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ノックの音が響き、ティクルスが入れと言えば侍女が部屋へと入ってきた。
「お前の侍女だ」
「メメッレと申します」
一礼したメメッレは二十歳前後に見えた。
白銀のボブヘアーに無表情。
喋り方も淡々としていて抑揚がない。
けれど小柄で可愛らしかった。
「ルクレッツィよ、よろしくね」
ルクレッツィの言葉に、メメッレがもう一度頭を下げる。
どうやらフレンドリーなタイプではないらしい。
ゲーム『バトル・レア・マーナ』のレア・マーナがそんなキャラだった。
戦うことだけを考えて育てられ、誰よりも最強になったかわりに感情が乏しいキャラだ。
メメッレが乏しいかはわからないけれど、同じ白銀の髪なのでつい思い出してしまった。
ラストバトルのあとで子供のようにはにかむ顔がファンのあいだで悶絶ものだったのだ。
はじめて見せた感情を目に焼き付けるためならプレイ時間をいくらでもつぎ込めると。
(メメッレはどうかしら。笑ったりしてくれたら嬉しいな)
初対面の時のティクルスと一緒なので、もしかしたらメメッレをお手本にしたのかな、なんて悠長に構えていたときだ。
「てっきり侍女を連れてくるものだと思ってたんだがな」
ひっくい声がティクルスの口から出てきた。
普通はそう思うだろう。
ルクレッツィが非常識すぎるのだ。
仕方ない。
国王以外はルクレッツィが幸せにならないようにすることが生きがいだった。
訊いたことはないけれど、多分そうだ。
(みんな性格悪いもんね。非常識で申し訳ないな。ティクルス様の血圧大丈夫かな)
どう見ても静かにブチ切れている。
まあでも大体の情報は出たはずだ。
これ以上、血圧が上がることはないだろう。
そう思ってにこにこしていると、落ち着いたらしいティクルスが立ちあがった。
「部屋に案内する」
「はい」
手を差しだされたので、ルクレッツィはにこにことその手を取った。
そのまま立ち上がって診察室から出たところで、ふと気づく。
「そういえばティクルス様の部屋はどこなの?」
「隣だ」
「隣? ここの?」
「ここの。それだ」
指の向いた先には確かに扉がある。
診察室の隣。
もしかしたら研究室も兼任していたりするかもしれないけれど、ルクレッツィ的には診察室だ。
貴族屋敷に疎いルクレッツィでもわかる。
それは絶対に普通じゃない。
いや、そもそも診察室があること自体が普通じゃないだろうけれど。
何故よりによって隣。
けれど納得もしてしまった。
ティクルスは絶対にワーカホリックだ。
口調は荒いけれど真面目だと思うし、何より医者の資格があるくらいだ。
勤勉でなければ無理だろう。
だからといって自室の隣に仕事部屋。
駄目だろう。
※ゲーム『バトル・レア・マーナ』
戦うことだけを考えて育てられ、誰よりも最強になったかわりに感情が乏しいレア・マーナというキャラが、ラストバトルのあとで子供のようにはにかむ顔がファンのあいだで悶絶ものと話題になった。
はじめて見せた感情を目に焼き付けるためならプレイ時間をいくらでもつぎ込めるとSNSでトレンドに入っていた。




