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湖城の悲劇  作者: たま


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13/18

20世紀の少女

1950年頃の城、大きな大戦の傷跡も残る城で真っ白のワンピースの少女が誰かに追われ逃げ惑う。どこへ逃げても壁をすり抜け天井から床からその深い赤毛のずぶ濡れの女は追いかけてくる。

粗末なネズミ色の服に裸足の娘。白いドレスが憎くてうらやましくて、悲しみ呪い追いかけてくる。

「私のために戦うと誓って戦場に行ったのに…ずっとずっと待っていたのに。なぜ花嫁を連れて帰ってくるの?

私が何か悪いことした?あなたを愛して待っていただけなのに。どうしてこんな仕打ちを受けなくてはいけないの?

ヒドいヒドいヒドい!人間じゃない!

地獄へ落ちれば良い!

アナタも花嫁も地獄へ落ちれば、良いのに…

私の命と引き換えにどうか彼らに悲劇を。

決して消えぬ悲劇を!」

白いワンピースの少女は恐れ慄いて城の塔から身を投げる。

「死んでも許さない!何度死のうと許さない!アナタも花嫁も!」

凄まじい怒りと悲しみと憎しみが身体の中に入ってくる。

伽椰子は汗でぐっしょりになって目覚めた。

ジョンが手を握ってくれていた。すごく心配そうな顔で。

「赤毛の巻き毛の女の子だった。名前は分からない。

遺体を見つけて名を呼んで白いドレスを着せてあげて!教会で式を挙げて!

ガブリエルはなんで彼女に事情を知らせてあげなかったんだろ?手紙を早めに出せば良かっただけなのに!」伽椰子はポロポロ泣く。

「宮廷の習わしなんて片田舎の農婦は分からないよ。

何よりガブリエルもその女の子も文字が書けないし読めないんだよ。日本の識字率が異常なんだよ。

手紙を書く習慣なんか無かったんだよ。」ジョンが話す。

「彼は会って話すつもりだったと思うよ。

でも、まさか着く前に彼女が自殺するなんて!

男は想像力が足りないんだ。

彼女が花嫁を連れた恋人の華やかな行列を見て、どんなに苦しみ惨めになるかなんて。

喜んで褒めて貰えるとばかり思っていたんだと思うよ。男ってバカだね。500年くらいじゃ変わらないよ。」なぜかジョンまで泣き出す。


ジョンはカメラを担いで城へ行った。

家で心配しながら待つのはツラい。赤毛の少女はこうやって何年も彼が帰るのを待ったのだ。

生きているのか死んでしまったのかも分からない日もあっただろうに。

仕事をしながら携帯も確認する。

「三船氏と少年が吐いて救急車で運ばれた。食中毒かと思われたが、愛人が部屋のトイレのドアノブを警察に調べてくれと頼んだ。やはり細菌がそこに居たらしい。

ちなみに愛人はビデのあるトイレを使っていたので無事だった。

少年は何とか回復したが、三船氏が昏睡状態だと。

しばらく2人共は入院する事になったと。」連絡が来た。

呪いも恐いが生きてる人間も恐い。

「でも反対に愛人と三船氏と玲くんは病院で命を狙われる事は無い。さすがに警察も本腰入れると思うし。」と送った。

携帯に写メった城の見取り図を見る。

夢の中で大広間を走って逃げる少女が、どこかの扉を開けると地下への階段が見えた。

必死に思い出す。

そこは、今は入館料を払う詰め所になってるような場所。扉を今と反対に開いてた。

「いや…違う!あれはフレンチドアだ。観音開きの扉なんだ。隣の壁が扉なんだ!今はドアノブが無くなってるだけなんじゃないかな?」独り言つぶやきながらラインを送る。

しばらくすると、返事が来た。

「ちょうどドアノブの位置に壁に穴が開いていたので、扉のドアノブを外して、そちらにハメたら開いたと。」周りの観光客も驚いている地下の階段の写メも送られてきた。

そこから連絡が途絶えたが、遠くサイレンが聞こえる。

伽椰子はホッとした。

その夜帰ってきたジョンから話を聞く。

「地下室降りたら重い鉄の扉が閉まってて鉄の棒を引き抜いたら扉の前に夫婦が倒れていたよ。

2人共生きてたよ。衰弱が激しいからそのまま病院へ救急車で運ばれたよ。良かった良かった。

なぜか見取り図から消したんだね。なぜたろう?」ジョンがあごを撫でながら考える。

「その奥へ行ってみた?夢の中では女の子が奥まで逃げるの。すると長い廊下の両側が全部鉄の扉で留置施設みたいだったの。

なぜかジョンの顔色が悪くなる。

「似たような施設に3年居たよ。そうかぁ〜造りは昔から変わらないんだね。それ以上奥は錠前の鍵が付いてたから入れなかったんだ。」と震える。

「それで警察は輝さんを連行したの?」伽椰子は聞く。

「いや、2人共意識不明だったからまだ何も。大体輝さんも驚いてたからね。男爵と僕で説明したくらいだよ。」伽椰子は頭を抱える。

男爵もジョンもヘボ探偵みたいだ。

嫌な予感がする。

「で、輝さんは親と病院行ったの?」伽椰子が聞く。

「いや、それが警察がなぜか止めたんだよ。城の方で待機しててくれって。本人は不服そうだったけど。」まだバロン探偵事務所よりは田舎警察の方がそこは優秀みたいだ。

とにかく生きてて良かった。ホッとした。

「赤毛の巻き毛少女の居場所は分かりそう?」伽椰子が聞く。

「実は…手がかりになりそうなモノは発見したんだよ!」ジョンがキラキラの目で撮影した画像を見せる。


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