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湖城の悲劇  作者: たま


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17/18

500年目の結婚式

ルネッサンスの花開いたイタリアから遠く、その頃まだ国としても武力はあっても文化的には遅れていたフランスのそのまたド田舎の村娘。

素朴な彼女は同じく農夫のガブリエルと恋に落ちた。

が、戦争の足音はこんな田舎にも迫ってきた。

長引くイタリアとの戦いに兵が足りなくなり農夫達が駆り出された。

引き裂かれた2人。皆の訃報が届く中、仲間の遺品を持って帰ってきたガブリエル。

すでにその時には騎士団に加入し、馬で相手を槍で突き剣で首を(くび)り落とす大きな戦力となっていた。

「次帰ってきたら結婚しょう。」と誓いまた戦場へ。

村の娘が次々と結婚しても彼女はガブリエルを待ち続けた。

とうとう彼は王を守る騎士団の近衛として王妃と子供達をバーソロミューの戦いから守った功績で爵位を与えられた。

が、その凱旋帰郷の中、恋人は爵位と共に王妃から託された貴族の娘を見て絶望し、ガブリエルが造った貯水湖に身を投げて死んだ。

王妃カトリーヌ=ド=メジチからヴァロア朝を滅ぼそうと狙うナント公爵ブルボン家へ睨みを利かすため攻められにくい湖の城をブルゴーニュ地方に築いたが、恋人を失ったガブリエルはもう亡霊のようだった。

王妃と新しい王アンリ3世の御前試合で命を落とす。

ナント公に攻め落とされガブリエルの墓の亡骸は消えてしまったが、領主の間に刻まれた言葉の中に彼の魂宿っていた。

そう、恋人の亡骸を守るように。


「この床石の下に恋人フルールの遺体が本当にあるの?」フランソワーズや学芸員スタッフは半信半疑だ。

「ご先祖様が悪名高いヴァロア朝最後の王妃カトリーヌの腹心だったなんて!」フランソワーズはブツブツだ。

「異国から嫁いだ女は、目の敵にされやすいんですよ。でも、彼女はレオナルドダビンチをフランスに呼び寄せたフランソワ1世からルネッサンスを築いたメジチ家の女性としてたっての希望で息子の嫁に招いた女性なんです。

王が亡くなる時は、彼女を枢機卿として政治の場に息子と共に参加する資格を与えたほどです。」伽椰子の説明に学芸員のスタッフも驚く。

「ヴァロア朝の行く末を息子ではなくカトリーヌに託したのです。

そのカトリーヌがナント公ブルボン家へ睨みを利かせるためにご先祖様ガブリエルに爵位を与えココに城を築かせました。

爵位を継ぐ貴族の嫁まで付けて。

ところが、それでフルールが自殺してしまった。

そして次のアンリ3世の御前試合でガブリエルも死んでしまった。」伽椰子の話に皆シーンとする。

片田舎の農夫と農婦の恋は、時代の激動の中で悲しい悲恋として終わった。

「コレはガブリエルの立てたフルールの墓石なんです。

床石なのは、この上に自分のベッドを置いたからです。」伽椰子が解説する。

「まあ、じゃ恋人の墓石の上でガブリエルは寝ていたの!」「ロマンチック!」とフランソワーズやスタッフから溜息がもれる。

「ガブリエルはフルールをお姫様にする為に戦い続けたんですよ。なのに、彼女は自分を恨んで憎んで死んでしまった…ツラかったでしょうね、2人共。」伽椰子が話すと男性スタッフがコテで床石をさっそく剥がす。

「早く2人を結婚させてあげましょう!」総勢10人で床石をはがしていく。伽椰子が夢で見たベッドの形に。

床石の下は一面の固まった砂だった。それをスコップで少しづつどけていく。布で巻かれた人型が現れる。

ドッと皆が沸く。

「本当に!居た!恋人のフルールだ!」厚い巻かれた革を開くとすでに骨と布と枯れた植物の破片がまみれたフルールが現れた。

そっと用意した担架に革の袋ごと移し教会へと運ぶ。

祭壇の十字架の前へ。

伽椰子が自分が着た花嫁衣装を彼女の亡骸の上に置く。

「私からのプレゼントです。どうか着てお嫁に行って、ガブリエルとお幸せに。

彼はずっとアナタが気付くのを待ってたのよ。」とフランス語で語り掛ける。

十字架の後ろのステンドグラスから日が差し込み、まるでガブリエルが迎えに来たようだ。

フランソワーズとスタッフ、伽椰子は椅子に座り頭を垂れて祈った。

ジョンはずーーーーーっと撮影していた。


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