第60話 会談
俺達の土地、オールストレーム領の領主ご一家が心配する魔物達との会談の席を設けた。
相手を知れば、恐れる事など無くなるだろう。
憎しみ合うよか、普通に接してる方が楽だと思うんだけどね。
カズヤ達の家、応接室――
ラージャとミカエルを連れて応接室に入ると、もうみんな着席していた。
長いテーブルに向かって右側に俺の嫁、ボリスとペトリ、自称四天王のオーガ代表の弥助に娘のアキナ、ゴブリン代表のゴーブ、オーク代表の金髪豚野郎。
それと、フジノ工務店社長で人間代表のマルコも並んで座っている。
左側に領主でライネの父のオスモ、母のヒルダ、長男のエルモ、一つ飛ばしてユリアナ、そしてライネが座っていた。
「そんじゃ、ミカエルはエルモとユリアナの間に座って」
「我の隣じゃないのか!」
ラージャが抗議してきたが、ミカエルがラージャから逃げるように指示した席に着席した。
「……ぐぬぬ。
おい! そこに座るから空けるのじゃ」
ラージャのわがままを聞いて席を移動してくれ、ラージャがミカエルの向かいに着席。
うん、凄いミカエルを見ている。
「そんじゃ、俺は、ここ」
って事で、一応家長だからな、上座に着席させてもらうよ。
「カズヤ様、コイツ等は何者ですか!」
俺が着席するなり聞いてきた。
「馬鹿野郎! コイツとか失礼だろ!
コレは、ここの領主だぞ!」
俺は、オスモを指差して弥助に注意した。
全く礼儀がなっていない。
「……俺は、コレか?」
オスモは、カズヤを見て呟く。
「領主…… というと、ライネ様の?」
「そうだ、アキナ。 コイツは、ライネのお父様だから失礼の無いようにな!」
お父様に悪い印象を持たれないように俺は注意する。
「……コイツって」
オスモは、カズヤを見て呟く。
「オスモ様、ライネ様には我々、そしてフジノ町の者達も良くしていただいております。
こんな素晴らしい方を育てられた方々はどんな人なのだろうかと思っておりました。
本日、今日ここに来られた、ライネ様のお父様、そしてお母様に、この金髪豚野郎深く敬意を申し上げます」
金髪豚野郎の癖に中々おべっかが上手いな。
オスモの表情が少し和らいだ気がする。
金髪豚野郎が欲しがっていた電動工具を今度買ってやろう。
「そうだぞ、金髪豚野郎、アレとお母様がいたからライネがいるんだ。
だから、そこのに敬意を持って接してやってくれよ、みんな!」
「おい、さっきから、アレとかコレとか、そこのとかって、お前が一番失礼なんじゃないか?
一番まともそうなそこのオークに金髪豚野郎って、お前最低だな」
オスモが言ってきたが、勘違いしている。
困ったものだ。
「あのな、金髪豚野郎って名前なんですよ、お父様」
俺は、にっこりして教えてあげた。
「あのなって! だから、それだよ、そういうの! なんか、ちょいちょい馬鹿にしてない? 俺の事」
お父様が、なんか怒ってる。
なんだろ?
やっぱ、魔物と同席してるのが気に喰わないのか?
ホントに、しょうがない奴だ。
とりあえず聞こえなかった事にしよう、無視だ。
「カズヤ、さっき通った街は凄かったな! いつの間に? もうずっと俺達驚きっぱなしだぞ」
「ありがとなエルモ! でもな、俺の力じゃない。 ここにいるみんな、そして町の住民みんなが、より良い生活を手にしたいって思いで頑張ってくれたおかげだよ」
俺は、エルモに褒められて嬉しかったが、ここまでの町に発展させてくれたのは、皆のおかげだから。
「あれだけの規模の街は、王都とまでいかなくても都会になるんじゃないか?」
「ハハハ、まあね。 王都の商会や有名レストランのチェーンも誘致したからな! ウハハハハ」
自慢。
「……それで、オールストレーム家に納めている税は少なくないか?」
「ハハハ…… さて、オールストレーム領の町に出没している魔物の話をしようか」
都合が悪い時は、話題を変えるに限る。
「おい、カズヤ、税の…」
エルモ、無視。
「カズヤ様、それは、私共の工務店の従業員の件ですか?」
「おう、マルコ。 そう、その件」
「あの、オスモ様、うちの従業員が何か町で悪さをしたのでしょうか?
優秀な現場監督をつけたつもりなのですが……」
マルコがオスモに聞いている。
で、どうなんだ?
「い、いや、今のところは、被害報告などは受けていないが?」
オスモがマルコに言った。
うん。
「だろ? 問題ないのに問題にするってのは、どうなのかね?
オスモ… いや、お父様。 どうです? 話をしてみたら、普通でしょ? 魔物とか人間とか関係なくないですか?」
オスモに聞いてみた。
「いや、しかし、町の治安も悪くなっているし……」
「それは、お前の統治能力が低いだけだろう!」
ボリスの反論か? お前な、お父様に失礼だろ!
「ボリス、無茶を言うな、お父様の能力の限界何だから、無理を言うんじゃない!」
俺は、お父様に助け船をだした。
このカズヤ、お父様を守りますよ!
「お前、俺を無能みたいに!」
なぜか、お父様が怒ってきた。
「お父様、感情的にならないで下さい。
俺は、魔物ともちゃんと話合えば分かり合えると思い、この場を設けたのですから!」
いくらお父様といえども俺は正しい事は正しい事だと言える者になりたい。
「まともな事を言ってるけど、お前が一番酷いぞ!」
「ふぉふぉふぉ、まあ、まあ、オスモとやら、その辺にしときなさい。
カズヤ様の恩情で今だ領主の地位に留め置かれておるのじゃからな」
長老ゴーブが言った。
うん、何を言い出すんだじじい?
「カズヤさん、どういう事ですの?」
ほらっ! お母さんが驚いてる。
「いや、ハハハ、ボケてるんですよ。 そっとしてあげてください」
要らぬ誤解を受けないように俺は笑って弁明を、
「カズヤ様は、この地にカズヤ王国、そう魔物と人が共に歩む国を建国なさるのですじゃ」
「……」
ゴーブ…… やめて。
「お前、エルヴァスティ王国から独立する気か?!」
「いや、そんな事しませんから、安心してくださいお父様!」
「あのゴブリンが言ったじゃん!
お前は、このオールストレーム領を潰す気か! やっぱ、魔物は危険じゃないか!」
オスモがかなり怒っている。
そりゃそうだろう、領地内に国家転覆をはかる輩がいると解ったらな。
「待ってくださいよ、お父さん!
弥助! そんな国など作らないと言っただろ?
そんなの俺は管理出来ないし、やりたくないって!
なんで、ゴーブがまたあんな事言うんだよ!」
「ハハハ、またまた」
笑顔で弥助が俺に……
そして、弥助の発言を受けてアキナ、金髪豚野郎、ゴーブが頷いている。
またまたじゃねぇよ。
ご冗談をって感じで言ってきた弥助をぶん殴りそうになったが、兎に角、オスモ達に俺が国家転覆を図っているなどという誤解を解かなければ!
もともとは、町にいる魔物は怖くないですよって話をしようとしただけなのに!
「弥助、アキナ、金髪豚野郎、ゴーブ。
カズヤ様の意思に反して何を言っているんですか? フジノ町から追い出しますよ」
ペトリの言葉に弥助達が驚いている。
「そうだな、カズヤに逆らってはいけないって弥助が決めたからな」
ボリスが続ける。
弥助達が顔を見合わせ、汗をダラダラとかいている。
焦っているようだ。
でも、危険思想を持ってるんじゃ仕方ない。
「一緒に町を作るのに頑張ってきた仲間だから残念だけど……」
「待ってください、カズヤ様!」
「……何か?」
「僕達がそんな事を考えるハズあるわけないじゃないですか?
ちょっとしたジョークですよ」
弥助が苦しい言い訳をしてきた。
「カズヤ様、弥助様達を許してやってください。
彼等は、カズヤ様に何か恩返しがしたいって思いから、あんな事を言っただけなんだと思いますから」
フジノ工務店のマルコか。
俺も、何時もの事なので気にしていないんだけど…… ほら。
オールストレーム家の皆さんは、不信感で一杯ですって顔をしている。
どうしたものか?
「お父さん、お母さん、エルモ、ミカエル、ユリアナちゃん。
心配しないで良いですからね。
俺が責任をもってそんな事させませんから!
はい。
って事で、この話は忘れましょう。
忘れて、会食と洒落こもうじゃありませんか!」
飯食って誤魔化しちまえ!
「フフフ、お父さん、お母さん。 この家のご飯はちょっとそこらとは違うんだから!」
ライネが嬉しそうに言って微笑ましいね。
「ライネ、飯なんかどうでも良い! 俺は、この男も魔物も信用が置けないと確信した!」
オスモの頑固者め。
「もう、意固地にならなくても良くない? あなた。
そんな事よりライネ、そこらと違うですって? まあ、どんなものがいただけるのかしら? 楽しみだわ」
お母様は食事に興味があるようだ。
オスモが「え? 何を言い出すの?」みたいな顔をしているが、気にすんな。
人は美味しいごはんを食べる事が一番の幸せなのだから。
「ライネお姉様、私楽しみ!」
ユリアナちゃん可愛いな。
アイスとかも出るからお楽しみにね。
「エルモ、後でアレあげるからね」
「え…… もしかして、DVDプレーヤーとか言う奴か?!」
「ちゃんと、ポータブルバッテリーとソーラーパネルも付けるから」
「お父さん、カズヤを信用しましょう!」
エルモが父親を説得してくれた。
流石は俺の親友。
エロDVDを追加で付けてあげよう。
「カズヤは、俺を助けてくれたし、信用がおけるよ」
ミカエル。
……そんなに、ラージャが嫌だったのか?
「あれぇ、何コレ? 俺が悪い的な感じなの?」
「お父さん、僕は気にしてません。
僕は、お父さんの味方ですよ」
にっこり笑って慰めてあげたのに、凄く睨まれた。
「おっさん、みんな大人しくちゃんと席について会話しているのじゃ」
「ん? どうしたラージャ? コイツに話があるのか?」
オスモを指差して聞いた。
「お前、そして、そこのガキは本当に失礼だな!」
あわわ、お父様がイラついてらっしゃる。
「お前、そんな事ないだろ? 気にしないでくださいよ」
そんなお父様をなだめる俺。
「弥助達が、そのおっさんが思うような野蛮な魔物ならそもそも座って普通に会話など出来ぬのじゃ。
だから既に、この町の魔物が危険がない事を証明出来ているのじゃ」
「……確かに。
魔物達もカズヤに懐いているようだしな」
おっさ、いや、オスモ、いや、お父様がラージャの言葉に少し感心しているようだ。
「でしょ? だから言ったろ、心配いらないって。
それにお前、魔物達は人間より力が強いからな、かなり役に立ってくれる。
しかも、この町の魔物は結構知能が高い。
学校もあるからな、識字率なんてほぼ100%だぜ。
お前んトコは?
だから、俺達を心配するよか利用した方が良いんじゃないの?
そう、僕は思うのですよ、お父様」
「……」
オスモが何やら考えている。
一歩前進だ。
ここに来るまでは、考える事すら拒否していたからな。
偉いぞ、オスモ。
ちゃんと成長しているじゃないか。
自宅でリラックスしているのか、タメ口、上から目線とやりたい放題のカズヤであった。
自分の意見を相手に押し付ける気など無いが、オスモが町の魔物を迫害しようって考えに変化が出てくれたら嬉しいな。
しっかし、相手を敬って丁寧に話するって疲れるぜ。
ん? どこが丁寧だった? 頭おかしい?
ハハ、またまた。
って事で、次回も、乞うご期待!




