第17話 謝罪したので水に流してください
もう、彼女には無理だろうけど、ラージャが言うように謝ろう。
それが人として当然の行動だ。
「キーラさん、先程は、大変失礼な事を言って申し訳ございませんでした!」
俺は、深く頭を下げた。
本当に申し訳ないって思うから。
冒険者ギルドでキーラさんの行きそうな所を教えてもらった俺とラージャは、安酒場で昼間から酒を飲んでいるキーラさんを発見した。
ラージャがキーラさんに話だけでも聞いてやってくれと頼み込んでくれて、謝罪をしたって訳だ。
「もういいですよ、カズヤさん」
カズヤ様って言われてたのに、さん付けになってるのが少し気になったが、許してもらえたのか?
俺は、嬉しくって顔を上げると、キーラさんがニコニコしている。
そんなに傷ついてなかったのかも!
これで、俺も彼女が出来
「それから、もう話しかけないでもらえますか?」
ニッコリ笑顔で言われた。
何も言い返せない。
自業自得なのだがらしょうがないと思うのだが、結構こたえるな。
「ぷっ、残念じゃったの、カズヤ」
口元を手で押さえながら、ちょんと俺に触れてラージャが言った。
な、殴りてぇ。
「キ、キーラさん……」
俺は、キーラさんに
「止めとけ、カズヤ。
終わってるのに、見苦しいのじゃ」
言いかけた俺にラージャが言ってくれた。
うん。
「……そうだな、ありがとう、ラージャ」
「帰るのじゃ」
俺は、少しの間、夢をみさせてくれたキーラさんには、感謝しかない。
これ以上は、迷惑をかけてはいけないのだ。
ポケットに手を入れ静かに店を後にした……
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「暴言吐いて、フラれてカッコつけてるのじゃ! ギャハハハハ!」
ふふ、店を出た途端ラージャが大爆笑してくれた。
「なんだと、この野郎! 人が傷ついてるのに!」
顔を真っ赤にした俺がラージャに注意した。
ラージャの言う通りなので、恥ずかしいったらありゃしない。
「そんな事より、カズヤ、ありがとうなのじゃ、プププ」
イラッ!
「ライネと約束取り付けたんだから感謝しろよ、お前!」
「来週の月曜がたのしみなのじゃ!」
ライネにラージャとのデートの了解を得てやってから上機嫌だな、おい。
「解ってると思うが……」
チロッと俺を見て確認してきやがった。
解ってるって!
「だから、俺は邪魔しないようにしてるから心配すんな」
ライネの条件が俺も一緒に付いてくる事だもんな。
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次の日――
【 エルヴァスティ王国騎士団 訓練場 】
「お前達! スピードが落ちているぞ!」
鎧フル装備で走る騎士団員に向かってボリス団長の激が飛ぶ。
「なんか、今日の訓練キツくないか?」
赤毛の若い騎士、ペトリが隣を走るライネに言った。
「ボリス団長、何か嫌な事でもあったのかな?」
一見女の子にしか見えない金髪の少女、いや、青年ライネは、先程からボリス団長に睨まれているような気がしてならなかった。
(カズ君って、あんなひ弱そうなのが好みなの?
昨日は…… ライネが無理やりカズ君の唇を……
嫌ッ!
ビックリしちゃって詰所を飛び出しちゃったけど、逃げないで向き合うべきだったと思うの!
勇気を出して、ちゃんとカズ君と向き合わなきゃ取られちゃうもんね。
……あんな子には、負けない!
だって、カズ君を想う気持ちは、誰にも負けないんだから!)
そう決意を胸に、恋のライバルを見つめるボリス団長だった。
「おい、ライネ! お喋りしている暇があったら、しっかり走れ!」
ボリス団長の大きな声が訓練場に響いた。
「は、はいっ!」
ヤケクソ気味にライネは答え、落ちていたスピードをあげるのだった。
「お、おい」
置いて行かれたペトリはライネとボリス団長を交互に見て、「今日の団長、ライネに厳しくない?」と疑問に思うのだった。
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訓練が終わり、馬用の長方形の水桶(ここでは、騎士団員用である)で顔を洗ったライネ。
その横には、ペトリが立っていた。
「なんか、今日のボリス団長は鬼気迫るものがあったな、ほれ」
顔を洗い終えたライネに手拭いを渡してペトリが言った。
手渡された手拭いで乱暴に顔をゴシゴシとやったライネがニッコリ笑う。
「確かに、今日は久々にキツかったな。
なんか、俺に当たりが強かったような気がするし」
「おかげで、俺は遅れても怒られなかったし助かったよ」
「お前な! 大体、なんで、お前も喋ってたのに俺だけ怒られるんだよ!」
怒るライネにペトリは笑っていた。
そして、物陰から二人を見る影があった
「ライネの泥棒猫、何を話してるの? カズ君? カズ君の事でしょ!」
当然、ボリス団長である。
ボリス団長は親指の爪を噛みつつ、もっと会話の良く聞こえる場所へと移動を開始する。
「そういや、お前、次の休み暇か?」
ライネに言われたペトリだが、少し考え、
「いや、今度の休みは、実家に行く事になってるからな。
どうした? 何か用でもあったか?」
「そうなのか…… 残念だな。
実は、今度の休みにラージャちゃんとカズヤさんとで遊びに行く事になってさ」
(カズ君と!)
ライネ達の近くで隠れるボリス団長の目つきが変わる。
そして、ボリスイヤーは最大限にライネの会話を聞き取ろうと収音しようとピクピク動くのだった!
「そうなの? 楽しそうだな。
てか、カズヤ、全然仕事してないけど大丈夫なのかアイツ」
(ペトリ、カズ君を非難する、と。
頑張ろうとしているカズ君に暴言を吐いたペトリは明日の訓練で、キツいお仕置きが必要だな)
ボリス団長は、メモ帳に記録した。
「ラージャちゃんが僕とデートしたいって言うから保護者が必要だろ?
それで、カズヤさんについてきてもらうんだけど、カズヤさんも一人だとつまんないだろうから誰か誘おうかと思って」
笑顔で言ったライネだが、ラージャをペトリに押し付けようと思っていたのだ。
「そういう事かぁ、カズヤ一人で可哀想だとは思うけど…… 俺も実家に呼ばれてるから、やっぱパスだな。
て事で、お前は、休みの日をラージャちゃんとカズヤのお守をして過ごすんだな」
ニヤニヤしてライネに言ったペトリ。
(カズヤさん、カズヤさんて、お前は俺の事どう思ってるんだよ?
お前は女みたいな見た目だから、あのカズヤってのに襲われたら……
あの日、アイツが男に欲情する男か試す為に体に触れたり誘うような行動をとったけど大丈夫だったから、変な事になる事は無いと思うが…… 心配だ!)
ペトリは、笑顔の奥でライネの事を心配していたが顔に出す事は無かった。
そして、心配する人物がもう一人、
(なんなの? カズ君とお出かけって、私がいるのに?!
いや、それより恐ろしいのは、カズ君を落とすために、ラージャって子共を手懐けるライネね!)
当然、ボリス団長である。
「ライネ!」
物陰からボリス団長が飛び出してきた。
「ボリス団長?!」
ライネと、ペトリが同時に言った。
「ラージャとライネのお似合いカップルのデートについてくる保護者のカズく、カズヤ殿の事まで心配するとは、良い騎士になってきたな、ライネ!」
ニコニコ、ニッコニコでボリス団長がライネに。
だが、ライネは明らかに困った顔をしている。
「あ、ありがとうございます」
何を言ってるんだ? と思いつつも、上司にお礼を言った。
「そこで、心優しい儂がペトリの代わりに行ってやる。
うむ、それが良い。 って事で、カズヤ殿の相手は、儂がしてやろう!」
満面の笑みで言ってきたボリス団長だが、ライネはドン引き。
「あ、いや。団長の手を煩わせるのもアレですので、大丈夫ですよ」
おまけつきだが、カズヤとのデートなのに、ボリス団長に来てほしくないライネはお断りを、
「そんな、片手間じゃ、ラージャが、いや、ラージャちゃんが可哀想であろう!」
語気を強めるボリス団長。
(普通に考えて嫌でしょ? なんで休みの日まで団長と一緒にいなきゃなんないんだ!
コイツを連れて行ったら絶対にカズヤさん達に迷惑がかかる!)
ニコニコしながらも警戒を強めるライネ。
「そっかぁー、ライネがラージャちゃんんとね~~
お似合いではないか! ワハハハ!
心配するな! カズヤ殿は儂に任せておけい!
お前は、ラージャちゃんを、しっかりエスコートしてさしあげるのだぞ」
(カズ君の貞操は、私が守る!)
笑顔のボリス団長は、ライネに警戒しつつ勝手に決めた。
「……」
凄くボリス団長に来てほしくないと思うライネだが、上司についてくるなと言えずに黙っている内に、ボリス団長がデートの段取りすると言い出した。
「うむ、それでは、デートプランは儂に任せてもらおうか!」
「え? ……あ、はい」
ライネは、力なく答えるのだった。
うう……。
なぜか悪寒がした。
風邪かな?
ラージャは、ライネとデートが出来ると喜んでるが、辞めといた方が良いと思うんだけどなぁ。
って事で、次回も、乞うご期待!




