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【織田信長編】第13章:覇王降臨、旧き預言の焼き討ち

灰色の虚無空間が、漆黒のマントの翻りによって激しく波打った。織田信長が開いた光のページは、旧約聖書の後期、預言者たちが神の裁きを叫び、王や民に無条件の平伏を要求する『預言書』の領域であった。元の聖書では、預言者たちは神の絶対的な代理人として王の前に立ち、その失政や不信仰を容赦なく弾圧する。民は預言者の言葉に怯え、ただ灰を被って涙を流す。宗教の権威が、地上のすべての政治と武力をねじ伏せる、完全な神権の極致であった。「神の言葉を盾に、王を脅し、国を惑わす呪術師どもめ」信長は腰の太刀の柄に手をかけ、威風堂々と光の文字を見下ろした。その眼眸には、かつて天下静謐の邪魔をせんとして立ちはだかった比叡山延暦寺や、石山本願寺の顕如らの姿が重なっていた。「余が地上にいた時も、神仏の罰を説いて民を惑わし、一揆を起こして国を乱す不届き者が無数におった。余はそれらをすべて焼き尽くし、ただ一筋の『天下の法度』のもとに従わせた。ここにある預言者どもも同じだ。王の上に立ち、己の言葉を神託と偽ってまつりごとを狂わせる狂信者など、国家には不要。預言の言葉など、余の天下布武の炎で灰にしてくれよう」信長は自らの強力な意志を光の文字へと叩き込んだ。彼が望んだのは、宗教の権威を完全に国家の統治下におく、圧倒的な武断政治の確立であった。彼の手によって、明治の世で定義され、近代日本の骨組みとなった決定的な言葉が、戦国覇王の荒々しい筆致で聖典に刻まれる。――「統治権」(とうちけん)この言葉が刻まれた瞬間、聖書のページから「神の罰」を説く予言の文字が激しく爆ぜ、消滅していった。『預言者たちが王宮の前に集まり、「神の怒りによって国が滅びる」と叫んだ時、王は彼らを崇めるのを止め、直ちに近衛兵を動かしてその身柄を拘束した。王は宣言した。「この国の統治権は、天の神ではなく、この玉座にある王にのみ帰属する。神の言葉を語りて民を惑わし、国家の秩序を乱す者は、いかなる聖職者といえども、反逆罪として厳罰に処す。宗教は民の心を静めるためにのみ存在せよ。法を動かすのは、常に生きた王の意志である」』信長が文字を書き換えた瞬間、虚無の空間に凄まじい業火が燃え広がった。それは、神の権威によって王を縛り付けていた中世の鎖を、根本から焼き切る「覇王の炎」であった。幻影の中の預言者たちはその牙を抜かれ、国家の厳格な管理のもとで、ただの祭祀を司る一官僚へと格下げされていった。「フハハハ! これでよし!」信長は豪快に笑った。「神に怯えて生きる国など脆弱の極み。王が不滅の武と法を示してこそ、民は枕を高くして眠れるというものだ」【伊藤博文編】第15章:元勲の知略、近代的合議制の確立一方、時空の別の結節点において、伊藤博文は全く異なるアプローチで旧約聖書の最終頁に臨んでいた。彼が開いたのは、捕囚からの帰還後、民が一致団結してエルサレムの城壁を再建し、律法学者エズラが民の前で神の法を読み聞かせる『エズラ記』および『ネヘミヤ記』の場面であった。元の記述では、民は神の律法を聞いて自らの罪を悟り、一斉に泣き崩れる。そして、外国人の妻をすべて離縁するという、極端な血統の純血主義と、律法への盲目的服従を誓う。それは、内向きで閉鎖的な、宗教共同体の完成を意味していた。「これではいけませんな」伊藤は眼鏡の奥の目を細め、静かにため息をついた。彼の脳裏には、明治の日本が「和魂洋才」を掲げ、古い攘夷思想を捨てて世界の先進文明を広く取り入れ、近代国家へと飛躍したあの劇的な改革の記憶があった。「国を閉ざし、血統や古い教条に固執することは、国家の衰退を招くだけです。ましてや、指導者一人の独断や、古い律法の文字にすべてを委ねるなど、近代政治の敗北です。民が涙を流して服従するのではなく、自らの代表を通じて国政に参加し、議論によって法を洗練させていく『仕組み』が必要です」伊藤は愛用の万年筆を構え、光のページに青く澄んだ理性のインクを走らせた。彼が刻み込んだのは、近代日本の国会の基礎となった、国家の意思決定を民主化するための最高概念であった。――「立法」(りっぽう)――「行政」(ぎょうせい)これらの言葉が、古代の閉鎖的な律法の記述を、鮮やかに塗り替えていった。『律法学者エズラが古い書物を掲げた時、民の代表たる部族長たちは、ただ平伏するのを止めた。彼らは「総督評議会」を組織し、古い律法の中から現代の社会に適した条項を精査し、新たな法を創り出す『立法』の権能を確立した。さらに、総督ネヘミヤはその法を厳格に執行する『行政』の長官として位置づけられた。国家の運営は、神の託宣や一人の王の気まぐれではなく、制度化された合議と、法の手続きによってのみ運用されることとなったのである』伊藤の筆が止まると、エルサレムの街並みを覆っていた宗教的な陰鬱さが消え去り、そこには近代的で風通しの良い「議事堂」の幻影が浮かび上がった。民は古い教条の奴隷ではなく、自らの手で社会を動かす「市民」へと昇華したのだ。「これで、中世の暗黒を完全に飛び越えました」伊藤は満足げに微笑み、万年筆を胸ポケットに収めた。「信長公の武断も凄まじいですが、国を永久に存続させるのは、やはりこの『制度の力』ですな」

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