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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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第101話 もう一つの理由

イルボが自供して大体の事は解った。

でも解らない事がある。

力をつける為に俺達の街を支配下に置こうとしたって事らしいのだが、そんな周りくどい事をせず俺に直接頼めば良かったんじゃないかって事だ。

「俺達の街で金髪豚野郎達にクーデターを起こさせた理由を早く言え!

 どうして、俺に直接協力要請をしなかったんだよ! えっ? どうなの?」

 モジモジしているイルボに詰め寄る俺。

「あうぅ、それは……」

 何をしてやがるんだか、早く言えってんだ。


「……言いにくい事なのか? お前もしかして!」

 俺の後ろにいるルーカスが声をかけてきたが、どうした?


「異常なまでの技術力を誇るフジノ街を自分が支配して、王とファングを出し抜いてエルヴァスティ王国を自分のものにしようと思っていたんだ!」

「なにぃ!」

 叫んだルーカスの言葉に俺は、イルボを睨む!

 驚いた顔をしやがって白々しい。

 ルーカスを見ると自信たっぷりの表情。

「……確かに、ルーカスのいう通りなら、俺が邪魔になるよな?」

「ああ、間違いないだろう」

 ルーカスが頷いているけど、俺もルーカスの意見に賛成だ!


 イルボの奴、なんて悪党なんだ。

 再びイルボを見るが…… 焦ってる! こりゃ間違いないな。


「ちっ、違う!」

「黙れ、イルボ! 往生際が悪い!」

 全くもって質が悪い。

「いや、王子の言葉が本当なら、もう一つの理由が関係しているなんて自供しないよ!」

 ん?

「確かに」

 それもそうだな……

 俺は、ルーカスを見た。

「カズヤ、イルボは良心の呵責に耐えきれず、白状しようとしたのだ。

 それを土壇場になって…… 見苦しいぞ、イルボ!」

 ルーカスがイルボを指差し言った。

 そうなのか?

 そうだよな!

「ほら、イルボ! ルーカスがこう言ってるぞ」

 俺はルーカスを指差しイルボに聞いた。

「いや、カズヤ、なんで俺の事を王子に確認するんだよ!

 王子もちょっと黙っててくれませんか?」

 困り果てた感じのイルボ。

 確かに、イルボの事はイルボから聞いた方が良いよな?

「うん。 そんじゃ、早くその理由ってのを教えろよ」

「そ、それは……」

 ええーーい、ウジウジと……。

 イライラするな。

 さっさと答えろよ。


「カズヤ、拷問して吐かせるのじゃ」

 業を煮やしたラージャがナイスアイデアを!

「よし、さっきの角材でぶん殴るか」


「ちょ、ちょっと! なんで、そんなに暴力的なの?!」

 イルボが俺に。

 バカ野郎、こんなにもハートフルな俺に向かって!

「なんだ? 俺だって拷問なんてしたくないよ。

 でも、お前がちゃんと言わないから、仕方なしにだよ」

 全く困ったもんですよ。


「カズヤさん、角材持ってきました!」

「サンキュー、ライネ」

 気が利く奥さんだ事。

 俺は、ライネから角材を受け取る。


「あ、あ、あ、あ、ちょ、ちょっと待って! 喋るから!」

 凄くイルボが焦りだした。

「ん? そうか?」

 俺は角材を床に突き立ててイルボをチロっと見る。

 イルボか観念した様子。

 フフフ、成功だ。

 誰が拷問なんてするか。

 そんなの、やるのもやられるのもゴメンだぜ。

「俺は、優しいからな、ちゃんと話をしてくれるんなら拷問などしないからね」

 にっこりして俺はイルボを安心させてあげた。

 角材を離しはしないけど。


「……」

 ん?

 どうした?

 ほれ、言って御覧。


「か、会頭……」

 フローラが不安げにイルボに声をかけ、イルボがフローラを見つめるか……

「おいっ! イチャイチャするんじゃない! 人前だぞ!」

 注意しておく。

 多少、個人的な嫉妬もあったが、俺は言った。

 なぜなら真剣な場なのに常識が無い、真剣さが足りないと判断したからだ!

 けっして女からモテない僻みでは無い!

 俺はモテるし!

 ほら、ライネだろ、ペトリだろ、ボリスだろ……


「……カズヤ」


「はい?」

 イルボに呼ばれて我に返った。

 危ない。

 頭の中で言い訳をこねくりまわしてたぜ。


「言うぞ……」

 イルボが意を決したようだ。

 俺の目を見て言った。

 ……凄い、真剣な目だ。


ゴクリ


 唾を飲みこむ。

 なんだか緊張する。


 カズヤは勿論、フロアに集まる者達がイルボの言葉に注視した。


「カズヤ…… もう一つの理由だが……」


「もう一つの理由」

 俺はイルボの言葉を反芻する。


「俺は……」


「俺は?」

 俺はなんだ?

 なにがあるんだ?



「俺は、お前が好きだから!」


「……」

 とても大きな声でイルボが言ったけど、あれ?

 いやいやいや、あれ?


「すまん。

 あれ? おかしいな、すまん、え? んん?

 え? ちょっと待ってね」

 俺は、イルボに言って、ラージャの元へ。


「おい、俺がおかしいのか、今さ、イルボが、お前が好きだからとか聞こえたのだが」

 間違いなく間違いだと思うが、一応確認の為にラージャに聞いた。

 うん。

 黙ってないで…… なんちゅう顔をしてるんだ、ラージャ!


「お、おい、やめてよ。 なんなの、その顔?」

 ラージャの肩を揺すって聞いた。


「……魔性の男なのじゃ」

「は?」

「お主は、男を誘惑する、魔性の男なのじゃ」

「……」

 何を言い出してんだ、ラージャ。

 馬鹿馬鹿しい。

「ハハハ、何を…… なぁ、ルーカス」

 俺がルーカスに手を伸ばすが…… 俺の手を避けやがった!?

「クッ!」

 ふざけんなよ!

 俺はイルボに向き合う!


「お前な、こんな時に変な事を言い出すんじゃないよ!

 皆に誤解されてんじゃん!

 大体だぞ、お前が俺を好きで何で、俺を頼らないで金髪豚野郎にクーデターを起こさせる事につながるんだよ!」

「それは……」

 ほらみろ。

 イルボが言い澱んでる。

「適当に言ったからだよ、コイツ!」

 俺は振り返って嫁達に向けて言った。

「違うんだ! 聞いてくれ、カズヤ!

 クーデターは、仕方なかったんだ!」

 なんで?

 俺は、再びイルボを見る。

「……聞かせてもらおうか?」

 一応聞くけど、ちゃんと俺が納得出来る理由があるんだろうな?

「あ、ああ」

 イルボが答える。

 さあ、話せ。

 俺は角材を突き立て両手で押さえると目を瞑った。


「金髪豚野郎達のクーデターが成功し、全てを失ったカズヤを俺が助けたかった。

 そして、一緒に暮らして、同じ時間を過ごしたかったんだ……」

 イルボ……

「お前、そんな事で俺達の仲間を……」

 正気か?!

 頭がクラクラした。


「やはり、魔性の男なのじゃ!」

「黙れ、ラージャ!」

 なんだよ、さっきから魔性の男って?!

「あ、アレだろ? 男同士の友情的な、ほら、あっ! そう! 親友になりたかった的な事でいいんだよな?」

 一縷の望みをもってイルボに聞い

「違うよ、カズヤとやりたかったから」

「馬鹿野郎!」

 即座にイルボを角材でぶん殴った。

・

・

・


◇◇◇



カズヤのトラック――


「一回くらい、やらせてたら金髪豚野郎が裏切る事もなかったのじゃ」

「……」

 俺は、無言でラージャのほっぺを抓る。

 ラージャが痛がっているが、当然だろう。

 折檻だからな。


 さてと、

「まあ、大体の経緯は解った。

 あれだ、ファングってのが元凶なんだろ? そんじゃ、やる事が決まってるな」


「お前が男と…… その、寝てるから、あのイルボもそういう目でお前を見ていたんじゃないのか?」

「黙れ、セリア。

 ホントに下品な女だな。 そんなんじゃ、ルーカスに嫌われるぞ」

「何だと、この」

 はい、無視!

 キャンキャン吠えてるセリアを無視した。


「ファングって宰相の男が優秀らしくて国としては、おいそれと切る事が出来ない。

 それで、良いんだな、ルーカス?」

「あ、ああ」

 発狂しているセリアをなだめているルーカスに聞くと答えてくれた。

 よし。

「結論から言うとな、それは大丈夫だ」

「え?!」

 ルーカスが驚いている。

 まぁ、そうだろう。

 当然のリアクションだろうね。

 俺から言わせたら、お前等が楽できないから切れないってだけだろうって思うけど。

 ちゃんと、聞けよ。 

 俺は後部座席のルーカスに顔を向ける。

「あのな、どんな優秀な人材だろうとな、一人の人間の能力なんてたかが知れてるんだ。

 今は、そいつでしか仕事が回らないとか思ってるのかも知れんが、そんな事ないぞ。

 バイト先の優秀なアルバイトが辞めるとなってどうしようってなってもな、残った人材や新しいので何とか仕事は回る。

 最初は、混乱や効率が落ちるかも知れんが、そんなの直ぐに元通りになる。

 何が言いたいかって言うとだな、代わりはどうとでもなるって事だ。

 ようは、システム、国の方針というか、経営者、つまりお前達がしっかりしてりゃ、問題ないって事。

 人材って言えば、ほら、イルボだって優秀だぞ、性格的に難ありだけど、一代であんな商会を作り上げたんだからな。

 だから…… お前に、お前の国に覚悟があるかどうかって事だ」

「バイト? システム? 言っている事が良く解らないが…… 覚悟か……」

「そうだ。

 覚悟だ。 そのファングっての居なくなったらお前達の仕事は確実に増える。

 慣れてる奴が居なくなるから現場も混乱するだろう。

 ソレを覚悟して、やり切るって気概があれば良いんだって事。

 ……で、どうする?」

 俺は前に向き直す。

 俺的にはどうでも良い。

 俺は、俺達の街で面白おかしく楽しく毎日を過ごせればそれで良いからな。


「……」

「……」

「……やる」

 ルーカスの声が聞こえた。

 そうか、ヤるんだな。


「そんじゃ、俺もめんどくさいけど、手伝ってやっからな。 友達だし」

 俺は、トラックのエンジンをかけた。


ブロロロ……

 

「そうと決まれば出発だ!

 ファングってのに退場願おうかい!」

 そう言って俺はアクセルを踏んだ。

俺達は王宮を目指す。

何しに?

そりゃぁ、ファングってのを排除する為だよ!

って事で、次回も、乞うご期待!

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