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【織田信長編】第14章:楽市楽座の天界拡大、神罰なき大経済圏

旧約聖書の焼き討ちを終えた覇王・織田信長の前に、光の書物はさらなる変貌を遂げて展開した。新たに紡ぎ出された頁が映し出すのは、かつてエルサレムと呼ばれた都が、四方八方へと網の目のように伸びる広大な街道の中心地へと変貌した幻影であった。元の歴史では、捕囚から帰還した民は貧困と近隣民族の妨害に喘ぎ、内向きな信仰の殻に閉じこもる。しかし、信長が『統治権』を書き換えたこの世界では、もはや宗教的な因習に縛られる民は一人もいなかった。「神殿の再建などに、国費を注ぎ込むなど愚の骨頂」信長は不敵に笑い、漆黒のマントを翻してエルサレムの城壁を見下ろした。「城下に商人を呼び込み、富を巡らせてこそ国は自立する。余が安土で敷いた『楽市楽座』の法を、このオリエント全土に適用してくれよう。関所を廃止し、座の特権を剥奪し、あらゆる民族、あらゆる宗派の商人が、この都で自由に商いを行えるようにせよ。神の御加護を求める祈りの声など、銭の擦れ合う賑わいの前にかき消してやるわ」信長は自らの強力な覇気を万年筆の先へと込め、光の文字を次々と改訂していった。彼が刻んだのは、中世的な封建社会と特権経済を根底から解体し、富の循環を最大化するための近代的な経済の基本概念であった。――「経済」(けいせき/けいざい)――「権利」(けんり)これらの言葉が刻まれた瞬間、聖書のページに描かれていた「貧困への嘆き」の文字が、次々と商業の躍動を示す数字へと書き換わっていった。『総督ゼルバベルは、覇王の意志を体現し、エルサレム全域における諸関所を全面的に撤廃した。王は布告した。「これより、バアルを信じる者も、エジプトの商人も、フェニキアの船乗りも、我が都において自由に市場を開く権利を有する。座の特権は認めず、すべての商取引は市場の自由なる競争に委ねられる。国家の真の強さは、神への祈りではなく、この四海を巡る経済の活気によって証明されるのだ」』信長が書き換えを終えた瞬間、エルサレムの幻影は一変した。世界中から集まった商隊が、黄金や香料、最新の鉄器を携えて都の門をくぐり抜けていく。神の怒りを恐れる怯えの空間は消え去り、そこには人間の尽きぬ欲望と知恵が交錯する、古代オリエント史上最大の「巨大自由商業帝国」が誕生していた。「フハハ! 祈るだけで腹が膨れると思うなよ、神どもめ」信長は刀の柄を叩き、満足げに笑った。「これでこの国は、いかなる大国の軍の脅威にも屈せぬ、不滅の富を手に入れたのだ」【伊藤博文編】第16章:万国公法への昇華、神なき国際秩序一方、時空の対極に位置する伊藤博文は、新しく新生したエルサレムを眺めながら、その持続可能性を確固たるものにするための「制度」の構築に着手していた。信長が経済の奔流を生み出したのに対し、伊藤が目指したのは、その膨大な富と平和を永続的に担保するための、国際的な「法秩序」の確立であった。元の聖書では、帰還したユダの民は周辺のサマリア人やアラビア人たちと激しく対立し、小競り合いを繰り返す。それは、神に選ばれた民という優越感がもたらす、果てなき民族紛争の始まりであった。「民族や宗教の違いを理由に、周囲を敵と見なしていては、国家の存立は危うい」伊藤は眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、万年筆を静かに構えた。彼の脳裏には、幕末から明治にかけて、日本が「万国公法(国際法)」を学び、西欧列強の不平等条約に立ち向かいながら、対等な国際社会の一員としての地位を確立していったあの苦難の道のりがあった。「神に選ばれたという独善は、他国からの孤立と侵略を招くだけです。今やこのエルサレムは、世界の交易の中心。ならば、近隣のすべての諸国と対等な外交関係を結び、国際法に基づいた平和な秩序を築くべきです。国家の安全は、神の奇跡ではなく、条約とシステムによって守られるべきなのです」伊藤の筆先から、青く澄んだ理性の光がページへと迸った。明治の日本が世界の荒波を泳ぎ切るために血肉化し、国家の自立を法的に定義した最高概念が、今、聖典に刻み込まれる。――「外交」(がいこう)――「条約」(じょうやく)これらの近代国際政治の精髄が、聖書の後期に描かれていた「異民族への敵意」の記述を、鮮やかに塗り替えていった。『総督ネヘミヤは、周囲の諸部族の代表をエルサレムの議事堂へと招き、歴史上初の「万国公法会議」を執り行った。ネヘミヤは宣言した。「我らは神の指名によって他者を排斥せぬ。これより、我が共和国は近隣のすべての国々と対等な外交関係を開き、互いの領土不侵犯と自由通商を約束する『不平等なき条約』を締結する。いかなる紛争も、武力や神託ではなく、この法の文面に基づいた対話によって解決されるものとする」』伊藤の万年筆が最後の条文を綴ると、エルサレムを取り囲んでいた不穏な戦火の幻影が、一時に消え去った。国境線には、敵を拒むための血塗られた城壁ではなく、互いの利害を調整する税関と外交使節の館が整然と立ち並んだ。神の絶対的な支配によって分断されていた世界が、人間の理性による「国際連盟」の雛形へと、その根底から昇華した瞬間であった。「これで、持続可能な平和の枠組みが完成しました」伊藤は万年筆を胸に収め、誇らしげに微笑んだ。「信長公が興した富を、この法が永遠に守り続けるでしょう」

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