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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.3 異世界 恋人獲得

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第18話 ダブルデート

異世界にやってきてしばらくたったし、この世界にも馴染んできたと思う。

街行く人々からの視線も感じるが、最初の頃に比べりゃ屁みたいなもんだ。

何時になったら、モテるんだろうか、俺。

 ラージャとライネのデートの日がやってきた。

 昨日の夜、明日のデートでライネにプレゼントを渡したいとラージャが俺に土下座してきたのには、驚いたが……


「ホントにそれで良いのか?」

 ラージャが手にしている一升瓶を指さして聞いた。

「だって、ライネは、お酒を飲むし、我も好きなのじゃ

 絶対、喜ばれるのじゃ!」

 ラージャが嬉しそうにしている。

 だが、初デートで一升瓶の日本酒を渡すってのは、どうなんだ?

 普通なのだろうか?

 女性と付き合った事がない俺が解る訳も無い。

 ラージャも一応、女性だし、普通の事なのだろう。

 

 日本酒の代金1,760円。

 女性の気持ちを知る事が出来た勉強の対価と思えば…… 日本円が27,490円から25,730円に減ってしまったが仕方あるまい。


「気に入ってもらえるといいな」

「要らないと言われたら、我が一人で飲むから無駄にしないのじゃ」

「……そっか」

 ラージャの奴、ただ単に自分が飲みたかっただけじゃないのだろうか?

 貴重な日本円を消費して日本酒を買ったのを後悔しつつ俺とラージャは、待ち合わせの王都の入口を目指して歩いた。


 入口の門に近づくほど、人の往来が増えてきた。

 やはり、王都だけあって入る人、出ていく人が多いのだろう。

 

「おっ、いたいた」

 早めに到着しそうと思ってたら、門の前でライネが待っているのが見えた。

 待たせちゃったかな?

「ラージャ、ライネがもう来てたな、急ごう」

「うむ、急ぐのじゃ!」


 ライネへと駆けていく。

 私服姿か……

 相変わらず可愛いな、ホントに男かよ?


 ん?


 なぜ、ボリス団長がここに?


 ライネの隣にボリス団長が帯剣して立っていた。

 嫌な予感しかしない。


「カズく…… カズヤ殿! 今日は宜しく!」

 ボリス団長が笑顔で俺に言ってきた。

「……ボリス団長も来るんですか?」

 俺は、目線をずらして聞いた。

「ああ、ライネが誘ってくれたからな!

 今日は、楽しもうではないか!」


 ライネを見ると、顔を背けやがった。


「ラ、ライネ、これプレゼントなのじゃ」

 ラージャが一升瓶をライネに差し出した。

「これは?」

 受け取ったライネが不思議そうに瓶を眺めている。

「酒! 日本酒なのじゃ! 後で、一緒に飲むのじゃ!」

「お酒か、ラージャちゃん、ありがとう」

 ライネがラージャの頭に手をやって、よしよしと撫でて、ラージャも嬉しそうに笑っていた。

 微笑ましい光景だが、一升瓶を持って行動する事になったライネが気の毒だ。


「フフフ、カズヤ殿、今日は、二人の邪魔をしないようにしましょう」

 ボリス団長が小声で言ってきた。

「そうですね」

 俺も笑顔で返した。

 怖い顔をしているが、部下想いの優しい人なのだろう。

 そして、肩に置いてる手をどかしてもらって良いですか?


「ライネ、今日はどこに行くのじゃ? 買い物か? なのじゃ」

「ボリス団長が今日のプランを任せろっていってたけど……

 団長ー! 今日は、どこに行くんですか?」


 ライネがボリス団長に聞いてる。

 なんだ、人任せか?


「みんな、今日は、儂に任せておけ!

 早速行こうか!」

「え? ちょっと!」

 ボリス団長が後ろから俺の肩に手を置いて押してきた!

 そして、俺はそのまま街の外へと出されたのだった。



「カズヤさん!

 ラージャちゃん、行こう!」

 ライネがラージャに手を差し出した。

 頬を赤らめラージャがそっとその手に触れる。


ガッ!


「急ごう!」

 ライネがラージャの手を掴む。


(せっ、積極的なのじゃ! 勝負下着で来て正解なのじゃ!)


 ラージャは、瞳を閉じ口づけをしようとした瞬間、

「へっ!?」

 ライネがラージャの手を引っ張って走り出した!


「うおおおお! 待てぇえええ、ボリスゥゥ!」

「ちょ、足、足、足が追い付かないのじゃ!」

 ラージャを引っ張り、急ぎカズヤの後を追うライネだった。

・

・

・



 街の外に出たとたん、俺はボリス団長の小脇に抱えられ森の中へと連れ込まれた。

 貞操の危機を感じ青ざめる俺だったが、後ろから、ラージャと一升瓶を持ったライネが鬼の形相で追いかけてくるのが見えた。

 こんなの俺の知ってるデートと違う。


「ライネの野郎! ラージャと楽しめば良いのに!( 儂はカズ君と楽しむから )」

「え?」

 必死に走るボリス団長の言葉を聞いて、俺は、自分を恥じた。

 団長がライネから逃げるように離れたのは、二人きりにしてやろうって、親切心からの行動だったのだ。

 

「……団長!

 降ろしてください! 俺も、走ります!」


ピタッ!


 団長が急に停まって、俺をそっと降ろしてくれた。

「カ、カズヤ殿… ?」

「うん。

 さあ、団長! 追いつかれます! 急ぎますよ!

 ラージャ! 俺達を気にしないで、今日は、楽しむんだぜ!」

 俺は、自分の意志で走り出した。


「カ、カズ君って、男らしいのね」

 キュンとしたボリス団長。

 そして、この時のボリス団長にはカズヤの言葉が、

『ああ!

 愛しのボリス! 邪魔の入らないところに急ごう!

 ラージャ! ついてくるな! 俺達は楽しむから!』

 と、聞こえていた。

 いや、超訳されて理解したのだ!


「カ、カズ君、待って、待ってよーー!」

 恋する乙女、いや、おっさんがカズヤの後を追った。

 ライネ達を大きく引き離して行った……

・

・

・



「クソっ! どこに行った!

 見失ったぁーーー!」

 ハァハァ息を切らして、森の中で大の字で寝るライネ。

 散々走り回って、力尽きたのだ。

 一方、ラージャは…… 元気一杯。

 それもそのハズ、途中からライネにしがみついて走っていないのだから。


「まぁ、まぁ、落ち着くのじゃ、ほら、これでも飲んで」

 ラージャが湯飲みに入れた飲み物をライネに渡す。

「あ、ありがとう」

 疲れて喉が渇いていたライネは、湯飲みを手にして呷った。


ブーー!!


 液体を飲んだライネが、ゲホゲホと咽る。

「これって、お酒じゃないか?!」

「プレゼントの日本酒なのじゃ

 ほれ、急いで飲むから悪いのじゃ、ゆっくり飲むのじゃ」

 ラージャは、こぼれた分を注ぎ足してニッコリしている。


「でも、急がないと、カズヤさんが」

 そう言いながらも、良い香りのする日本酒に口をつけるライネ。

 ラージャが優しい笑みで見ている。


「あれ、初めて飲む酒だけど、美味しい」

(強さの割に当たりが柔らかで、グイグイいけそうだ。

 そして、かすかに果実のような爽やかな風味。

 透明で透き通る酒)

「これが、日本酒……」

「ライネ、気に入ってくれた? のじゃ」

 酒の入ったおちょこを手にラージャが上目づかいで可愛らしく聞いた。


 ラージャの魅惑の攻撃!


「うん、美味しい酒だね!」


 だが、ライネには効いていないようだ。


「なんだか、酔っちゃったみたい…… なのじゃ」


 ラージャが顔を赤らめ、瞳を潤ませた。

 

「へぇ、山猫亭でガンガン飲んでて平気なのにね」


 ライネが冷静に言った。

 ラージャは、15のダメージ。


「ぅう~~ん、なんだか熱いわ……」

 

 ラージャが胸元をはだけさせ服を体をしならせた。

 だが、ライネには効いていないようだ。


「そうだね、走って来たから熱いね」


 ライネがボタンを2、3外して服を持つとパタパタと動かし体に空気を送り込んでいる。

 胸元がセクシーだ。

 ラージャの息が荒くなった。


「も、も、もう我慢出来ないのじゃ」


 ラージャの目が光った。


「ラ、ラージャちゃん?」


 ライネがたじろいだ。

 そして、ラージャが飛びついた!

 ライネが押し倒された。


「や、やめて、どうしちゃったの?!」

「大丈夫、大丈夫だから、心配いらないのじゃ!」

「服を脱がさないで!」

「すぐに、終わるのじゃ!」

「僕、その、したことないんだよ~~」

「お姉さんに任せるのじゃ! 何も怖くないのじゃ!」


 焦りながら服を脱ぐラージャ。

 だが、焦りの為、手が引っ掛かり中々脱げない!

 その隙をついて、半裸のライネが走り出す!


「あっ、ちょっ! 待つのじゃ!」

 すっ転んだラージャが言ったが、古今東西、待てと言われて待つものは居ない。

 当然、ライネは、力の限り走り去ったのだった!



 一方、その頃、カズヤ達は――


「ちょっ、な、何を」

 俺が驚きたじろいでいる。


「カズ君、やっと二人きりになれたね」

 全裸のボリス団長が潤んだ瞳で、俺を見ているからだ。


「と、とりあえず服! 服を着ましょう、ねっ! ねっ!」

 涙目訴えた。

 怪しいとは思っていたが、完全にライネ達を巻いて二人きりになると同時に……


「カズ君…… 私の事が、嫌いなの……」

 泣きそうな顔で言われた俺も泣きそうだ。


「あの、嫌い… とかでは無いんですよね、ちょっと、困るというか、戸惑ってるっていうか。

 いや、あの、好意を持ってもらったのは、嬉しいんです。 嬉しいんですが……」

(なんだよ、異世界に来てモテモテになると思ったのに、なんでおっさんに……)


「……嬉しい。

 私も、カズ君が、大好きです!

 好き同士…… やったね、カズ君」

 ボリス団長、顎のあたりに両拳を持ってきて嬉しそうですが、下が丸出しです。

 って、違う!

「あっ! 待って!

 そうじゃなくてですね、うん。

 ボリス団長は俺とラージャを街に案内してくれたり、凄く優しくしてくれたり、騎士団員の人からの信頼も凄くて、尊敬できる大人だなって思う素敵な人だと思います」

「うん! ありがと、カズ君!」

「ただ、尊敬する好きな人では、あるんですが、それは、恋愛感情的な好きじゃなくて……」

(ボリス団長が良い人なだけに、傷つけたくない、どう言えば……)


「カズ君!」

「は、はい!」

 突然大きな声を出された。

 怖ッ! 情緒不安定なのか?!


「もういい! もういいんだ…… それ以上は… ハハ、だよな。

 いや、そうだろう!

 解っていた。

 そりゃそうだよ、知り合ったばかりの、しかも、50になるおっさんに突然好きって言われても困るよな。

 解ってたのに…… 解っていたのに! うっうぅぅ」

 ……全くもって、その通りなのだが、目の前のボリス団長がボロボロと涙を流し、それから座り込んで、なんだか、うん。


「なっ泣かないで……

 ほ、ほらぁ、ボリス団長、服。

 服着てくださいよ。

 俺は、別に、嫌いにならないですよ。

 さっきも言いましたが、好意をもってますから! 一緒に、帰りましょうよ」

 俺は、落ちているボリス団長の服を拾い上げ傍に行くと、出来るだけ明るい感じで言った。


「……カズ君」

「へ? ちょっ!?」

 ボリス団長が抱きついてきた!

 ん?

「……」

 俺のお腹に頭をつけて、ボリス団長が泣いていた。


「ボリス団長……」

 団長の頭を撫でた。

 なんだか、可哀想に……

 って、え?!

 おっさん、コレは、おっさんだから!

 アレ?

 なんだ、この状態。

 裸のおっさんが俺に抱きついて泣いてるって?

 悪いけど、ないわーー。


「お、落ち着いた?」

 団長が、コクンと頷いて抱きついていた手を離してくれたので、ホッとした。

 こんなに好きって思ってもらえるなんて、幸せな事なのかな。


「それじゃぁ、帰りましょうか?」

 

「……うん」


 大丈夫そうだ。

 俺は、ボリス団長に背を向け、歩き出す。


「え?」

 俺は、後ろからボリス団長に抱きしめられた。

「あ、あの?」

「最後に、少しだけ……」

 ?


 ……そっか。

 最後に少しだけ抱きしめさせて欲しいんですね。

 俺は、貴方を受け入れる事は出来ないけど、少しの間なら……


「……はい」

 俺は、静かに言った。


 うん。


 少しくらいなら。


 思い出にしたいのだろう。


 これで、諦めてくれたらいいんだ。


 もの解りの良い人で良かった。


 なんで、俺なんかを好きになったんだろう、この人?


 傷つけちゃったかな?




 うん。


 長くない?


「あ、あの、もうそろそろ」

 なんか、俺の服の中に手を入れてるし。

 違うくないか、コレ?

「も、もう少しだけ、ハァハァ」

 呼吸も荒くなってきてるじゃないか!

「ちょ、ちょっと、もう」

 

バッ!


 上着を取られた!

 驚いて振り返ると、ボリス団長も驚いていた。


「すまん! 違うんだ!

 これは、その……」

 いや、違わないでしょ、この人、俺を――


「うぉおおおおおおおお!!」

 俺は、走り出した!

 凄く!

 一刻も早くこの場を離れるべきなのだ!



「カズくーーん」

 小さくボリス団長の声が聞こえた!


 追ってきてるし!



 俺は、走った。

 人生でこんなに一生懸命走った事があっただろうか?


「誰かぁぁああ」


 ん?

 前の方から叫び声が聞こえてきた!

 誰だ?

 誰でもいい!


「助けて下さああああい!」

 俺も叫んで、声のした方へと急ぐ。

 段々声が近づいてき


「って、ライネ!」

「カズヤさん!」


 俺の目の前には、上半身裸のライネがいた。

 なんで、裸?


「カズヤさん、なんでそんな恰好をしてるんですか?!」

「いや、お前もだろ!」



「待つのじゃぁぁぁ~~」

「ヒィッ!」

 ライネの来た方角から声?

 ライネが酷く怯えている。


「カズくぅ~~ん」

 ボリス団長の声が!

 もう、近くまで来やがった!


「ライネ!」

「あっ!」

 俺は、ライネの手を取り走り出した!

「こんな場所にいたら、危険だ逃げるぞ!」

「……うん!」

 ん? 何だ、コイツ。

 こんな危機的状況なのに嬉しそうだな?

 いや、ライネを見てる場合じゃねぇ!

「気合い入れて走れぇぇえええ!」


 俺達は、森の中を疾走した。

危なかったが、何とか助かった。

合流したライネも苦労したんだろう。

半裸だし。

兎に角、逃走中!

って事で、次回も、乞うご期待!

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