第62話 最低な男
街を順調に発展させた、有能なる男、俺。
まあ、自分が快適に暮らせるようにと嫁に喜んでもらいたくて頑張っただけだ。
俺達がオールストレーム領にやってきて早いもので3年の月日が過ぎた。
フジノ街の発展は順調に進み、今やオールストレーム領の商業、金融、文化の中心地。
元々のオールストレーム領の中心地だった町は、工業、住宅、農業に特化した地区になっている。
オールストレーム領で生産された質の高い農作物や工業製品は、各地の商会などから多くの受注をいただくようになり、毎日フジノ物流センターからエルヴァスティ王国の各地へと出荷する荷物を積んだ多くの馬車が出発していた。
この地に住むみんなの頑張りで、オールストレーム領は莫大な利益を上げる土地になったのだ。
もう俺の力など別に誰も必要としていないだろう。
俺的には、嫁と仲良く平和に過ごせたらソレで良い。
フジノ街、カズヤ達の家――
「おいカズヤ、俺のアレ知らない?」
嫁の父親であるオスモが俺の部屋のドアを開けて聞いてきた。
「アレってなんですか? いや、その前に、部屋に入る時はノックしてくださいと言ったよね?」
出発の準備中の俺は、イラっとしながら注意する。
オスモがこの家や街が気に入ったらしくいつの間にかこの家に住むようになっていた。
まぁ、嫁さんの親だし、家族なので別に良いのだが……
「もう! いいよ、ライネかペトリに聞くから!」
オスモが何か腹を立てて俺の部屋のドアを閉めた。
「……なんなの?」
領主の座を息子のエルモに譲ってからは、オスモの劣化ぶりが顕著だ。
かくいう俺も、街の運営をエルモに任せて商会の仕事に専念するようになっている。
俺には、統治とかは無理だ。
慣れてる奴に任せるのが一番。
決して、面倒だからとか、女の子とイチャイチャする暇が取れないとか、そう言った訳では無い。
断じて無い。
俺的には、横からちょこちょこ口を出せる身分ってのが気軽でいいからだ。
ガチャッ
部屋のドアがまた開いた。
なんでノックしない?
「なぁ、カズヤ? 父さん知らない?」
「今度は、ミカエルか? お前等親子は、なぜ部屋に入る時にノックをしない!」
実は、オスモだけじゃない。
オールストレームの一家がこの家に住んでいる。
元の家は、旅行者やビジネスでオールストレーム領に訪れた者相手のホテルとして活用している。
「ご、ごめん」
俺に注意されてミカエルが驚いて謝ってきた。
不味い!
「い、いや。 大丈夫、うん、次から気を付けてねって話だから、驚かせちゃった?」
慌てて俺はミカエルに寄り添い慰める。
「僕の事、嫌いになってない?」
潤んだ瞳で聞いてくるミカエル。
可愛い。
嫁の兄だが、可愛いものは、可愛いのだ。
「嫌いになる訳ないだろう?」
ミカエルをドアに押し付けるように抱きしめ、可愛いお尻を触る。
「もう、今は、ダメだよ。 ライネに悪いし……」
「ここは、自由だ。 ミカエルもライネ達みたいに好きな女装しても良いんだよ?」
ミカエルの首筋にキスをする。
小柄なミカエル。
女の子みたい。
やっぱ、ライネの兄弟だな。
「ううん、カズヤと一緒の時の秘密だから、普段は下着だけ」
「みたい」
したくなってきた。
「だから、ダメだって…… 父さんに用事が……」
「そんなの、どうでも良くない?」
俺は、ミカエルの唇に、
ガチャガチャ
「えっ?」
ドアノブが回転してるし!
『カズヤさん? どうしたの? ドアが開かないんだけど?』
ライネだぁーー!
ドアの向こうに、ライネがいる!
どうする?
兎に角!
「ラ、ライネ、ちょっと待て! 今開けるから」
俺とミカエルが距離を取る!
ガチャ……
「すまん、ライネ。 俺がドアに寄りかかってた」
ミカエルがライネに言った。
俺は、椅子に座って口笛を……
「ぴゅー、ぴゅー」
ダメだ。
ライネの顔をみれん。
「なんだ、ミカエル兄さんが来てたのか。
もう! また、カズヤさんに文句言ってたの?」
ライネが呆れた様子でミカエルに言った。
みんなの前では、昔とかわんない感じで接し合ってるからな。
「文句なんか言うかよ。
俺は、カズヤに父さんを見なかったか聞きに来ただけだ。
エルモ兄さんが探してたからな」
「そうだったの? なら良いけど、ちゃんとカズヤさんと仲良くしてくれないと、他の嫁に文句言われるの僕なんだからね」
「別に仲が悪いわけじゃない」
ミカエルが俺に笑顔を……
ライネが居るのに!
「ん、ああ、まぁ… ね。
ミカエル、お父さんならさっき部屋に来て俺のアレ知らないかって聞いてきたからアレって何ですか? って言ったら腹立ててどっか行ったぞ」
汗をダラダラかく俺が答える。
早く、この場を離れてくれミカエル。
「そっか。 すまんな、カズヤ」
そう言ってミカエルが部屋を出て行った。
バタンッ
ミカエルの奴、去り際に小さく手を振っていたな……
さてと、
「ライネ、何か用か?」
ニコニコして聞いた。
「ううん。 でも、用事がないと来ちゃだめなの?」
「ハハハ、そんな事ないよ」
気まずい。
いや、誤解だ。
浮気してる訳じゃない。
俺とミカエルは、良き友人同士男の友情を育んでいるだけで…… 少しばかり、肉体的に親密になっているだけで、普通の事。
よくある事だよね。
うん、ないよ。
どうする? どう言い訳してこの場を切り抜けたら……
「どうしたのかな? さっきから何か挙動がおかしいですけど?」
「はっ! 何が?! 何処が? どうしてそうなる!」
逆切れで乗り切れ、俺!
「どうでも良いけどさ、なんで僕の目を見ようとしないの?」
ダメだぁ……
「そ、そんな事ないよ…… ハハハ」
俺は恐る恐るライネを見ると、ライネはスカートをたくし上げ素敵な足を、いや、パンツ丸出し?!
何を考えてい
「ねぇ、ミカエル兄さんと僕、どっちが良いかな?」
やっぱりなのか?
「ハ… ハハ…… ライネ、どうした? はしたないぞ」
や、やべぇ、やっぱ、バレてる? バレてる的な事なのか?
「カズヤさんは、浮気をしない人だと思っていた。
屋敷の女にも手を出してないみたいだし……」
「……まあ、ね。
ライネ、とりあえずスカートをおろさないか?」
単純に、女にモテないだけなのだが、好意的に考えてもらえているようなので、あえて否定はしない。
ライネがスカートをおろしてくれた。
「うん、そう言う意味じゃなくて」
ライネがスカートを脱いでしまった。
「僕じゃ満足させてあげれてないの?
ペトリだっているし、ラージャちゃんも!
だから、ミカエル兄さんはダメ」
ボリスが数に入れてもらえてないが、今は、指摘しない方が良いだろう。
「……ライネ、俺は十分幸せだし、体も心も満たされている。
逆に聞くが、ミカエルはなんでダメなんだ?」
「だって、ミカエル兄さんは、男だよ!」
「……」
「……」
「ライネ、お前もお」
「はいっ?! 何かぁ! 僕は、心は女性ですから!」
凄い剣幕で言われた。
「……解ってるよ。
でも、俺は、男とか女とか関係なしにライネだから好きになったんだぞ。
その事を後悔した事なんて一度もないし、お前から心が離れた事なんてないしね」
嘘偽りのない、本当の気持ちだ。
「フフ、我ながら最低だな。
それなら一人にしときなさいよって話だもん。
それなのに一人に決めれなくて俺は、ライネ、ペトリ、ボリス、ラージャ全員を嫁にしたんだから。
そして、全員を心から愛しているし失いたくない。
フフフ、4人も嫁がいるなんてな……
……だから、もう一人くらい増えても良くない?」
ニコッ
バチンッ!
俺は、ライネにビンタされ気を失った。
・
・
・
「カズヤ様! 起きて! カズヤ様!」
誰だよ? 人がせっかく寝てるのに…
「……う、うーーん …ペトリ?」
「ペトリ? じゃないよ! ライネが、ライネが!」
ペトリに起こされた俺は、ライネが家を出たと聞いた。
ライネが家出。
俺が推理すると、たぶん、俺とミカエルの関係のせいだろう。
いや、それ以外ないだろう…… 俺のせいだ。
どうしよう。
って事で、次回も、乞うご期待!




