第76話 宴会しようぜ その1
不味い事になった。
俺の連れが、王子を半殺しというか殺しかけてしまった。
何とか、誤魔化せないものだろうか……
「俺の故郷の言葉にこんなのがある……
『雨降って地固まる』
いやー、まさに俺達の事ですよね、王子!」
揉み手&笑顔で俺は王子に言った。
デロンと出てた目もちゃんと元通り、良かったですね。
サニーの暴行の件、無かったことにしてもらいたい。
俺は、オスモとエルモの方を見た。
「いや、まさにその通り!
ちょっとしたアクシデントなど旅の良い思い出ですよね!
うん! この出来事が、エルヴァスティ王国とオールストレーム領の絆を深める事になりましたな!」
オスモが笑顔で言った。
そうだ、オスモ。
それでいい。
「そうだね、父さん。
懐の深い、偉大な王子にとって些細な事があったけど、なんか結束が深まった気がするね!」
よし、エルモ。
二人共ヤケクソだ。
いや、ヤケクソでも、王子に復讐心を持たせないようにしなきゃなんないから必死なのだ。
このまま、グダグダになし崩し的に誤魔化しちまえ!
俺は、二人に頷くと視線を王子に戻した。
「いや、お前等、頭おかしいのか?
ついさっき、殺されかけたんだぞ?」
笑顔の俺、オスモ、エルモに、能面のような表情の王子が言った。
やはりダメみたい。
完全に怒らせたようだ。
それも仕方ないとは思う…… でもな!
「まぁ、怒るのも解るんだけど、アンタも悪いよ、ねぇ。
事情は大体聞いたけどさぁ、土地を明け渡せって、悪徳地上げ屋じゃねぇんだからよぉ」
俺は、王子の横に座り、肩に手を回して指で王子の胸のあたりをコネコネ突いた。
フレンドリー逆切れ作戦。
男同士、腹を割って話せば解り合えるってもんですよ。
「ヤメロ。
触るな。
離れろ」
王子の方からも俺に声をかけてきたし、友達になれたような気がした。
男の癖に殺されかけたくらいで腹立てるなんて、どうかしてるぞ。
「よし、飲もう! 大の大人が集まって辛気臭い顔してても仕方ねぇだろ?
飲みながら、話をしよう」
我ながら、ナイスアイデア!
「そんじゃ、酒じゃな」
ラージャが空間収納から酒やつまみを出してくれる。
ホント気が利く奥さんだぜ。
俺は、ラージャと結婚して幸せだ。
チラッ
銀髪の女、セリアってのが俺を見つめている。
王子の女の癖に…… この好き者め! 浮気性なのか? あぁん?
「死ねッ!」
なっ?!
セリアが隠し持っていたナイフで俺を刺そうとしやがった!
こんな善良な俺に?!
「痛ッ!」
「手癖の悪い女だぜ…… 良かったな、男だったら死んでるぜ」
俺を狙ったナイフを手にしている手首をサニーが掴んで持ち上げていた。
あ、危なかった。
サニーが珍しく暴力をふるっていない。
意外と、フェミニストなんだな。
ロリコンのくせに。
「……」
しかし、手首を掴まれてるセリアが痛そうにしている。
可哀想だ。
よし、助けてやろう! 俺、優しいから。
「おい、サニー。 その辺で許してあげて」
「うん、いいよ」
サニーがセリアの手を離した。
おっと、こんな事してる場合じゃないな。
コップを皆の前に並べないと!
酒は、日本酒と焼酎、肴は、スルメ、ピーナッツ、塩辛、お新香、塩くらいでいいだろう。
ここはホテルだし、厨房があるから調理した料理をこの部屋に運んでもらう事にしよう。
「でもさ、なんでサニーはこの領地の為にそんな暴力なんて振るったんだ?
別にお前にメリットなんて無いだろう?」
働き者の俺が宴会の用意をしながら聞いた。
俺が働いているのにラージャが勝手に始めている。
このアル中め。
「いや、無茶言われてて可哀想って思ったし、暴れたかったから」
なるほど。
サニーの答えを聞いて納得。
頭がおかしいんだ、コイツ。
暴力でどうこうしようって思考はやめておいたほうがいい。
等と考えている内に、酒と肴の用意が終わった。
オスモとエルモが手伝ってくれたからな。
手伝ってくれたのは多分、王子の視線に耐えれないのと、飲ませてうやむやにしたい思いからだろう。
「さてと、始めるか! おい、サニー隣の部屋の皆を呼んできて!」
日本酒の入ったコップ片手に言った!
・
・
・
2時間後――
「だから、俺は、別にこの地から出ていけなんて言うつもりなんてなかったんだよ!」
目の座った王子がコップを机に叩きつけて言った。
かなり、飲ませたのでべろんべろんに酔ったみたいだな。
最初は嫌がってた癖に…… へへへ、ちょろいな。 なんとか殺しかけた事をうやむやに出来たみたいだ。
しかし、聞き捨てならぬ。
「何言ってんだよ、お前が直轄地にするって言ったんだろ、アホが」
俺も、だいぶベロンベロンになっている。
隣の部屋にいたライネ達も参加しての宴会。
オールストレームホテルの料理も追加でジャンジャン持ってこさせた。
宴会ってやっぱ楽しい!
「王子に失礼だろ、アホが、死ね!」
顔を紅潮させたセリアが俺に暴言。
ホントに口が悪い女だ。
しかし…… 熱くなったのか、上着を脱いでシャツ一枚。
胸元の谷間が素敵です。
素晴らしい巨乳なので、俺は暴言など気にしないのだ。
チラチラみてると幸せな気分になれたからな。
カズヤは、少年のようにキラキラした目をしていたという…
解放的になるし、やっぱ、酒って素晴らしい!
素晴らしい胸の谷間を拝めただけでも、宴会を開いた事が正解だと思えた。
「お前は、セリアの胸ばっか見るんじゃない!」
「いや、そんなには、見てないです」
王子に指摘された俺は、視線をずらす。
クソッ! こいつがいなきゃ、ガン見すんのに!
「ん? そういや、お前さっき「別にこの地から出ていけなんて言うつもりなんてなかった」とか言わなかったか?」
俺は王子がさっき言った言葉を思い出した。
「王子に向かって、お前とはなんだ!」
セリアがキー、キー、うるさい。
「あのな、俺はコイツと話をしているのだよ。
黙ってないと、あそこでユリアナちゃんを危ない目で見てるサニーを呼んでくるからな!」
セリアが黙った。
後でサニーにもう一度、ユリアナちゃんに近づくなと注意しておこう。
「いくら稼げる土地といえど、王都から離れているこんな辺境の地を直轄地にするなんて… そんな考えなど王国には無い。
脅しに言っただけだ」
「は? えぇ? なんで、そんな事を?」
意味が解らない。
頭がおかしいのだろうか?
いや、殺されかけたのに笑顔で酒飲んでる時点でおかしいのは確定なのだが……
「フフフ、自転車の発明や高品質の製品。
この地に、天才が出現したのだろう? 隠さなくてもいい。
フフフ、俺はな、その者を召し抱えるとの王国の命を受けこの地にやってきたわけよ!
だが、そんな天才をハイそうですかと引き渡すわけがないと思った賢い俺は、一芝居うったのだ」
頭の悪そうな王子がベラベラと教えてくれた。
しかし……
「お前! 良い奴だな! ほら、飲め、飲め!
そうか、天才か! ウヒョーー!」
天才と呼ばれて気分が良い。
フジノ商会で取り扱っている商品は、何一つ俺の発明品など無いが俺の事だ!
俺は、王子の肩に手を回して、酒を注いでやった。
いやはや、楽しい宴会だぜ!
それなのに……
「オスモもエルモも、こっち来て飲めよ! 心配事がなくなったぞ!」
二人に言ったが、青い顔して首を横に振っていた。
身分差とか気にしてんのか? ん?
オスモとエルモは、ペコペコしながら必死に王子とセリアに同行してきた奴等に酒を注いで回っていた。
青い顔してるより、赤い顔になった方が楽しいのにな、ご苦労なこった。
宴会が始まった。
やっぱ、酒飲んでワイワイすんのは楽しいですよ。
上手い事、誤魔化せてうやむやに出来たしな!
俺のナイスプレイだ。
って事で、次回も、乞うご期待!




