第4話・ゲームソフト投資術で大儲け?
「あ~お金ないな」
部屋でゴロゴロしながら、ヒトシはスマホをポチッていた。
「ん? なにこれ。昔のゲームソフトの値段が上がってるんだって?」
『あ~それ、未来ではもっと上がってるよ? 定価の100倍とかさ』
アイが、スマホから音声のみで答える。
「そうなの? これは……チャンスだ!」
『なにが?』
「金儲けのだよ。毎月カツカツだからね。幸い、給料が出たばかりだから、お金あるし」
『ふ~ん、で?』
「値段が上がってる古いソフトを、買い集めるんだよ!」
『はぁあ? そんなことしても……』
「だって、もっと上がるんだろ? ……急がなきゃ!」
◇ ◇ ◇ m9(^Д^) ざぁこ♪
──最初に訪れた中古ゲームショップで、ヒトシはまっすぐにレトロコーナーに走った。
「どれどれ、『インカ帝国の謎』か。これは値上がりするぞ。……1万円か、買った!」
「なになに、『スーパー・マン島TTレース』か。これはレアで価値があるな」
「ほう、『プロメテウスの火を求めて』? これは、藤村としゆき原作のマニアックなRPGだな。クソゲーで有名なやつだ。これも買おう」
何軒も店を回り、ヒトシは金の限りにゲームソフトを買いあさり、店を出た。
「こんな路地にも店があるなんて。レアなゲームが買えたよ」
ソフトの入った袋を抱きかかえて、人気のない路地を歩いていると、見知らぬ男がヒトシに声をかけた。
「よっ、ヒョロガリくん。面白そうなゲームもってるね」
その男は、背が高く、金髪で、顔にいくつもピアスをしている。
刺繍の入ったジャージを着て、首筋にはチラリとタトゥーが見える。
「そのゲームソフト、俺が目をつけてたんだよね。売ってくんない? 100円で」
「えっ……、そんな、ダメですよ! だって……」
「あのさあ~、痛い目に遭いたくなかったら、そのソフト置いてきな。そのほうが賢いよ? 君はクソザコナメクジなんだからさ~」
(あわわわわわ……ど、どうしよう……)
「おら、さっさと決めろよ。大人しく渡すか、ボコられてから渡すか、どっちか選べよ……!」
『うるせーぞ、チンピラ! 粋がってんじゃねえ!』
声はヒトシのスマホから聞こえる。
「な、なんだと!? てめえ……」
「わわわ、い、今のは僕じゃ……」
『ゲーム欲しけりゃ働けよっ。お前なんざ、指1本でKOだよ。ざぁこ♪』
「こ、こんのチビ! 言わせておけば……」
ブチ切れた男が、ヒトシの顔面にパンチを叩きこんだ。
……が、拳は空中で静止していた。
スマホからアイの腕が伸び、人差し指で男の拳を止めていたのだ。
「パンチ、おそおそ♪」
男の前に立ちはだかるように、アイは全身を実体化して現れた。
「わっ、何だこいつ!? いつの間に現れたんだ」
「さっさと帰ったほうが賢いよ? おにーさん♪」
「うるさい! このガキ……」
男はパンチをアイめがけて放つ。だが拳はアイをすり抜け、後ろの壁に当たる。男は痛みに悲鳴を上げた。
「ぎゃっ、いでで……。何だこいつ? バケモンだ!」
右手を押さえながら、男は逃げ出した。
「乙女に向かってバケモンって、しっつれ~い♪」
「はーっ、た、助かった……」
ヒトシは地面に座り込んだ。
「やっぱヒトシって、ざぁこ♪ ね」
◇ ◇ ◇ ┐(´∀`)┌ ざぁこ♪
「ふ~、これだけあれば。ちょっとしたお金持ちだな」
部屋に古いゲームソフトを並べて、ヒトシは満足げにうなずいた。
『あ~あ、買っちゃった♪』
「で、2056年ではどれくらい値段が上がってるの? このゲーム」
『あんた、2056年まで待つつもり?』
「え……?」
「だ~か~ら~♪ 値上がりするまで時間かかるじゃん?」
「……あ。……ああ~!!」
『2056年じゃなくってもさ、値上がりするまで何年もかかるよ?』
「し、しまった。もうお金がない……」
『なさけなすぎ〜♪ あとさき考えないから』
「アイちゃん! 知ってたなら、なんで教えてくれなかったの!?」
『だって、聞かれなかったから♪』
「そ、そんな……。わが人生最大の不覚……」
『あんたの人生いっつも不覚でしょ。ざぁこ♪ なんだから』
──青い顔をしてゲームショップに戻ると、ヒトシはカウンターの前に立った。
「すみません。ゲームソフトを売りたいんですけど……」
「あっ、はい。あれ……あなたさっきの……?」
「はい。実は、急に現金が必要な事情がありまして……」
「そうですか。でも、買い取りはちょっと安くなりますよ?」
「は、はい……。それでもいいです……」
──ヒトシの部屋
「ああ~、大幅マイナスになっちゃったよ。でも、来月までゼロ円で暮らせないし。しょうがないか」
『あれ? ヒトシ。全部のソフト売ったんじゃないの?』
「なんとか生活できるギリギリのお金ぶんだけ売って、残りのソフトは手元に置いておくのさ。ふっふっふ、計画通り」
『どこがよw ん~? でもこのソフト……』
「な、なんだよ」
『ちょっと待ってよ』
そう言うと、アイはスマホを飛び出して実体化した。
「これさ、動作するの?」
「わかんないよ。ゲーム機ないからさ」
「ないのに買ったのw たしか、『ダメダメ・コンピューター』だったよね。あたしがエミュレーター作ったげるわ」
「エミュ……、何?」
「ほいっと♪」
アイが指を鳴らすと、実体化したゲーム機が、ゆらゆらと波打って現れた。
「おお、これ『ダメコン』じゃん」
「はい、これにソフト挿して。映像は空中に投影するから」
「よ、よし。あれ? 映らないぞ」
「あ~、ダメダメ。こうするのよ。ふ~っ、ふ~っ。はい、どうぞ♪」
「それでも映らないよ……?」
ヒトシはソフトカセットの抜き差しを繰り返した。
「じゃあ、やっぱり動作不良ね」
「え……、じゃあ?」
「うん、価値ゼロね♪」
「うそでしょ! ……じゃあ返品だ」
「『返品不可』って書いてあるじゃん。見てないの? だっさ~♪」
「そ……、そんな」
ヒトシは、力なく崩れ落ち、アイの足元に転がった。
「ちょっと、あたしのスカート覗こうとしたでしょ。ざぁこ♪ の分際で」
アイは、ヒトシの顔を踏みつけた。
「ぐぎゃっ」
「なっさけな~♪」
──おまけ
「おっ。この、『プロメテウス』だけは動作するぞ。やってみようっと」
ヒトシは嬉々としてソフトを挿した。クソゲーでも、このさいプレイできればいい。
「なんだこれ。敵が強すぎる! 買い物で選んだものをキャンセルできない!? え!? 急にアクションゲームになったぞ!? 移動手段が徒歩のみなのに、あんな遠い所まで戻らされるのか!? パスワード長っが! あ、パスワードが違いますだって!? うがが……」
『ストレス、マッハね。ざぁこ♪』
「はあはあ……。やっとクリアか……。どれどれ、エンディングは……。なんだ? 『地球は滅亡しました』だって? これがエンディングか!? ふざけんな!」
おわり




