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「花いっぱい咲いてるなあ。そういや花と美食の国だっけ」
何度考えても魅惑の響きだ。
ぜひおいしいものを食べたい。
花壇の方へ行くと、あと少しで春真っ盛りになるからか花の種類が多かった。
淡い色味が多いのは庭の雰囲気にあわせてか、季節の花なのかルクレッツィにはわからない。
「花って近くで見るのはじめて」
意外と小さいとか、柔らかそうだとか映像作品や写真で見るのとはまるで違うのだと感動した。
花びらは柔らかいのかしっかりしているのか、葉っぱはツルツルしているのか。
疑問と好奇心は尽きないけれど、勝手に触るのは駄目だろう。
怒られるかもしれないし、何より傷がついたらかわいそうだ。
庭を見ながらゆっくりと歩くと、日差しが温かい。
というかちょっと熱い気がしないでもない。
着ている服は冬用だ。
まだ風は冷たいけれど、日差しがあると結構体温が熱くなるんだなと思う。
外に出たことがほぼないので、日差しもあまり浴びたことがないのだ。
新鮮すぎる。
ふと前方に見えたものにルクレッツィは足を止めた。
そこには白い小さな建築物があった。
そこそこの高さがあり、屋根もある。
テーブルと椅子があるそれは。
「ガゼポだあ!」
認識するなりルクレッツィは走り出した。
これは少女マンガや映画なんかでよく見たやつだ。
座ってみたいと思ったけれど、映画なんかで見るようなお洒落なものは日本にはあまりないよと姉に夢を砕かれた記憶がある。
大体海外のものらしい。
もしかしたらルクレッツィが外出したいと思わないように、日本にないと言ったのかもしれないけれど、それはもうわからない。
ただルクレッツィは憧れだったその建築物に全力疾走で走り寄った。
実際は、ぼて、ぼて、と今にも転びそうな、走り慣れていない人間特有の鈍くささだったのでスピードはなかったけれど。
それでもガゼポまで近づくと、ルクレッツィは満面の笑みで膝に手をついて肩で息をした。
「は、はあ、ぜえ、うぇ」
息が切れすぎていっそえづきそうになるけれど、ルクレッツィはバクバクなる心臓に頬が紅潮していった。
「はあ、はあ、わ、わたし、今いっぱい、ぜえ、走った! 全速力で走ったわ! はひ、はふ、く、くるしい」
前世は走るなんて絶対に駄目だった。
歩くのも最低限。
何なら基本、車椅子だった。
自分の足で走り回れるなんて、元気いっぱいな証拠だ。
「私、けっこう体力あるかも!」
おおいなる勘違いをルクレッツィがしていると、そっとメメッレが顔を覗き込んできた。
その表情は無だけれど、心配そうにしているのは何となく感じられる。
よく思われていないわけじゃないのかなと、ルクレッツィは内心安堵した。
これからここに住むのだから屋敷のみんなとは仲良くしたい。




