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というわけで廊下を歩いているのだけれど、視線がすごい。
メメッレに背後からじっと見られているのがわかる。
あれだろうか。
新参者が不穏な動きをしないように見張る的な。
(よくあるシチュエーションよね。悪役令嬢が婚約者の家に来たらそんなふうに言われたりするのよ『星屑の乙女になんてなりたくない』でもあったの覚えてるわ)
そこでふと我に返る。
似てないか、ルクレッツィの状態。
悪役令嬢ではないけれど、まあまあ問題のある婚約者が急遽同居。
でも監視のような真似をティクルスがするかなあと考えたら、しなさそうだなと思う。
あれだけ親身になってくれている。
少なくともルクレッツィにはしなさそうだ。
ちらりと背後を振り返ると、メメッレが静かに歩いている。
表情が変わらないから、歓迎されているのかいないのか、わからない。
やはりクール系か、慣れたら変わるのか。
それはそうと。
「はふ、はあ、はあ」
完全に息が切れてきた。
体力がなさすぎると思うけれど、そんなに歩いたことがないから仕方ない。
「ルクレッツィ様、私が庭までお運びいたします」
メメッレの申し出に、しかしルクレッツィは微妙な顔をした。
女の人に抱っこさせるのはどうなのだと思ったけれど、息が切れて苦しいのでお願いしてしまった。
庭はすぐ目の前に見えていたけれど、遊ぶ体力を温存したい。
人に抱えさせておいてと思うけれど、外で遊ぶなんてはじめてなのだ。
少しくらいは、はしゃぎたかった。
庭に続く大きなガラスドアを開けると、そこは広かった。
芝生が青々と茂り、季節の花たちが風に揺れている。
そして置き方タイプや吊り下げタイプのバードフィーターがいくつかあった。
「ひろーい」
ルクレッツィはぽかんと庭を見まわした。
一軒家の庭とはこんなに広いものなのか。
(一軒家っていうかお屋敷だからこれが普通なのかしら)
そういえばセレブ一家のコメディドラマ『ノートンブル家』でもお屋敷は大きかったし庭は広かった。
栄養剤を撒くはずが除草剤を撒いてしまう庭師も、そういえばいたなと思う。
おそらくそんなドジっ子庭師はいないだろうけれど、挨拶くらいはしたいなとルクレッツィは思った。
※『ノートンブル家』
セレブ一家に焦点をあてたストーリー。
栄養剤を撒くはずが除草剤を撒く庭師を筆頭に、問題児の使用人しか出てこない連続シリーズのコメディドラマ。
※『星屑の乙女になんてなりたくない』
王道の少女漫画。悪役令嬢が婚約者の家に来たらふさわしくないなどと蔑まれるシーンがある。




