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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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第85話 フジノ街 旧市街地

トラックがフジノ街についた。

この大岩門を抜けると俺達の街だよ、王子!

オールストレーム領、フジノ街――



ブロロローー……


 大岩の裂け目の一本道を進む俺のトラック。

 岩壁に挟まれた薄暗い道の先に光が見えてきた。


ブロロローー……


「うわっ、眩しい」

 岩山を抜けた途端、光が目に飛び込み一瞬白く視界が奪われたが、直ぐにフジノの旧市街の風景が目に入った。

 帰ってまいりましたよ!

 王子、アレが、俺達の街、フジノだ!


 街道を進むにつれ、道路の舗装具合がより良くなってきた。

 コンクリートを使用して舗装した道路だが、金がかかるので主要道路のみの施工となっている。

 路地とかは石畳とか土のとこが多い。

 アスファルトの作り方なんて知らないし、困って無いからコレで良し。

 地球の詳しい人が見たら何か言われるかもしれないが、幸いそんな奴はいないので気にしないでいられた。


「ああ、今日は自転車が多いな」

 旧市街に入ると道路を通行する自転車や馬車が増えてきた。

 仕事や用事に使用しているであろう自転車や馬車が、忙しそうに走行しているおかげで、トラックのスピードを落とすハメになってしまったが、街中だし、安全運転で行こう。 


ブロロローー……



◇◇◇


トラック荷台――


「こんな山の中に街が出来ているなんて…… しかも、見ろ、セリア」

 王子はトラックの荷台から身を乗りだして辺りを見て言った。

 オールストレームの街に負けるとも劣らない街が広がっている。

 多くの人が行きかい、王都では貴族に普及し始めたばかりの自転車が数多く走っていた。

 馬車もちらほら通行している。


「魔物が住んでるとカズヤが言っていたが、然程みないもんだな」

「そうですね、街に入ってから数匹のゴブリンを見ただけですから」

「少々、拍子抜けだが……」

 王子は、通行の流れを見ていて法則性に気づく。

「ルーカス様、見てください」

 何かに気づいたセリアが王子に声をかける。

「……あ」

 王子は、道を走る自転車が法則にのっとり通行しているのに気づいた。 

「そうか、この大きな道の中央を境に左側を通行している。

 このトラックも……」

 その言葉に、セリアが頷く。

「つまり、走る際にルールがあるという事。

 そして、みて下さい! 誰しもがそれに従い行動してるのを!

 歩行者は、道の両脇を通行していますよ」

「ああ! そのようだな……」

 王子は、街行く自転車や馬車や歩行者、そして街並みを眺めた。

「この街では、秩序が保立てれいるようだ。

 何かしらのルール、法のような物が存在しているのだろう。

 通行する者達を見ただけで、ここの住民達は法のようなものを理解し行動しているという事が解る」

 流れゆく風景を眺めながら王子は呟いた。

「道を走る多くの自転車や馬車達。

 そして、両脇を歩く人達を見れば、ルーカス様のおっしゃる通りなのでしょうね。

 道に唾する者も、大騒ぎする人も見かけません」 

 二人は、それらを見ただけで、この地の住民の順法意識、そしてそれを理解する教育水準の高さを感じ取った。

 そして、王子は考える。

 王都はどうであろうか? と。

「中央部であれば……」

 口にした王子だが続ける事は無かった。

 王都と言えど、中央部でさえこのように秩序よく人々が行動しているのだろうか思ったからだ。

 まして、貧民街や中央から外れに行くほど、治安が悪くなり道の中央にたむろする人や勝手にバラックを建て商売を始める者もいるありさまだと。


「馬鹿な! こんな辺境の地に……」

 エルヴァスティ王国、ルーカス・エルヴァスティ王子は王都ヴァーラとの民との違いに驚きと認めたくないプライドがぶつかり合った。

 そんな王子の手に触れたセリア。

「ルーカス様、ここがこの街の一番良い場所なのでしょう」

 王都の民との違いを感じ落胆した様子の王子にセリアが言った。

 セリア自身もこのような辺境の地に王都が負ける訳がないと思いたかったからだ。

「そうだな。

 俺を驚かす為に、一番良いとこを見せたという訳だろう」

 納得した王子の顔に自信が戻る。

 そして、次の瞬間、ニヤリと笑った。


「おい、貴様! カズヤにコイツを停めさせろ!」

 王子は、目の前で二人の子供とキャッキャ遊んでいるサニーに声をかけた。


「なんだ、お前? 自分で言えよ、バカか?」

 安定のサニー。

 別に王子だろうがブレない男。

 そして、イラっとした王子とセリア。


「貴様、ルーカス様に対して無礼な!

 余程死にたいらしいな……」

 セリアが剣に手をかける。

 その様子をチラッと見たサニーだが、プイっとしてカイン達の方を向く。

 サニーにとって、王子など単なる他人の成人男性でしかなったからだ。

 転移してきたばかりの日本人であり人格的に少々難ありの人物

「きっ、貴様!」

「よい! 俺が行く!」

 立ち上がりそうになったセリアを制して王子は、荷台の前方に行くとトラックのリアガラスを手でノックした。


コンコン! コンコン! コンコン……


「ん?」

 リアガラスを叩く音に後部座席に座すミカエルが気づいた。

 後ろを振り向くと王子が何か訴えかけている。


「カズヤ、ルーカス王子様が何か用事あるみたいだぞ」

 そう言うと、カズヤがルームミラーでリアガラスを確認すると、王子が何か言ってガラスを叩いているのが見えた。

「なんだろうな? みんな、ちょっと止めるぞ!」

 カズヤは、ウインカーを左にあげると、ゆっくりとブレーキペダルを踏んだ。


◇◇◇



 荷台に乗る王子がリアガラスを叩いて何かを訴えかけてきたので俺はトラックを停車させた。

 なんだろう?


「あれ? カズヤさんどうしました?」

 家に到着する前にトラックが停まった事を不審に思ったのかライネが聞いてきた。

「いや、何か王子が用事あるみたいだから停まったんだよ。

 どうせ、トイレとか、そんなとこだろうけどちょっと聞いてくるな」

 シートベルトを外しながら言うと、俺はトラックを降りた。

・

・

・




 荷台を見上げると、王子が顔を出してきた。


「カズヤ、確かに凄い街だな。

 道も綺麗だし、秩序が保たれているのが解るぞ」

「ああ、どうも。

 それで、何かようか?」


「確かに、この街の中心部は商店も多く、王都でみる大店の商会の看板もちらほら見た!

 だが、発展しているこの街にも貧困街などがあるのか?」

 王子が言ってきたが、質問の意図が解らな。

 なんでそんなトコが気になるのかね?

「まあ、しいて言えば、この辺が低所得者の住むエリア何だが……

 住居は、路地を入ったとこにある長屋とかになるけど、観てみたいの?」

「はぁ? ちょ、ちょっとまって!」

 そう言って王子が顔を下げた。

 なんだろう?

 正直に言ったのに、問題があったか?

 旧市街地の住民は、そのほとんどが移住してきた人間や獣人、各地の商会の単身者とかだ。

 人口が多いけど低所得者が多いエリアになっているから貧困街と言えば、ここだろ?

 しかし、みんな仕事して給料もらって生活してるし、貧困では無いだろうけどな。


 昔はこの辺を中心に街を作ったけど、拡張に伴い所得の多い者は、新市街地の方の郊外に戸建てを購入したり、街中の集合住宅に住んで生活するように住み分けが進んでいる。

 元々の魔物以外の新規で入ったゴブリンやコボルト、オークなどの移住者は、街で過ごす為に特別収容区での教育を受けさせてる。

 大概の魔物は、住み込みで新市街地で働いているか、オールストレーム領の街で暮らす事になるから必然的に人間の割合が多くなる地域になった。


「しかし、この辺の家を見て何が楽しいのかね?」

 まあ、この辺は、風俗街とかもあるし、楽しいのだが王子の行くようなトコでもないだろう。



トラックの荷台――


「お、おい、セリア。 この辺が低所得者の住む地域だと言ってるぞ?!」

「ルーカス様、あの男が言っているのは、どうせ強がり、ハッタリの類に決まっています」

「しかし、うん。 そうなのかもしれない…… アイツめ」

 王子が荷台から顔を出して俺を見ているが、そんな事を言う為に呼んだのか?


「カズヤ、俺とセリアで住民がどんなとこに住んでいるか見せてくれないか?」

 王子に言われたけど、長屋なんてみて楽しいか?

「別に構いませんけど、個人宅だから、中は多分見れないとおもいますけど?」

「なあに、構わん」

 そう言うと、セリアを連れて荷台から王子が降りてきた。

 連れてけと言う事か?

 早く帰宅したいのだが、そんな事で王子の機嫌を損ねても面白くない。

 しゃあない。

 どうせ、大通りに面したトコは店舗やオフィスなどが主で、長屋とかの住宅は裏手にあるから路地に入ったらすぐに見えるだろう。

「そんじゃ、サクッと見てきますか? 二人とも俺についてきてくださいよ」

「うむ! 宜しく頼む! セリア、行くぞ」

 ただ家があるだけなのに、何が楽しいんだか?


 俺は、王子とセリアを連れて少し歩いて、路地に入った。

 目の前には、新型の長屋群や小さめの戸建て住宅がズラッと並んでいる。


「ね、家があるだけでしょう?」

 まあ、交番や小さな生活雑貨や食料品を売る個人商店もあるけど。

 王子とセリアが興味深げに住宅街を眺めている。


「ルーカス様」

「ああ、セリア」

 王子が少し嬉しそうだ。

 なんなの?


「発展していると思ったが、やはり王都には敵わないようだな、セリア?」

「変わった建物ではありますが、平屋ですし、戸建ての方も小さい庶民的な感じの家ですね」

「フフフ、表面上を取り繕った張りぼての街と言う訳が?」

「そのようです。 しかし、張りぼてであっても、あのような街を作り上げた手腕……」

「うむ。 この地より発展している王都が、あの男の手にかかれば……」


 なんか王子とセリアが俺を見ている。

 何なんだ?

 どうでも良いが、人の家をジロジロ見てるのも悪いだろう?

「満足しました? そろそろトラックに戻りませんか?」

 済んでる人に文句を言われる前に退散したい。


「そうだな、今行く!」

 王子が俺の方へと歩き出した。

 良かった、家の中まで見せろと言われないかひヒヤヒヤしてたから。

 俺は、王子とセリアを連れてトラックに戻る事にした。


旧市街地に入っただけなのに、ゴチャゴチャと……

まあ、王子が何か納得しているのでいいか。

さてと、そしたら新市街地を抜け、俺達の家にご招待だぜ!

って事で、次回も、乞うご期待!

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