと振り返った。


「何?」


カイルは空の器を置いた。


「ただの私の考えです」


「はっきり言え」


「確実なことはないと言っています」


「この野郎が」


「だから信じないでください」


カイルが笑った。


「私が間違っていれば良いことじゃないですか」


ボルトはしばらくカイルを睨んだ。


そして戻っていった。


カイルはその後ろ姿を見つめた。


(一つ)


種は植えた。


*


今回は長く待たなくてよかった。


テルンが訪ねてきたのは、ボルトが去ってすぐのことだった。


「手」


カイルが手を差し出した。


テルンは再び縄を後ろに縛った。


さっきより緩かった。


カイルは気づいたが言わなかった。


テルンが空の器を取った。


そのまま行くと思った。


だが。


「あの」


テルンが口を開いた。


カイルは彼を見た。


「はい」


「さっき」


やはり。


「バルクの話」


カイルは内心笑った。


二人とも同じところが痛む。


なら先に刺す必要もない。


自分から訪ねてくる。


テルンが周りを見回した。


「本当に何か知ってるのか」


カイルは首を振った。


「確実なことはありません」


ボルトにしたのと同じ始まり。


だが。


同じ話をするつもりはなかった。


人によって恐れるものは違う。


ボルトは自分の取り分に敏感だ。


テルンは?


【不安】


【恐怖】


特に。


テルン → ドルマン


【恐怖】


カイルが聞いた。


「ドルマンさんが怖いですか」


テルンの顔が固まった。


「何?」


「違いますか」


「兄貴は……」


テルンが周りを見回した。


声が小さくなった。


「もともと厳しい人だ」


カイルはうなずいた。


「そうですか」


「なんで聞くんだ」


「バルクがドルマンさんに忠誠を誓っているようなので」


テルンがカイルをじっと見た。


「それをどうして分かる」


「やることを見れば分かります」


カイルは何でもないように言った。


「報告もバルクがして」


「……」


「ドルマンさんの名前をむやみに呼ぶなと怒ったのもバルクでしたし」


すべてテルンが見たことだった。


カイルは続けた。


「ドルマンさんはバルクをかなり信頼しているようですね」


テルンが小さく答えた。


「長いから」


カイルの目つきがわずかに変わった。


新しい情報。


「どれくらいですか」


テルンが口をつぐんだ。


カイルが笑った。


「言いたくなければ言わなくてもいいです」


「……5年」


(5年)


思ったより長い。


ドルマンとバルクの関係は単純な上下関係ではない。


カイルは記憶した。


「そうですか」


テルンが聞いた。


「それがなんだ」


「何でもありません」


「言え」


カイルは少し迷った。


今回も。


事実から。


「さっきボルトがバルクを公然と疑いました」


「それはお前が変なことを言ったから――」


「私が始めたのは事実です」


カイルは認めた。


「ですが話を続けたのはボルトでした」


テルンは否定しなかった。


「ドルマンさんが知ったらどうなりますか」


テルンの表情が固まった。


「……」


「何か問題がありますか」


「兄貴は自分の仲間同士で争うのを嫌う」


「それならボルトが叱られるでしょうね」


テルンが唇を噛んだ。


「多分」


カイルはうなずいた。


ここまで。


事実と推論。


そして。


一歩。


「ですがおかしいですね」


「何が」


「バルクがなぜすぐドルマンさんに言わなかったのでしょう」


テルンが目を瞬いた。


「何?」


カイルは何でもないように言った。


「自分を疑う部下が公然と詰め寄ったのです」


「……」


「バルクはドルマンさんに忠誠を誓っていて」


「それで?」


「私ならすぐに報告したと思うので」


テルンの表情が変わった。


カイルは言葉を止めた。


テルンに自分で考えさせた。


少し後。


テルンが言った。


「まだ言うほどのことでもないからだろ」


「そうかもしれません」


カイルは素直に同意した。


それがむしろテルンを不安にさせた。


「……他に理由があるってことか」


「分かりません」


「さっきから分からないばかり言うな」


「本当に分からないので」


カイルがテルンを見た。


「ただ」


テルンが待った。


「バルクの立場で考えてみました」


「何を」


「ボルトが自分の取り分を疑っています」


テルンの目が揺れた。


「そしてあなたも」


「俺は違う」


即答。


カイルは反論しなかった。


「そうだとしましょう」


「……」


「ですがこの話がドルマンさんの耳に入ったらどうなるでしょう」


テルンが口をつぐんだ。


カイルは代わりに答えなかった。


テルンが自分で言った。


「確認するだろうな」


「何をですか」


「前の物」


カイルの目が細くなった。


(そうか)


ドルマンには確認する方法がある。


少なくともテルンはそう思っている。


カイルが聞いた。


「確認して問題がなければ?」


「それで終わりだ」


「問題があれば?」


テルンの顔が固まった。


答えなかった。


必要なかった。


カイルは静かに言った。


「それならバルクの立場では」


少し止めた。


「ドルマンさんが確認する前に、この話を終わらせるのが一番安全でしょうね」


テルンの顔から血の気が少し引いた。


「……何?」


「ただそう思うということです」


「終わらせるってどういう意味だ」


カイルはテルンを見た。


答えなかった。


テルンが先に言った。


「まさか」


カイルは肩をすくめた。


「私が間違っていればいいのですが」


「バルクがそんなことするはずない」


「そうでしょうね」


「何年も一緒に過ごしてきたのに」


「それなら心配する必要はないですね」


テルンが口をつぐんだ。


カイルはその目を見た。


揺れていた。


テルンはドルマンを恐れている。


そしてバルクはドルマンの信頼を受けている。


だとすればテルンが最も恐れる状況は簡単だった。


バルクと争うこと。


そして。


ドルマンがバルクの側に立つこと。


カイルが最後に言った。


「ただ」


テルンがびくりとした。


「今夜はボルトの側にいた方がいいと思います」


「なぜ」


「一人でいるより安全でしょうから」


テルンの表情が固まった。


カイルはそれ以上言わなかった。


テルンが立ち上がった。


空の器を持った。


数歩歩いて止まった。


振り返らなかった。


「お前」


「はい」


「本当に何も知らないのか」


カイルはしばらく考えた。


そして答えた。


「知っていることはあまりありません」


嘘ではなかった。


「ただ」


テルンが少し顔を向けた。


「人はよく見ます」


テルンは答えなかった。


そのまま歩いていった。


*


夜が深まった。


カイルは眠らなかった。


焚き火は小さくなった。


盗賊たちも一人二人と寝床に着いた。


カイルは静かに人々を観察した。


ボルト。


テルン。


二人は一緒にいた。


いつもそうなのかは分からない。


だが少なくとも。


今日は離れていなかった。


少し離れたところで。


バルクが他の盗賊と話をしていた。


ボルトがそちらをちらりと見た。


一度。


少し後。


もう一度。


テルンも見た。


カイルは内心思った。


(いいぞ)


まだ何も起きていない。


バルクはボルトを殺す気はないかもしれない。


テルンを害する気もないだろう。


もしかしたら本当に何も抜いていないかもしれない。


だが。


それは重要ではなかった。


ボルトは今考えている。


バルクが自分を疑っていると。


テルンは考えている。


この話がドルマンに知られる前に、バルクが口を封じようとするかもしれないと。


互いに異なる理由。


だが結論は同じだった。


バルクは信用できない。


カイルは木に寄りかかりながら目を閉じた。


前世でも同じだった。


嘘を大きくつきすぎれば人は疑う。


相手が確認できない話を作れば長くは続かない。


最も良い嘘は。


すでに存在する事実の隣に置くことだ。


事実。


バルクは分配を任されていた。


事実。


ボルトとテルンはその分配を疑っていた。


事実。


バルクはその疑いに過敏に反応した。


そしてそこに。


たった一つだけ加える。


バルクもお前たちが疑っていることを知っている。


だから。


先にお前たちを始末するかもしれない。


証拠はなかった。


だが恐怖に証拠は必要ない。


可能だと信じた瞬間。


人は備える。


そして相手もその備えを見る。


疑いはそうして互いを食らい合って育つ。


カイルが目を開けた。


その瞬間。


バルクが動いた。


立ち上がって腰の剣を確かめた。


大した意味のない行動かもしれなかった。


眠る前に武器を点検する習慣かもしれない。


だが。


ボルトがその様子を見た。


ボルトの手がゆっくりと自分の短剣の方へ下がった。


テルンも体を起こした。


カイルの目つきが変わった。


(そうだ)


真実は重要ではなかった。


相手が何を真実だと信じるかが重要だった。


バルクがボルトの方を見た。


ボルトは短剣から手を離さなかった。


「何を見てる」


バルクが聞いた。


ボルトがゆっくりと立ち上がった。


「何も」


「なのに何で剣を握ってるんだ」


ボルトの表情が固まった。


テルンが立ち上がった。

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