第19話 カズヤとライネ その1
ひとまずは、貞操の危機って奴が去った。
全くなんだったんだ?
おっさんが男だからとかじゃなくてだな、俺にも好みがあるって話だ。
いや、男だと問題か?
問題なのか?
ライネを見ていると、どうなのか良く解らなくなってしまう。
静かな森を走る二つの影。
「いないっ!」
「いないのじゃ!」
二つの影が出会い同時に言った!
当然、ラージャとボリスである。
「あれ、ラージャ? ライネは?」
「逃げら って、裸!」
「なんだ、一緒じゃないのか? ちゃんと足止めしないとダメじゃないか!」
全裸姿に驚くラージャの事を無視してボリスは言った。
「ええ~~」
(裸のおっさんに何故か怒られたのじゃ!)
「そういうお前は、裸でどうした? カズヤはいないのか? なのじゃ」
「既成事実を作って結婚しようと思ったら逃げられた」
「お、お前…… 頭おかしいのじゃ!」
「そ、そういうお前は、どうなんだ? なぜ、ライネと一緒にいない?」
「可愛かったから、ちょっと押し倒しただけなのじゃ!」
「似たような事してんじゃないか!」
「しかし、一体どこに……」
ボリス団長が当たりを見渡す。
「いや、その前に、服を着た方が…」
「もしや! ライネの泥棒猫! カズ君を!」
「いや、無視するな、なのじゃ」
「カズ君が危ない!」
(このおっさん、人の話を聞かないのじゃ!)
「おい、ラージャ! お前は、ライネを狙ってるんだよな!」
「ま、まあ、そうなのじゃ」
頬を染めてラージャが答えた。
ニヤリと笑うボリス団長。
「そうか…… 儂は、カズ君が好き! お前は、ライネが好き! 解るな」
そっと手を差し出すボリス団長。
「互いの利益のために、なのじゃ」
ニヤリと笑ってラージャがその手を握った。
「その前にボリス、服を」
「行くぞ! ラージャ!」
ボリス団長が走っていった。
「……ワザと裸なの? なのじゃ」
・
・
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「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「頑張れ、ライネ!」
「カ、カズヤさん、ちょ、ちょっと休憩を……」
(ライネは、限界か……)
「ご、ごめん。 休憩しようか」
立ち止まった俺は、辺りを見渡したが人影は無いようだ。
結構走ったからな……
大木の根本に腰を下ろして、少し休憩する事にした。
「大丈夫か?」
「お、お酒飲んで走ったから」
(ラージャの奴、ライネに酒飲ませて……)
「気持ち悪い? 吐く?」
ライネの両肩を掴んで聞いた。
「大丈夫です、少し休憩すれば」
ライネは呼吸を落ち着かせようとしているみたいだ。
(やっぱり、男か……
男装した女の子じゃないか? って思いがあったのだが、男で確定か)
俺は、ライネの平らな胸を見て男と確信したのだ。
少し残念ではあるが、これで想いが吹っ切れるってもんですよ。
「カ、カズヤさん…… ちょっと、恥ずかしい」
「えっ? あっ、ごめん」
俺は、両肩を掴んでいた手を慌てて離した。
胸が出てるのにゴメン……
ん?
「いや、男同士だろう!」
なんで、俺がドキドキして謝ってんだよ。
「……ありがとう」
ライネに礼を言われた?
「なにが?」
「僕は、……最初は、やっぱり、その、好きな人としたかったから……」
「あ、そ、そう」
(だから、なんでドキドキしてるんだ、俺!)
「ラージャが無茶苦茶やってごめんな。
でも、ラージャもお前が好きだからであって、その、なんだ、悪気があった訳じゃないと思うから、その、ごめんなさい」
仲間がしでかした謝罪をどうやったらいいか解らないけど、謝った。
「ん゛!」
まただ!
ライネが俺にキスをしてきた。
「ほら、またぁ!」
ライネを引き剥がして言った。
「僕は、カズヤさんの事が好きだよ」
「そんな、まっすぐな目でみないで欲しい……」
どうしよう。
困った。
自慢じゃ無いが、生まれてから告白された事など無いし、彼女がいた事すらない男だ俺は。
「そ、そんな簡単にはダメだ!
ほらっ! 知り合って間もないし、もし、俺がスッゲー悪い奴だったらどうすんだよ?!」
「それでも、いい」
うん。
「それなら…… って、そもそも、お前、男じゃん」
あっぶねぇ。
普通に付き合う方向で物事を考えてた。
「そうだよ、それが?」
「それがって、お前なぁ」
だって、男と男って変だろ?
「お互いが好きでもダメなの?」
うん?
何がダメなんだろう?
解らなくなってきた。
「いや、やっぱ違う!」
立ち上がって俺は言った。
「……だよね、気持ち悪いよね」
……ライネ。
「いや、そうじゃな」
泣いてる!
ライネが!
メソメソと!
だから、違っ
「気持ち悪いって意味が解らないけどさ、俺は、お前の事が好きだ!
だけど、それって顔が可愛いとか、体のラインが好きとかって見た目の話じゃん!
お前だってそうだよ!
俺の事なんて何も知らないのに好きって変だろ?
結局のところ、今の俺の感情も、お前の感情も、ただヤりたいだけって事だろ!
ライネとは、そんなの嫌だって思った。
したいけど、違う!
ライネとは、そんなんじゃなくて…… なんだ! その、ちゃんと、つ、つ、つ
あ゛ーーー!
付き合った事ないから、わっかんねぇよ!」
うん。
俺は、何を言っているんだ?
「うおおおおおお!」
俺は、大木に頭をゴンゴン打ち付けた。
「はぁーー、はぁーー」
大木に手をつきつつ膝をついた状態の俺。
痛い。
もの凄く痛い。
「……なに、やってんの?」
ライネの呆れた声が聞こえた。
それはね、俺がバカだからだよ。
「あ」
俺の背中が温かくなった。
ライネが抱きついてくれたようだ。
「……いいよ。
カズヤさんに僕の事を知って好きになってもらいたい。
僕は、カズヤさんの事を知ってもっと好きになりたい」
「俺もだ……」
互いに好きが本当なのか解らないなら付き合うべきじゃないと思った俺の我儘をライネは受け入れてくれた。
好きです、じゃあ付き合いましょう! なんて良いのか?
付き合うとか大それた事をした事のない俺だからしょうがないのだ。
面倒と思われて、ライネに嫌われたら怖いって気持ちがあるが、頑張ろう!
何をどう頑張るか分かんないけど、兎に角! 頑張ろう! って俺は、思った。
俺は、何を考えているんだ?
いや、しかし。
だが?
ええぇーーい、どうにでもなれ!
って事で、次回も、乞うご期待!




