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湖城の悲劇  作者: たま


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10/18

不吉

伽椰子は三船一族の前で顔を寄せて話し合うマルニ男爵とジョンを後から見ている。

やはりこの2人が居ると城が不穏な空気に包まれる気がする。

ジョンを連れて今すぐこの城から逃げ出したい!

がマルニ男爵が全く日本語が分からない。フランソワーズは、今までの遅れを取り戻そうと週末のバッカス祭の準備をペースアップしてる。

去年のボジョレーの余りをワイナリーから格安で提供してもらいワイン飲み放題と生演奏のダンスパーティーを催すのだ。

すでにチケットは完売してる。日本からも金土日で100人が観光に来る予定だ。

フランソワーズは伽椰子にも手伝って欲しそうだったが、あまりに夢が生々しくて伽椰子はジョンのそばを離れられない。


「ベッドは冷え切ってる。昨夜寝る前にどこかへ夫婦揃って出かけたのか?」長男夫妻のベッドを触りながらマルニ男爵がヒゲをさわる。

「息子くんに昨夜何時に出掛けたか?聞いてくれないか?」マルニ男爵に言われて長谷川先輩ジョンが息子の(てる)氏に聞く。

「城の中も土日で色々見学しおえたから、村の方へ遊びに出掛けたのは夕方かな?最終の観光バスに乗ったんだ。5時半かな?」息子の輝氏が答える。

「それより、まだ二日酔いで気持ち悪いんだ。警察にはもう話したし、少し寝たいんだけど。」大広間と同じ広さの真ん中を塞いでコネクトルームになっている。自分のベッドルームへ入って行った。

「では、私達も部屋に戻りますね〜男爵様。」長女と孫娘も去る。「玲が来なかったし心配だわ。私達も戻りましょう?」愛人にうながされて三船氏も「よろしく頼みましたぞ!」と言って去った。

「ジョンはどう思う?」マルニ男爵が聞く。

「クローゼットのコートがそのままなんですよ。なので城の外には出てない気がします。」クローゼットを見ながらジョンが話す。

「息子さんが最終バスに乗って村に出掛けた後、夫妻は城の中を散策していたのかな?私の部屋のバルコニーから観光客が帰る姿を見たが日本人は居なかった気がするんだよね。」ジルベールがあこひげをなでる。

「叔父さんは夜の巡回を昨夜から始めたじゃないですか?うろついてる人とか足音は聞きませんでしたか?」ジョンが聞く。

「息子さんが深夜にタクシーで帰ってきたと言ってたが、2回巡回したが、車の音も足音も聞いていないんだよ。本当に出かけたのかな?」ジルベールは息子さんの話を疑っているようだ。

「夕食のケータリングには、長男夫妻は出てたけど息子さんは、居なかったそうですよ。叔父さんの証言とは食い違いませんか?」ジョンはマルニ男爵が見過ごしたと思っている。

「私の目はふしあなじゃないよ、ジョン。確かに公務員で年金課だったが、仕事はそれなりに出来ていたからね。」ジルベールが少しムッとする。

2人のやり取りも気になるが、

目の端に塔の階段に何か一瞬動くものが見えた。

思わず伽椰子はそれを追ってしまった。塔の階段の中腹に少年が立ってた。愛人の子、玲くんだ。

「ねえ、このお城なんか変じゃない?僕には人の内臓の中に居る気分になるんだけど…いやだ、帰りたい。」ポロポロと泣き出す。

思わず伽椰子は抱きしめる。

「私も気持ち悪いのよ。この2日で急に城が生々しくなったみたいに。生き物みたいな感じよね?」伽椰子もやっと不安を吐露できて安堵する。

階段の踊り場には窓がある。

外は湖だ。切り立った山と山の谷間の川を大昔にせき止めて造った貯水湖だ。多分、この城が建つ頃にしたのだろう。

多分初代ガブリエルは、敵の攻撃から城を守るため出入りを一か所にして周りを水の要塞にしたのだ。

恋人はその出来たばかりの貯水湖に身を投げた?

「村に昨日ママとおじいちゃんと遊びに行ったんだ。

村は大昔は、この貯水湖の中にあったって。領主が湖にしたから村はココに移動させられたって村のおじさんが言ってた。ママとおじいちゃんとおじさんは仲良しみたいだった。」少年は、それで孤独を感じたのだろう。異国へ来て5日目でホームシックに襲われたのだろう。

「多分ホテルのステファンね。お母さんとおじいちゃんは2人だけで何度か旅行でここに来たことあるのよ。おかげで城への寄付をしてくれる事になったの。

廃墟のようになってたこのお城を蘇らせてくれたのよ。」経緯を話しても少年の孤独は収まらないかもしれないが…そう伽椰子も城に来て1月が過ぎてホームシックが来たのかもしれない。

とにかく場に慣れようと必死だった。

「お兄さんはイジワルだし、おじいちゃんとママは2人だけで楽しそうだし、なんで僕をここに連れてきたの?

もう帰りたいよ!学校行きたいよ!」そうだ5月だと学校だ。クラスメートの所へ戻りたいだろう。

大人の思惑でこんな異国に連れられて。

伽椰子も新婚だから、長谷川先輩が日本は居づらいだろうとフランスに来たが、特にフランスが好きな訳じゃない。

パリなんか歩いた事もない。

「私も日本に帰りたい。お嫁に来たけどお城は関係ない。長谷川先輩と日本で暮らしたい。」つい見知らぬ少年の前で本音が出る。2人で泣きたいだけ泣いて収まると恥ずかしくなって別れた。



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