第35話 出発、森の中!
オーガの里を後にした俺達。
俺に皆はついてくるのか?
無理せず、里に残って、良いんだよ!
森の中――
オーガの里を出発した。
結局、弥助を含め里の住民総勢33名が俺と共に新天地を目指す事になり、俺達の馬車の後ろをぞろぞろと着いてきている。
構成としては、馬車に乗る俺達が5名、オーガが成人男性18名、成人女性15名。
子供や老人がいない。
だが、長距離の移動になるので、それはそれで良かったのかもしれない。
まあ、オーガの夫婦もいるから、いずれ子供が増えそうだけど。
「……良かったのだろうか?」
いや、俺が行こうって言ったのに、それはあまりにも無責任だよな。
「よしっ! 悩むな、俺!」
「突然、大きい声を出して、なんなのじゃ、お前は?」
「すまん、ラージャ気にしないでくれ」
情緒不安定だと思われたかしら?
なんにせよ、オーガ達に俺の言う事を聞いて着いてきて良かったと思わせる!
ソレが、俺の責任。
この団体の代表としての責任だ!
それと――
俺は、馬車の後ろをぞろぞろ歩くオーガ達を眺め、そしてライネ達を見た。
ラージャがハーレムとかバカな事言わず、ちゃんと一人を愛せと言った言葉が脳裏に浮かぶ。
可愛い系のライネか、綺麗系のペトリか……
「選べないよ……」
だけど、選ばなかった方の今後を考えても答えは早く出すべきだ。
一体どうしたら良いんだ。
モテない人生を歩んできた俺が選べるのか?
こんな贅沢な悩みをする日が来るなど夢にも思わなかったことだ。
まぁ、相手が二人とも男だが…… いや、そんな事は些細な問題。
なんにせよ、先ずは俺を含め総勢38名、無事にライネの実家のあオールストレーム領へと到着するミッションを成功させないと。
「ねぇ、ペトリ、出発してからカズヤさんの様子がおかしいよね?」
「これからの事を考えているんだよ。
僕らは、僕らでカズヤ様を支えて行こうな」
「そうだね。
よーーし、頑張るぞ!」
俺の向かいに座るライネが頑張るって、やる気に満ちている。
ペトリもか?
「ライネもペトリもやる気満々だな! 絶対に、幸せになろうな!」
俺は、二人に言った。
・
・
・
数日が過ぎたが、オールストレーム領へは、まだもう少しかかるみたい。
流石に人数が増えた事で進みが遅いとライネが言ってた。
野宿を繰り返し、進む俺達。
食料は、オーガ達が途中狩りをしてくれるので問題ない。
オーガの取ってきた魔物は、ボリスとペトリとライネが解体してくれ、俺は調理を担当。
それぞれが協力し合い、目的地を目指す。
足りない物、野菜とか飲料水、酒とかは、ラージャの空間収納と俺のネット通販で購入出来るし、水辺がないと水浴び出来ない事を除けば、特に不便な事など無い。
空間収納といえば、あの中に食品を入れても腐らない。
余った食材とか入れとけるので、とても便利。
空間収納の中は、時間が停止しているのかな。
理屈は知らんが便利なので、悩まない。
パチパチ……
食事を終え、焚火を囲む俺達。
もう寝ちゃってるオーガもちらほら。
俺達が寝てる間、火の番と見張りをしてくれてるので交代で寝ているのだろう。
しかし、俺がオーガ達を養わなきゃなんないのかと最初は悲観してたが、すっごい役に立つじゃないか。
「風呂に入りたい」
水辺があった時に水浴びしてるが、暖かいお湯に浸かりたい。
「そうじゃな、風呂に浸かりたいのじゃ」
「だよな、ラージャ」
「風呂?」
弥助が聞いてきた。
オーガの集落にも風呂が無かったし、風呂に入る文化が無いのだろう。
「あったかい水に浸かるんだよ」
「……それって、どうなんですか?」
風呂を知らない弥助は、あまりイメージが出来ないようだ。
「人間は、面倒な事をするんですね」
アキナもか。
水浴びも良いけど、風呂の良さを知ってもらいたい。
「アキナ、お風呂に入ったら疲れが取れるし、リラックスできるんだよ」
ライネがアキナに説明してあげてる。
優しいな、ライネは。
「カズヤ様と一緒にお風呂に入りたいな」
「儂も!
王都では、公衆浴場にみんなで行ったしね」
ペトリもボリスもお風呂が恋しそうだ。
「よーーし! 俺達の新天地に風呂を造ろう!」
新たな目標が出来た。
ライネ達も喜んでるし、オーガ達にも風呂と言うものを体験させてやりたい。
早くオールストレーム領に到着したいぜ!
「弥助様ーー!」
ん? 鬼助が向こうから走ってきた。
そういや、食事の時に鬼太郎と一緒に居なかったけど、どこに行ってたんだ?
あの二人、たまにいなくなるよな?
集団行動が出来ないのは困りもんですよ、全く。
「どうした? 何かあったのか?」
弥助が立ち上がり、息を切らしている鬼助へ声をかけた。
「弥助様! 成功です!」
「……なに?」
「いま、鬼太郎が連れてきますので、まずは報告をと急ぎ参りました!」
「鬼助! それでこそ、男よ!」
「おい、二人とも、何の話だ? 連れてくるって何が?」
「鬼助、鬼太郎を迎えに行くぞ!」
「弥助、無視するな!」
「弥助様、急ぎましょう!」
弥助と鬼助が行ってしまった。
「プッ、カズヤ、主として信頼されとるの?」
このっ、バカにしやがって!
「えい」
ラージャの頬を抓る。
「い、痛いのじゃ」
「あ、あの、父が申し訳ございません。
ラージャ様を許してあげて下さい」
アキナが言うので、抓るのをやめてやった。
「カズヤ様ーー!」
弥助の声が聞こえた。
振り向くと、弥助、鬼助、鬼太郎に、沢山のゴブリン。
どういう事?
「カズ君? あれゴブリンよね?」
「やっぱり、あれゴブリンだよな」
「何か、凄い数がいるようですが?」
「ペトリ、凄い数だな、50人くらいいるんじゃないか?」
「弥助の奴、凄い笑顔なのじゃ」
「嫌な予感しかしてないぞ、俺は」
弥助が揉み手&笑顔で歩いてくる。
「カズヤ様! 配下が増えましたぞ!」
弥助が張り切って教えてくれた。
「おらっ! お前等、カズヤ様の御前である、頭が高いぞ!」
鬼太郎がビクビクしているゴブリン達を怒鳴りつけた。
「やめて! 見てて可哀想!」
「ハハハ、またまた、カズヤ様」
「なにが、またまただ! 弥助、どう見ても、強要してるだろ、アレ!」
「カズヤ様の配下を増やすべく別行動していまして、ゴブリンの集落を襲げ… 訪問したところ、快く配下になりたいと言われました!」
鬼太郎が、笑顔で報告してくれるが、
「いや、嘘だろ? お通夜状態じゃないか後ろの」
ゴブリン達を指差して俺は、強い口調で
「さぁ! お前、カズヤ様にちゃんと挨拶をしろ!」
「俺を、無視するな!」
一人のゴブリンが前に出た。
小刻みに震えているようだ。 可哀想に。
「カ、カズヤ様、我ら、ゴブリン総勢65名の命をお預けいたしますから、何卒!」
土下座された。
何をしてるの?
「ハ、ハハ、ハハハ、あれ? まいったな…… やめて!」
変な汗をかいている俺は、余りの事態にぶっ倒れそうだ。
後ろのオーガの女達の視線が痛い。
俺がやらせているとでも思っているのだろうか?
ヒソヒソと俺を非難する声が聞こえてくる。
「弥助、後で話をしような」
青筋をたてつつ笑顔で俺は、弥助に言った。
このバカ、ニコニコしてやがる。
「鬼助、鬼太郎、お前らな、俺がいつゴブリンをイジメて無理矢理配下にしたいなんて言ったよ?
直ぐに解散して、ゴブリン達を家に帰してやれ!」
頭にきた俺が怒鳴りつけると、なぜか、ゴブリン達がざわつきだす?
「見捨てないでください!」
「は? え?」
先程、土下座してきたゴブリンが俺にすがってきた。
「いや、見捨てるもなにも、あんたら無理矢理ここに連れてこられたんでしょ?」
「ち、違います! 鬼助様と鬼太郎様に我々は救われたのです!」
どういう事だ?
「話が見えないんですけど?」
「カズヤ様、俺と鬼太郎でゴブリンの集落を制圧しようと襲撃したんですがね」
あ、襲撃って言ってるよ、コイツ
横から話し出した鬼助。
「そん時に、先客がいまして、いや、オークのチンピラ共がゴブリンの集落で暴れてたんで、へへへ、ちょいと」
「鬼助様がオークを倒して俺達を救ってくれたんだ!」
控えているゴブリンから声が上がる。
「そしたら、こいつ等の周辺のゴブリン達も結構オークにやられてるって言うから、かたっぱしからオークをボコボコにしてやったんですよ」
鬼助が得意げにしている。
暴力はどうかと思うが、ゴブリンを助けたって事か……
「……そしたら、オークキングが配下のオークを引き連れ出張ってきやがってゴブリンの集落が幾つか壊滅しちゃったんです」
てへっ、って感じで鬼太郎が言った。
「壊滅……」
声を失った。
「でも、カズヤ様なら何とかしてくれるって! だから、集落を捨てて、ここに来たんです!」
ゴブリン……
「鬼助、鬼太郎…… お前等でどうしようもなくなって俺に面倒事を押し付けようと」
「心配するな! カズヤ様は、我らの弥助様を倒す程の男! オークキングなど、敵ではないわ!」
鬼助、俺を無視して……
「カズヤ様がオークキング及び、オークの群れなんぞ、倒す! 安心しろ!
だが、貴様らは、カズヤ様に永遠の忠誠を誓うのだ!」
「おい、弥助、何を言い出す?」
「勿論です! 我ら一同、集落を捨てた時より、そのつもりでございます!」
「おい、ゴブリン! お前も何を」
「うむ! 誠心誠意、カズヤ様に尽くすのだ!」
「いや、だから、弥助! 尽くすのだ! じゃないよ、何言ってるの、お前?
どうでもいいが、俺を無視して話を進めるんじゃない!」
ダメだ。
コイツ等、人の話を聞かない。
「カズヤさん、どうするの?」
「いや、ライネ。 俺が聞きたいよ」
「おい、鬼助! オークの数は?」
ボリス?
「ボリス様、俺達を追っていたのは、100はいたと思うんですが…… 正確な数はちょっと」
「100か…… ん? おい、今、追っていたと聞こえた気がするが?」
「ハイ! 追われてます、多分もう直ぐ、こっちに来るでしょう」
鬼太郎が教えてくれた。
「なんでそうなるの? カズヤ様、ここに居たらヤバいんじゃない?!」
うん。 ペトリのいう事は、ごもっとも!
「撤収! 逃げるぞ!」
「来ました! オークの群れです!」
ゴブリンが叫んだ。
「言ったそばからかよ!」
俺は、泣きそうだぞ!
フフフ、ハハハ、アーハハハ!
どうしてこうなった?
俺にどうしろと?
って事で、次回も、乞うご期待!




