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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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105/105

第105話 突然の最終回

短くも長いカズヤ達の旅も今回で終わる。

そう、今回が最終回なのだ!


 全ての黒幕、この国を我が物にせんとしていたファングが黒幕ですと自供した。

 ちゃんと自供した褒美に椅子に座らせてあげた。

 まあ、落ち着け。


「貴様ら、この私にこのような真似をして…… タダで済むと思うなよ!」

 優しさから椅子に座らせてあげたとたんに、この態度!

 拷問が嫌で思いの他あっさり自供した癖に、ファングが俺を睨んで言いやがった。

 困った奴だぜ。

「このような真似ってどんな事だ? 椅子でぶん殴った事か?

 自供したから許されるとでも思って、そんな態度に出てるの?

 あのな、お前、自分の立場が理解出来ていないのか? ん?」

 俺は手にした角材でファングの胸の辺りを突く。

「なあ、おかしいと思わないか? お前が殴られて大きな声を出した。

 だけど、助けが来ない。 どうしてだろうね?」

 ファングに角材グリグリしながらニヤニヤして聞いてあげた。


「お、お前! 王が関わっているのか!」

 ファングが俺に食って掛かってきた。

 落ち着けよ。


「普通に考えたらそうだろうね。

 なに、大した事じゃ無いから、気にしないで。

 少しの間、この部屋の近くを人払いしてもらっただけだ」

 にっこり笑ってあげた。


「ラージャ! 空間収納!」

「録画はもう良いのか?」

「おう、ありがとな。

 もうバッチリ証言も撮れたし、後で編集して王様達に見せるよ」

 撮影してくれていたラージャが空間収納を開いてくれた。

 さてと、せっかく買ったのに日の目をみないのは勿体ないし、使うか。

 既に証言も撮れたし、必要など無いのだが。


ドンッ!


 高出力1600W大容量1260Whの大型ポータブルバッテリー、テレビモニター、安物のDVDプレーヤーが目の前に置かれた。

 働き者の俺はソレをせっせとセッティングし始める。


「お、おい? 何をしている?」

「うるさいな、ちょっと待ってろ」

 俺が作業してるのに、ファングめ!


「お前! カズヤさんが作業してるんだから、静かにしてろよ!」

 おっ、ライネが空気を読まないファングに注意してくれた。

「そうだよな、コイツ、悪い事を考えてた癖にさっきから生意気だよね」

 ペトリの言う通りだな。

 俺もそう思う。

「ファング、お前の敗因は、儂達の街に手を出した事だ!」

 ボリス、そうだよな!


「なんの事だ?!」

 ファングが叫んで、俺は手を止めた。


「この野郎、いけしゃあしゃあと」

 セッティングも大体終わった俺は、ファングを見た。

 惚けやがって……


「お前が他国とつるんで、この国を自分のモノにしようとしたから、王様がそれに対抗する為にイルボ商会を使って俺達の街の財力と技術力を手に入れようとしたんだろ!

 つまり、お前が居なかったら、俺達の街は平和にやっていけたんだよ!」

 どうだ、この野郎!

 コレでも俺に何か言う事があるか!


「か、関係ないじゃん!

 お前の街に何があったのか知らんが、全然、俺に関係ないじゃん!

 実行したのも計画したのも、王達ではないか?!

 ふざけんなよ、お前、ソレで私を椅子で殴ったりしたのか!」

「……確かに」

 うん。

 ファングが俺に言う事があった。

 確かに正論だ。

 コイツが国を我が物にしようとしていた事と俺の街に被害があったのと別に関係が無い。

 変な汗が出てきた。

 ここまでしといて、ごめんなさいってのも……


「カズヤ! 言い含められるんじゃない!」

 目が泳ぐ俺に、オスモが強い口調で言った。

「……オスモ」

 俺が見ると、オスモがフッと笑った。


「俺達は、王家派だ!

 正しいとか正しくないとか、今更言ってどうなる!

 要は、王様にとって、コイツが邪魔なんだろ?

 じゃあ、いいじゃん! カズヤのやってる事、間違ってない。

 むしろ、良い事です!」

「……」

 す、凄い。

 開き直った。

 俺も大概だが、オスモ……。

 いや、オスモ的には当然な事か。

 オスモは王子直属の部下になる訳だし、これからのオールストレーム領の事を考えれば王の障害を排除したという実績を残したいのだな。

 うん。

 良かった。

 悪い事しちゃったかなって、ちょっと思っちゃってたから。

 安心した俺は、ラージャの空間収納からDVDを取り出した。


「この野郎!

 ふざけんなよ! 俺に何かあったら、あの、軍事国家バーンが黙っちゃいないぞ!」

 ファングがうるさい。

「なんだよ、軍事国家バーンて? 知らないよ。

 あれか? お前がつながってた他国って奴? どうでも良いよ」

 特に興味もなくなってきているファングなので、俺は顔も見ずに答えた。


「なにぃ! 軍事国家バーンだと?!」

 ボリスが驚いている。

 まあ、ソレだけだ。

 辺境の田舎領主のオスモも良く解ってないみたいなんだから、俺なんてそんなの知る訳がない。


「それは、強いのか?」

 空気になってたサニーが久々に口を開いた。

「馬鹿野郎! 軍事国家バーンといえば、中央国家群最強の国!

 辺境のこの大陸にまで勢力を伸ばそうというのか……」

 なにか、ボリスだけが納得して説明しているが、この辺ってこの世界でも田舎の方だったのか?


「フハハハハ! 解ったか!

 私の後ろには、バーンがあるのだ! さあ、ひれ伏し、私に詫びろ!」

 なんだ?

 強気になったな?

 俺はDVDをセットし終え、嬉しそうな顔をしているファングを見ると、サニーがファングの側へ走っていた。


「おい、お前さ、その国の場所解る?

 協力者とかスパイとか、この国にいるんだろ? 教えろ。 な? 教えるまで殴るよ」

 喜々としてサニーがファングをぶん殴っている。

 嬉しそうだな、サニー。

 困ったもんだぜ、暴力は嫌いだ。

 

「おい、その辺にしとけよ。

 ファングも国の場所くらい教えてやれよ」

 暴力など見るに堪えないので言った。

「あっ、カズ君。 場所くらいなら、儂、解るよ」

「そっか。

 おーい、サニー、ボリスから場所聞けよ」

 俺が声をかけると、サニーがボリスの元へ向かった。

 一生懸命に場所を聞いているのだろう。

 さてと、俺もやるか。

「そんじゃ、ファング、コレを見ろ!」

 俺は、セットしたDVDを再生。

 モニターに戦争ドキュメンタリー映像が流れはじめた。

 ファングが見たこともない兵器や破壊力だろう。

 フフフ、驚いてるようだな。

「コレが、俺達の街の軍事力。 つまり、これからのこの国の軍事力だ!」

 嘘だ。

 戦車などもっていない。

 売ってないし。

 コレを見せて俺達に勝てないと思わせて自供させようと思っていたものだ。

 だけど、あっさり自供して必要無くなったけど、せっかく買ったのだから披露した。

 王様達に見せたらすっかり信じ込んでたから、俺達の街に手出ししてこないだろう。

 まあ、王様が裏切って街に危害を加えようとして来ても重機で返り討ちにしてやれば良い。



「よし! 北東をずっと行けばあるんだな!

 カズヤ、ちょっと軍事国家バーンを壊滅させてくる!」

 俺がファングのリアクションを楽しんでいると、サニーが声をかけてきた。

 とても嬉しそうだ。

「そっか、頑張れよ」

 サニー、目標があるってのは良い事だ。

 そうだな……

「ラージャ!」

「なんじゃ?」

 ラージャに空間収納を開いてもらい買い物を始める事にした。

 旅立つサニーへの餞別だ。

 サニーの要求するものを選択していく、ナイフにロープにリュックに色々とだ。


「……お前、正気か? あの軍事国家バーンだぞ! それをたった一人で……」

 せっかくの旅立ちなのに、ファングの馬鹿野郎が。

「ちゃんと、映像をみてろよ!

 サニーがせっかくヤル気出してるのに、なんなの?

 あれだ、そんなの、いくらでもやりようがあるよ!

 例えば、指導者を全員暗殺するとか?」

 仲間をバカにされてムカついた。


「カズヤ、バカを相手にしないで良いぜ!」

 キリッとしてサニー…… フフフ、男らしいぜ、お前!

 そうだな、ファングなんて、どうでもいいし。


「頭、おかしいよ、お前等!」

 ファングがほざいているが、相手にしない。


「馬鹿ッ!」

 ボリスがファングをビンタした。

「なんで?!」

 ファングが驚いた表情をしてボリスに聞いてるが、確かに。

 どうした、突然?

「男の旅立ちだぞ! 気持ちよく送り出してやろうではないか!」

 強い口調でファングに注意しているボリス。

 そういう事か。

 ボリスの言葉に俺は胸がジーーンときた。


「サニー、森で僕を助けてくれてありがとう、これ、あげるよ」

 ライネが、この部屋にあったペンをサニーに渡した。

「コレで、手紙を書くからな、ありがとう」

 サニーが嬉しそうだ。


「ほとんど会話すらしてなかったけど、俺からはコレを」

 ペトリは、部屋にあった花瓶から花を取ってきてサニーに渡した。

「フフフ、俺が花を貰うとはな、ありがとう」

 サニーが照れている。


「帰ってくる時は、お前に負けない強い男になっているからな」

 ボリスが、ファングのジャケットを剥ぎ取ってサニーに渡した。

「焚火の焚き付けにでもするよ、ありがとう」

 サニーが服を腰に巻き付けている。


「ほれ」

 ラージャがポケットからガムを取り出し渡した。

 後、2、3枚は入ってるかな?

「こりゃ旨そうだ、ありがとう」

 サニーが一枚口に入れた。


「急な事なので、俺はお前にあげる物を用意していないが…… 元気でな」

 オスモ。

「フフフ、気にするな、帰ったらユリアナちゃんをもらうから」

 サニーが凄い笑顔だ。

「いや、ダメだろ!」

 オスモが慌てているが、サニーは無視している。

 フフフ、仲が良いな二人共。


「さあ、俺からは、車を買ってやるからな!」

 軽自動車。

 ガソリンも携行缶にガンガン詰めて大量にのせてやる事にした。

「って事で、みんな! 外まで、サニーを見送ろうぜ!」

 そういうと、俺はサニーの肩に手を置き押した。

「お、おい?!」

「良いから!」

 サニーを先頭に、俺、ラージャ、ライネ、ペトリ、ボリス、オスモ、ファングは、城の外へと向かう。


 城の廊下に俺達の朗らかな笑い声が響く。

 差し込む日の光は、サニーの旅立ちを祝しているよう。

 空は青く、どこまでも続いている。


エルヴァスティ城、門前――


 城の外に出た俺は、さっそく購入した中古の軽自動車をラージャの空間収納から取り出した。

 ちゃんとガソリンもたっぷり持たせたし、屋根に自転車も積んでやった。


「みんな…… 俺の為に、すまん」

 サニーが俺達に頭を下げている。


「フフフ、お前らしくないぞ、顔をあげろよ」

「へへっ、そうかもな」

 サニーの野郎、笑顔で。

「この野郎」

 俺は、サニーを殴るフリをする。

 サニーもおどけて、頭を守る動作をした。

 みんなが笑っている。

・

・

・


「そんじゃ、みんなも元気でな」

 軽自動車に乗りエンジンをかけたサニーが窓を開けて言った。


「ああ、お前も元気でな」

 俺は軽く手をあげる。


 みんなの鼻をすする音が聞こえた。

 別れを惜しんで泣いている。

 こら、みんな門出だぞ。

 サニーが出発しずらくなるじゃないか。

 そんな俺の目にも涙が……


「そんな顔すんなよ、ちょっと軍事国家を潰してくるだけじゃないか」

 サニー……

「そうだよな、今生の別れじゃあるまいし! ほらっ! みんな、元気でサニーを送ろうぜ!」


「そうなのじゃ!」

 ラージャ。

「そうですよね」

 ライネ。

「そうだよ!」

 ペトリ。

「頑張れ!」

 ボリス。

「帰ってくるな」

 オスモ。

「……なんで、俺もここに居るの?」

 ファング。


 数名、笑って無いのがいたが…… 気にしない!


「そんじゃ、いってきます!」

 サニーが元気に出発した。


ブロロローー……


 走り出した中古の軽。

 俺は追いかけ、そして、

「いってらっしゃい! 帰りを待ってるからなぁーー!!」

 大きな声で言った!

 軽の窓から、手を出し振るのが見えた。

 元気でな、サニー。



 青く大きく広がる空は、何処までも続いている。

 だから、サニー。

 俺達は、どんなに離れていても一緒だ。

 お前が帰ってくる頃には、俺達はどうなっているのかな?


 いや、変わらないか。 

 何年たとうが、俺達は馬鹿やって笑って、楽しんでるよ。

 そうだろ?

 サニー。


 大空に浮かび微笑むサニーに俺は語り掛けるのだった。





                おしまい。

今まで読んでくれた人、ありがとうございます。

今回の話で完結。

よかったら、ブクマや評価、感想、レビューなどが頂けるとありがたいですし、次回の励みになります。

そんじゃ、また、書いたら読んでください。

後、他の作品やミッドナイトノベルズの軽キャンピングカーの方もご覧ください。

って事で、次回作も、乞うご期待!

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