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『君の笑顔を忘れない』  作者: 優貴(Yukky)


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第7話 校外学習の日

校外学習当日。

朝七時。

集合場所の駅前は生徒たちの楽しそうな声で賑わっていた。

「おはよう!」

「眠い……」

「お菓子持ってきた?」

普段の授業とは違う特別な空気。

それだけでみんなのテンションは高かった。

悠真も例外ではない。

だが理由は校外学習だけではなかった。

今日は結衣と一緒に過ごせる時間が長い。

それが嬉しかった。

「神崎くーん!」

聞き慣れた声。

振り返る。

そこには結衣がいた。

白い帽子に春らしいカーディガン。

いつもの制服姿とは少し違う。

「おはよう」

「おはよう!」

笑顔はいつも通り。

だが少しだけ顔色が悪い気がした。

「大丈夫?」

「うん!」

即答だった。

だが悠真は少し不安になる。

最近ずっとそんな感じだったからだ。

バスの中。

班ごとに座席が分かれている。

結衣は窓側。

悠真はその隣だった。

「見て見て!」

結衣がスマホを見せてくる。

昨日調べた観光スポットらしい。

「ここ絶対行きたい!」

「展望台?」

「うん!」

子供のように目を輝かせている。

その姿を見ていると自然と笑顔になる。

「楽しみだな」

「うん!」

結衣は嬉しそうに頷いた。

その後も二人はずっと話していた。

好きな食べ物。

将来の夢。

旅行したい場所。

会話は尽きない。

ふと。

結衣が窓の外を見ながら言った。

「こういう時間っていいね」

「そうだな」

「ずっと続けばいいのに」

悠真は少しだけ胸が痛くなった。

まただ。

結衣は時々そんなことを言う。

まるで限られた時間を惜しむように。

目的地へ到着。

班ごとの自由行動が始まった。

まず向かったのは商店街だった。

食べ歩きをしたり。

お土産を見たり。

みんな楽しそうだった。

「神崎くん!」

結衣が手招きする。

「これ見て!」

ガラス細工の店だった。

店内には綺麗なアクセサリーが並んでいる。

「綺麗……」

結衣は小さく呟く。

その横顔を見ているだけで悠真は幸せだった。

「どれか欲しいの?」

「ううん」

結衣は首を振る。

「見るだけ」

そう言って笑った。

だが本当は欲しいのかもしれない。

そんな気がした。

昼過ぎ。

予定していた展望台へ向かう。

長い坂道。

結衣の足取りが少しずつ重くなる。

「大丈夫か?」

「平気」

そう言うものの呼吸が荒い。

悠真は心配になった。

「休もう」

「もう少しだから」

結衣は笑う。

しかし。

その直後だった。

ぐらっ――。

体が大きく揺れる。

「白石さん!」

悠真はとっさに支えた。

結衣の顔は真っ青だった。

「ごめん……」

「謝るな!」

珍しく強い声が出た。

結衣は驚いたように目を見開く。

「無理しすぎだろ!」

「……」

「最近ずっとそうじゃないか」

結衣は何も言わない。

ただ俯いていた。

班のメンバーも心配そうに見ている。

「保健室行こう」

「大丈夫だから」

「大丈夫じゃない!」

沈黙。

風だけが吹く。

やがて結衣は小さく呟いた。

「みんなに迷惑かけたくないの」

その声は震えていた。

悠真は言葉を失う。

「せっかく楽しみにしてたのに」

結衣は笑おうとする。

だが笑えていなかった。

その姿が苦しかった。

「迷惑じゃない」

悠真は静かに言う。

「え?」

「心配するのは当たり前だろ」

結衣が顔を上げる。

その瞳は少し潤んでいた。

十分ほど休憩すると少し回復した。

展望台へ到着。

そこから見える景色は絶景だった。

青空。

街並み。

遠くの山々。

春の風。

「すごい……」

結衣が呟く。

目を輝かせていた。

その笑顔を見て悠真は安心する。

「来てよかった」

結衣はそう言った。

そしてスマホを取り出す。

「写真撮ろう!」

みんなで集合写真。

さらに二人でも撮影した。

「はいチーズ!」

カシャ。

その瞬間。

結衣は本当に幸せそうな顔をしていた。

帰りのバス。

みんな疲れて寝始める。

結衣も窓にもたれていた。

「眠い?」

「ちょっと」

小さく笑う。

そして。

「神崎くん」

「ん?」

「今日はありがとう」

「何もしてないだろ」

「したよ」

結衣は優しく微笑んだ。

「たくさん助けてもらった」

悠真は少し照れる。

「友達だから」

そう答える。

しかし。

結衣は少し寂しそうに笑った。

「友達……か」

その言葉が妙に引っかかった。

夜。

家へ帰った悠真はスマホを見ていた。

今日撮った写真。

そこには笑顔の結衣がいる。

本当に楽しそうだった。

でも。

途中で倒れそうになった姿も思い出す。

「何か隠してるよな……」

胸の中の不安が大きくなる。

その頃。

結衣は病院の屋上にいた。

夜風が吹く。

手には今日撮った写真。

そこには悠真とのツーショットが映っていた。

「楽しかったな」

小さく呟く。

だがその目には涙が浮かんでいる。

診察結果は良くなかった。

予想以上に。

医師からも厳しい話をされた。

それでも。

結衣は写真を抱きしめる。

「まだ……」

涙が頬を伝う。

「まだ一緒にいたいよ……」

夜空を見上げる。

星は綺麗だった。

だがその光はどこか遠い。

そして。

誰にも言えない秘密は、

少しずつ二人の未来に影を落とし始めていた。

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