第84話 到着、やらかす、街の門
兎に角だ! 兎に角、王子に対する失礼の数々を無かった事にする。
うん。
はいっ! もうなくなりました。
って事で、気にすんな、ルーカス。
ブロロローー……
フジノ街を目指していたトラックを、巨大な岩の前に停車させた。
「門まで来ると、帰ってきたなって感じるよな」
後は、許可証を見せて中に入るだけだ。
俺達の乗るトラックの前には、天然の城壁である大岩がそびえ立っている。
俺達の街を守っていくれる守護神だ。
◇◇◇
トラックの荷台――
ルーカス王子とセリアは、舗装済の道路に入り劇的に揺れがすくなくなった事に驚いていた。
「セリア、見てみろ。
この道を。
王都でもこんな舗装された道など見た事無い」
「揺れも大分収まりましたしね……」
「恐るべき技術力…… 人格的には最低最悪だが、やはり」
「そうですね。 人としてかなりの疑問符が付く人物ですが」
二人はカズヤへを王都へ招聘する事を思い直していた。
ブロロローー……
◇◇◇
天然の城壁である巨大な岩の裂け目に、砦のような櫓が組まれ、巨大な門が存在する。
俺達やフジノ街の人々は、大岩門って呼んでいる場所だ。
フジノ街への唯一の出入り口。
検問所からフジノ軍の憲兵隊所属の兵士が出てきた。
今日の門番だろう。
彼らが手招きして、進むように指示をしている。
「ライネ、すまんけどダッシュボードから……」
「はい、許可証」
ライネが笑顔で許可証を渡してくれた。
ホントに気が利く俺の奥さん。
トラックを徐行させて検問所前につけると、運転席のトコに兵士が近寄ってきた。
今日の門番は、オークとコボルトの兵士か。
「カズヤ様! お帰りなさいませ」
若いコボルトの兵士が俺に声をかけてきた。
後ろでオークが俺にお辞儀をしている。
「ご苦労さん、はい、コレ」
ライネから受け取った許可証を見せた。
「はい、確認しました! おかえりなさいカズヤ様!」
コボルトが笑顔で言ってくれた。
「うん、ただいま」
感じの良い奴だ。
俺も自然に笑顔になっちゃう。
やっぱり挨拶って大事だよね!
なんだか何か良い事ありそうな気がして、気分が良くなった。
「それじゃ、行こうか?」
笑顔で嫁達に言っ
嫁達が助手席側の窓の方を向いている。
「……どうした?」
何かあったか?
固まってるライネの横から向こうの方を覗き込むと、ルーカス王子が憲兵隊長のオーガに胸倉を掴まれビンタされていた?!
「……うん。 アレは、何してるの?」
一体何があったの?
そんな大事な事ちゃんと知らせて!
ライネ、お前の実家の領地だぞ?
領地没収どころか、お家断絶させられてもおかしくない事態じゃないのか?!
「あ、あの、王子が剣を抜いてフジノ軍の兵士に斬りかかって……」
「ああああ、そうなんだぁ」
ライネの言葉で大体理解した。
やらかしたな、王子……
「直ぐに止めないと! みんな、待ってろ!」
俺は、トラックを飛び出し、王子の救出に向かった!
なんで、こんな事に!
てかさ、王子が荷台を降りた時点で誰か止めなよな!
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大型チェーンソーを背中に背負うオーガの前でルーカス王子とセリアが正座していた。
どんな状況?
「お、おい?」
俺の呼びかけにオーガが気づいて、こっちに振り向いた。
すっごい笑顔!
俺は、血の気がひくぞ。
「ああ、カズヤ様! 丁度良かった、暴漢を取り押さえたところです!
この頭の悪そうな二人が我々に突然襲い掛かってきたので取り押さえ、注意してたところです。
幸い、守備兵団に怪我人が出ませんでしたし、初顔の奴等なので厳重注意にしたいと思いますが、いかがなさいますか?
首を刎ねますか?」
王子の首を刎ねる訳にいかないでしょ?
「い、いや、いいから。 その辺で許してあげて!」
物騒な事を言ってる憲兵隊の隊長言った!
絶対ダメ!
「ハハハ、全くカズヤ様はお優しいですな。
たまにいるんですよね、冒険者とか山賊とかが身の程知らずに向かってくるのが。
お前達、カズヤ様の恩情に感謝しろよ! 今回は、助けてやる!」
腕組して豪快に笑って俺に言うと、ルーカス王子に強い口調で感謝しろとは……
「うん、取り敢えずそこまでにしてくれ。
この二人は俺の大事なお客さんだからな」
「え?!」
俺の言葉に、オーガが凍り付いたみたい。
何か申し訳ない気持ちになったが、ホントにこの領地の死活問題なので割り切らないと。
職務にそって対応しただけなので、なんの落ち度もないのだが、相手がな……
「ぁ~~あ」
やっちゃったなぁ。
最初から王子の印象最悪になるぜ。
「ぅぅぅぅうう、カ、カズヤ様、申し訳ありません!
カズヤ様のご友人とはつゆ知らず…… この身をもって責任を」
「責任?」
オーガが背中にしょった大型チェーンソーを取り出すと、ブルンブルンかけて、自分の首に……
「やめろぉ!」
当然、俺は止めるよ!
だって、仕事しただけなんでしょ!
「だ、だって、カズヤ様、ぁ~~あ、とかいって、凄い怒ってるんだもん!」
「いや、怒ってないから、大丈夫だから! ねっ、やめよう? ねっ!」
ちょっと、あーあ、とか言っただけじゃん!
やめてくださいよ!
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……何とか自害を思いとどまらせた俺。
王子とセリアは、死んだ魚のような目をしている。
大丈夫か?
「ささ、王子。 立ち上がって。
ほら、セリアも!」
俺が言うと、二人は無言で立ち上がった。
見た限り、怪我らしい怪我がないようで良かった。
「ささ、トラックへどうぞ!」
務めて明るくふるまう俺。
なんとか、無かった事に!
「全く歯が立たなかった」
「私もです、ルーカス様」
「殺されるかと思った」
「私もです、ルーカス様」
「魔物に街が占拠されてるのかと思った」
「私もです、ルーカス様」
「……しかし、この領地では魔物を飼いならしているのか?」
「恐ろしい事ですね。 もしや、謀反を企てているのではありませんか?」
「なっ!
……しかし、確かに王国に報告せずにこのような戦力を所持するからには、その疑いも……」
「我々を連れ出したのは……」
「もの凄くマズい状況じゃないのか? セリア」
「……兎に角、今は様子を探る事に」
「そ、そうだな、この場では逃げようがないし」
ボソボソと俺の後ろで王子とセリアが話している。
「あーあ、クソッ!」
イチャイチャしやがって。
これだから、若い奴は…… ヤレヤレ。
「ところで、どうして襲いかかったの?」
トラックに向かい歩く俺は、後ろの王子達に聞いた。
自殺願望でもあるのか?
まさか勝てるとでも思った訳じゃないだろう?
「俺は、この国で有数の剣士でもあるからな!」
「私も、この国で5本の指に入ると自負している!」
「……あ、そう」
ダメだ。
質問の答えになっていない。
王子達って、結構…… 天然なのか?
「おーい、サニー。
ダメじゃないか、ちゃんと王子を見てないと」
トラックの荷台にいるサニーに声をかけた。
「俺の仕事じゃない」
でた。
サニーが答えたけど、自分の仕事じゃないからやらないで良いって考えはやめた方がいいぜ。
「あのな、みんなで協力していこうぜ、こいつ等、クソ弱いんだから、ちゃんと観ててやれよ」
大人として、当然の注意。
「僕もそう思うよ、おじちゃん!」
ほら、子供のカインもそう思うだろう?
「びっくりするくらい弱い二人何だから、ちゃんとお守りしてあげないと」
クアラも続けた。
「……確かに、頭も体もクソ以下のこいつ等に勝手にさせた俺も悪かった。
すまん」
サニーが素直に頭を下げた。
「偉い! 見直したぞ、サニー!」
「ねっ、どうです。 みんな、王子が大好きみたいですよ」
後ろの王子に言ってあげた。
「そうかなあ?!」
ルーカス王子が真っ赤な顔してトラックによじ登った。
何を、そんなに怒っているのだろうか?
「おい、お前……」
ん?
セリアが俺に声をかけてきた。
告白?
俺は、妻帯者だぞ?!
しかし……
「フフ、実は俺もお前が」
「なぜ、多くの魔物が人間と一緒にうろついている?」
なんだ、その事か。
危うく変な事を口走るとこだったぜ!
しかし、何かおかしいか?
「だって、みんなフジノ軍の同じ憲兵隊員だもん、一緒に行動してるに決まってんじゃん」
何を当たり前の事聞いてくるんだろう。
「貴様、魔物を使役して謀反を企んでいるのではあるまいな!」
ん? 謀反?
「なんの話だ? 単に魔物も街の住民なだけだ」
「はあ?」
セリアが変な声を出したな。
……あ
しまった!
街の中に入ってから教えるつもりだったのに!
こうなってはしかたない。
「サプライズで教えるつもりだったが、実はな、フジノ街は、魔物と人間が共存する街なのだ」
セリアの耳元で小声で言った。
いい匂いがした。
「いや、近いだろバカ」
普通にセリアに嫌な顔をされ言われた。
少々ショック。
「でも、王子には内緒ね! サプライズだから!」
ちゃんと離れて俺は、セリアに忠告した。
「そんだけデカい声なら、ルーカス様にも聞こえてるだろ? バカが」
そう言ってセリアも荷台によじ登っている。
俺は、トボトボと運転席に戻る事にした。
奥さんに癒してもらおう。
ちょっとしたアクシデントがあったが、とうとう街に到着だ。
ちょっとビンタされたくらいでガタガタ言わないのが王子の良いところなんだよね。
うん、そんな人物から知らん。
兎に角、こっから挽回すればいいんだよ。
そうするしかないのだけど。
って事で、次回も、乞うご期待!




