第64話 探しに行こう、そうしよう
家出したライネが見つからない。
数日過ぎてるし、大丈夫なのか?
不安で不安で仕方ない。
カズヤ達の家、車庫――
「ようし、皆ちゃんと乗ったな?」
愛車のトラックの運転席にいる俺が確認した。
ライネが家出して数日が過ぎた、早く見つけてやりたい。
お腹空かせて泣いているんじゃないか?
もしかしたら、危険な目に合っているって事も……
「ダメだ! ダメだ! ダメ!」
思わず頭を振る俺。
悪い事ばかり頭に浮かんでイカン。
かなり精神的にまいってる。
早いとこライネを見つけなければ……
「カズヤ、みんな乗ってるから早く行くのじゃ」
後ろに乗るラージャが言ってきたけど、あれ?
「おい、お前のお気に入りの愛人カインとクアラは連れて行かないのか?」
「コレは、我等家族の問題なので二人は留守番なのじゃ」
「そっか、まあ乗車定員超えちゃうからソレで良い。
そもそもラージャが連れてきてても俺は連れて行く気などなかったけど」
「ちゃ、ちゃんと解ってるのじゃ」
ラージャが常識を持っていて良かった。
俺達は、遊びに行くんじゃないんだからな。
運転席の俺と助手席にボリス、後ろ右からミカエル、ラージャ、ペトリの順で座っている。
このトラックの乗車定員は6名だから、後はライネを乗せたら満席だ。
「フフフ、ライネには悪いけどドライブに行くみたいでワクワクするね」
助手席のボリスが笑顔で言いやがる。
全くもって困ったおっさんだ。
「遊びに行くんじゃないんだ、ライネを探しに行くんだぞ」
笑顔で言うボリスに注意しつつ、キーを回してエンジンをかけた。
車内にエンジンの音と振動が伝わる。
さあ、出発だ。
ブロロローー…
真っ白なトラックが車庫を抜ける。
「カズヤ、ライネを探すにしても何処に向かうんだ? 当てはあるのか?」
ミカエルが聞いてきた。
「ああ、まあな」
確証なんて無いけど。
行先は、昨日の夜ペトリと話して決めた。
そして、気持ち良かった。
ライネが居なくなったショックを慰めてくれたペトリ。
そして、ライネが家出した時に開いた家族会議で俺の好きなプレイだって受け入れてくれると言ってくれたペトリ。
傷心している俺は、ありがたくペトリの好意を受け取り、楽しませて… いや、心の傷を癒してもらいました。
うん。
やっぱ最低だな、俺。
こんな時でも、そういう事だけはしっかりやってんだから。
いや、反省は後だ!
ライネを探す事が先決だ! って事で俺達が向かうのは、
「王都だよ」
「えっ? 王都まで行くの?」
ボリスが驚いている。
フジノ街やその周辺をまわってライネを探すとでも思っていたのだろう。
「ここ数日、街や周辺を探索したが、手掛かりも情報も無し。
後、行きそうなとこって言ったら、俺達が出会った王都しかないだろ? ボリス」
ペトリとベッドで話をした結果だ。
確証など無いが、きっとそうだ。
ライネは、王都を目指しているに違いない。
それに、
「今日トラックに乗る時に気づいたのだが、車庫にあった俺のバイクが無くなっていた!
しかも、ガソリンの入った携行缶もね。
そこで、賢い俺はピンときたね、あっ、長距離移動だって」
有能な俺の名推理。
「毎日ライネを探すのにトラックを使ってたのに、今日になってバイクが無い事に気づいたのか? お前の目は節穴なのじゃ」
ラージャが余計な事に気づきやがる。
全く、これだがから素人は困る。
「必死だと視野が狭くなるもんなんだよ!」
逆切れして言い訳した。
ラージャに指摘されるまでもない、俺は間抜けなのだ。
我ながら情けないぜ。
ライネの事だ、王都を目指すにしても、慎重に行くハズだけど……
「ライネは失敗してる。
バイクの燃料満タンだったけど、携行缶にあるガソリンの給油だけで王都までは燃料がもたない。
精々300㎞も走れば良いとこだろう……」
不安。
オールストレーム領から遠くなるほど治安も良くないし、山や森では魔物もでる。
「クソッ!」
いや、バカな妄想はやめよう。
ライネはしっかり者だし、元は騎士団の人間じゃないか。
ある程度の危険なら何とか……
「不安だぜ!」
今は、一刻も早くライネを見つけないと!
ブロロローー……
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カズヤの予想通りライネはバイクで王都を目指していたのだが、とうとう燃料が底をついた……
「オールストレーム領をでて、だいぶ走ってこれたけど、携行缶のガソリンも使い切っちゃったし……
仕方ない、ここからは歩きだ」
ヘルメット脱ぎ捨てたライネは、バイクを街道から少し離れたトコに置いた。
◇◇◇
家出した直後は、車庫に隠れていたのだが、見つけてもらえなかったライネ。
真剣に自分を探していないと思い頭にきたライネは、カズヤのバイクを盗んで走り出したのだ。
だが、領地の街を抜け走っている内に不安な気持ちが頭を擡げはじめる。
オールストレーム領を出て、残りの燃料で帰れるだろう距離の限界が近づいた時に村を見つけた。
「進むか引き返すか…… 残り燃料からして、ここで決断しないと」
しかし、直ぐに結論を出せないライネ。
この村で待ってたらカズヤ達が自分を追って来るんじゃないか? そんな淡い期待をもって少しこの村に滞在を決めた。
だが、数日滞在してみたのに全然カズヤ達が来る気配など全然なかった。
「もう! 僕が心配じゃないの? カズヤさんったら!」
腹を立て、このまま進む決意をしたライネ。
頭にきて正常な判断が出来ていなかったのかもしれない。
いや、事実そうだろう。
そうなのだが、ライネは自分達の家に戻ろうにも何日も過ぎていたので、今更戻りづらいとも思っていた。
なにより、カズヤが考えを改めていないのに帰るのも癪だと思った。
「兎に角、王都に行けば昔の知り合いもいるし、生活も何とかなるだろう」
◇◇◇
安易に考えて、家に戻らず進む決断をしたライネだったが、とうとうバイクの燃料が切れた。
王都までの道のりはまだ遠い。
まだ王都に行くより自分の家の方が近いかもしれない。
だが、これまで進んできた距離を事を考えると、戻るという考えがライネには出来なかったのだ。
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ブロロローーー!!
「ちょっと、カズヤ! 飛ばしすぎなのじゃ!」
「大丈夫! ちゃんと安全運転してる!
兎に角みんな! ちゃんとシートベルトしててね!」
俺は、アクセルを踏み込みもう少しスピードを上げる!
フジノ街を出発してどれぐらいたっただろう?
俺達の家は、既に遥か彼方だ。
気持ちが焦る。
「カズヤ様、こんなスピードで向かってて、今はいいですけど、この先ライネを追い越したらどうするんです?」
ペトリのいう事は尤もだが今は急いでライネとの距離を詰めないと!
「ああ、ペトリそれなら大丈夫。
見てみろ、我の空間収納にライネのフォルダがあるじゃろ」
「ああ、これですか? あれ? 同じフォルダ名のコレはバツ印がついてますけど?」
「それは、ライネがロックをかけたフォルダで本人が近くにいないとバツが取れないのじゃ」
後ろで話をしているラージャとペトリの声が聞こえた。
「ラージャ、そんな機能があるなら早く言えよ!
もっと早くにライネがフジノ街を出た事を察知出来ただろう!」
「我は、四六時中空間収納を開いている訳じゃないのじゃ!」
「……いや、家出したって会議の時にでもそんな機能があれば見てみるだろ?」
「忘れてたのじゃ」
「うん、なら、仕方ないね…… とでもいうと思ったか?」
「誰しも間違いがあるのじゃ! 大体、カズヤが節操なく誰彼手をつけるのが悪いのじゃ!
我を責めるのは、お門違いなのじゃ!」
「二人とも、喧嘩するのはライネを見つけてからにしよっ! ね、カズ君、わかった?」
「……すまん、ボリス」
ボリスに言われて、少し冷静になれた。
「でも、俺は誰彼に手をつけてないからな。
遊びじゃなくて、本気だからミカエルも嫁にしたんだからな」
「流石、カズヤ様! 純愛の持ち主ですわ」
ペトリ……
「カズ君って、そういう誠実なとこがあるよね」
ボリス……
「カズヤ、愛されて、俺は嬉しいぞ」
ミカエル……
「フフッ、よせよ… 照れるじゃねぇか、ヘヘッ」
「なぁーにが、「ヘヘッ」 なのじゃ。
それに、コイツらも頭湧いてるのじゃ……」
「ん? どうした?」
「……呆れとるだけなのじゃ。
さっさとライネを迎えにいくのじゃ」
そりゃ、勿論だ! なぜ、呆れられるのかは解らないが、ライネ、早く会いたい!
男らしく誠実な俺は、ライネを追って王都を目指す。
そんな俺の姿に読者はホロリと涙を……
そんな事より、ライネ、待ってろよ! 今行くからね!
って事で、次回も、乞うご期待!




