第102話 王様に会おう その1
全ての元凶であるファング。
ソイツは、この国の宰相。
城に居る。
だから、俺達は城に向かう。
ごく自然な事である。
イルボ商会を出発したカズヤの運転するトラックとライネとペトリの運転するバイクは、王城を目指して走った。
トラック荷台――
「なんだよ! 商会に立ち寄ったと思ったら、もう出発か?
あれか? 彼奴、俺に説明したら死ぬ病気でもあるのか?
どうして俺に何の説明もないんだ!」
トラックの荷台に乗せられたオスモがカズヤに対して憤った。
イルボ商会に到着した時も、出発の時もカズヤから何の説明も受けれなかったからだ。
そして、そんなオスモをヤレヤレと見やる人物がいる。
サニーである。
「おっさん、あんまりカリカリしてると血圧上がるぞ」
うるさいオスモを黙らそうと声をかけたサニー。
そんなサニーに素早く反応するオスモ!
「なんだと、この野郎! お前は腹が立たないのか?
商会に到着した時にお前もカズヤに言われただろう!
俺とお前が降りようとしたら、「直ぐに戻るし、お前達は商会に用事ないだろうから荷台で待ってるでしょ?」って!
いや、一言も言ってねぇーし!
何で、彼奴が俺達の事決めちゃうの? 何で?」
「文句があったなら、その時に言えば良かったんじゃないのか?」
「あのな、そんなの言えるかよ!
王子が居る前で!
俺も行きたいなんて言えるか?
俺はこれから王子の下で働く事になるのに、あそこで反抗したりしたら協調性の無い人間だと思われるだろう?
ホント、カズヤって、やり口が汚いよ!
俺だって、王都のお店に入りたかった!」
フンガー、フンガー、恨み節を述べるオスモの言葉をサニーは、うんざりした表情で聞いた。
ひとしきりオスモが話終わるとサニーは、ため息を一つつく。
「あんまり子供みたいな事言うんじゃないよ。
それにアレだ。今回は商会に寄れなかったけどさ、心配いらないだろ?
だって、お前は、ここの街に勤務になるんだから、王都の商会なんていつでも行けるじゃん。
だから、今回の件は忘れろ。
俺はカズヤに出会って日が浅いけどな、アレを気にしたらいけない。
カズヤの言動にいちいち一喜一憂してたら損ってもんだぞ。」
「……確かに」
サニーの言葉で気持ちが楽になった。
そして、表情も幾分和らいだようになる。
「だよね!
この俺が、王都、しかも王城勤めになるんだもん!
辺境の領主だった俺が出世、伯爵様だぜ!
ウヒョーー!
オールストレーム家始まって以来の出世頭!
俺ってすごいのか? そんな訳ないか。
でも頑張って辺境の領主を続けてたらこんな事になったんだぜ!
なんだかんだ言って、それもコレもカズヤのおかげなのかも知れんな。
そう考えると…… なぁ、カズヤって良い奴だと思わないか? フフフ」
怒ってた癖に、いきなりの感情の変化のオスモ。
流石のサニーも情緒不安定なオスモを大丈夫かコイツと思った。
それだけではない。
同乗する騎士達もオスモの情緒不安定振りに不安な表情になっている。
しかし、当のオスモは機嫌を直し、ニッコニコで近づくお城を期待を込めた目で見るのだった。
ブロロローー……
・
・
・
◇◇◇
ブロロローー……
「スゲー城だな、おい!」
俺達の目の前にデカい城が見えてきた。
白を基調とした城は、美しく荘厳な雰囲気を纏っている。
「ホントにスゲーな。
前に王都に住んでたけど、そん時は国や王様に関わり合いになるって考えもしてなかったし、そんな気にもして無かったから、ああ、城だなって思うくらいだった。
ソレが、こうしてまじまじと見ると…… なんか感動するな」
運転する俺は、目の前の城に正直圧倒されていた。
人の手により建造された城。
重機とか無いんだぜ。
ソレなのにこんな立派な……
いやいやいや、日本で目にしたビルや豪邸や駅やお寺とどれとも違う。
ヨーロッパのお城みないな…… いや、違うな。
テレビで見た事のある古城なんて目じゃない。
確かに古城と比べるのがおかしな話だよな…… 規模が違う、
もしかしてこの国って、凄い国なのか?
そんな事を考える俺は、ただただ目の前の城の威風に圧倒された。
「フフフ、どうだ、エルヴァスティ城は!」
「ん?」
後ろに乗るセリアが自信満々に俺に声をかけてきた。
まあ、認める。 確かに……
「うん。 ……凄い」
凄いのは認める。
認めるがだな、
「コレってお前の城じゃないだろう? 何で、お前に自慢されなきゃなんないんだ?」
俺は、ちゃんとセリアに忠告する。
しかし、セリアは一瞬驚いた表情を見せると
「……フフ、そうだな」
などと、余裕のコメントをしやがったぜ。
「クッ」
セリアには少々ムカついたが、目の前の城…… ホントに凄い建物だな。
建築に興味などない俺がそう思うんだから、やっぱ凄いよ!
……しかし、圧倒されてもて仕方ない。
気持ちを切り替えろ!
よっしゃ!
「そんじゃ、行きますか!」
俺は、城門に向けスピードをあげた。
・
・
・
エルヴァスティ城――
ルーカス王子が一緒なので、すんなりと入城出来た。
建物の入り口近くにトラックを駐車。
ちゃんとドアの鍵もかけた。
よし!
入口前に、嫁達、オスモにサニー、そして、ルーカス王子とセリア、騎士達がたむろしている。
彼等の待つ場所へと俺は向かった。
「お待たせ! 全員降りたな。
そんじゃ行きますか!」
「大丈夫なのか、なのじゃ?」
ラージャが心配そうに外の風景を眺めながら俺に聞いてきたが、何?
「ああ、あいつ等の事か?」
去っていく騎士達を眺め言った。
しかし、ソレは間違いだ。
俺達に愛想を尽かした訳じゃない。
それに去っていく騎士を心配しなくても良いと思うのだが……
「ラージャ。
この現場を離れたところで騎士達にも仕事が待ってるんだろうからな、王子を城まで送り届けた今、去っていく騎士達を呼び止めたら可哀想ってもんだぜ。
騎士達の一部には、ゴミ捨てたりするマナーを守れない悪い奴もいたけどよ、大概の奴等はまともだったからな、別れは残念と思うよ」
いや、今はそんな事を考えても仕方ないじゃないか。
そう思っているうちに騎士達の解散が完了したようだ。
騎士達も頑張ってくれたおかげて、無事に王都に到着したんだから、よし としよう。
俺は、去っていく騎士達に頭を下げた。
「カズヤ、ようこそ。
ここがエルヴァスティ城、俺の家だ」
ルーカスが両手を広げ俺に言った。
今日は、俺がゲストだからな。
ん?
オスモが背筋を伸ばし、畏まった表情。
気合が入ってるな。
「カズヤ、失礼の無いようにな!」
は?
開口一番俺に注意しやがった。
俺ほど丁寧な人間もいないだろうに。
まあ、誤解されやすいからな、俺は。
「そんじゃ、ルーカスのお父さんにでも会いにいくか」
軽くオスモを無視してルーカスに言った。
ルーカスは少し笑うと俺について来いと言わんばかりにセリアを伴って歩き出した。
よし、俺も行きま
ガッ!
「おうっ!」
進もうとしたら胸倉を掴まれた。
って、オスモ?!
「お、おい! 王様をだな、お父さんだなんて不敬だぞ。
マテウス陛下の前で言うなよ!
大人しくしてろ!
いいな、絶対だぞ!」
な、なんなの?!
「大丈夫だよ、お前も知ってるだろ、俺が常識人な事を。
それに、気配りの出来る男だから」
もう。
言わせるなよ、照れるなぁ。
「お前……」
自分の事が解っていないカズヤの発言にオスモは手の力が抜けた。
ん?
俺の話を理解したのかオスモの手が俺から離れたぞ。
「ルーカスが行ったし急ごう! 迷子になっちゃうぞ☆」
困ったおっさんだぜ。
俺はルーカスを追って走った。
呆然とカズヤの後ろ姿を見つめるオスモ。
「おっさん、じゃまなのじゃ」
立ち尽くすオスモに言ってラージャがカズヤを追う。
「お父さん、置いてかれるよ」
「ライネ、早く行くぞ」
ライネとミカエルが父親に声をかけカズヤを追う。
当然の如くボリスとペトリもカズヤを追う。
「おい、おっさん。
呆然としてんじゃないよ」
「え? あ、サニー」
「お前は俺の父親になるんだから、しっかりしてもらわないと困るぞ」
「ん、ああ、すまん」
サニーはオスモに言ってカズヤを追う。
オスモは流れでサニーに頭を下げそうになったが、ちょっと待て! と思った。
「ちょっと待って!」
先程の言葉の意味を知りたいとサニーを呼び止めるオスモ。
そして呼び止められたサニーは、顔だけオスモへ向ける。
「なあ、お前さっき、俺が父親になるって言わなかっ…… おいっ! 待てって!」
サニーはオスモの言葉を最後まで聞かないでカズヤの後を追って屋敷に入って行ってしまった。
しかし、納得しないオスモはサニーを追いかけた。
城に到着!
いよいよか?
いや、そんな事より中に入ろうぜ!
ファングってのにキツイお礼をしないといけないからな!
って事で、次回も、乞うご期待!




