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わからせ AI・アイちゃん ~スマホから飛び出す彼女に、人生をハッキングされる? ~  作者: 藤村 としゆき


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第2話・カラオケでハッキング?

挿絵(By みてみん)


「あっ、お婆さん、どうしたんですか? 急にかがみ込んで」


 ヒトシは、前を歩いていたお婆さんに声をかけた。


「どこか悪いんですか? そうだ、救急車を呼びましょう!」


 スマホを取り出すと、画面にはアイが表示されている。


「ちょっと、アイちゃん。邪魔しないでよ。はやく救急車を呼ばないと」


『ざぁこ♪ またお節介? よく見てごらんよ』


「え?」


 ヒトシは、かがんだお婆さんを覗きこんだ。


「なんだい。うるさいね。小銭を落としたんだよ!」


 お婆さんは小銭を拾っている。


「いや、てっきり具合が悪いのかと……」


「あたしを年寄り扱いするんじゃない!」


「す、すみませ~ん!」


 恥ずかしさのあまり、ヒトシは走り出した。


『は~、やっぱヒトシって、ざぁこ♪ ね』



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 バイトが終わり帰ろうとするヒトシを、バイトリーダーが呼び止めた。


「お~い、ヒトシ。明日、新人の歓迎会するからさ、来るだろ?」


「あ……、先輩。僕、明日は……」


「どしたの? ヒトシ。来るの? 来ないの?」


「……行きます」


「じゃあ、6時な」



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 ──居酒屋での歓迎会が終り、みなほろ酔い加減で店を出た。


「よ~し、じゃ、これから2次会行くか。ヒトシも来るだろ?」


「あ、先輩。2次会ってひょっとしてカラオケ……?」


「どしたの? ヒトシ。来るの? 来ないの?」


「あ……、行きます」


 結局、バイト仲間と新人で、ぞろぞろとカラオケに向かう。新人ひとりだけがはしゃいでいた。


 ────


「おっ、俺の番だな。よし、『ここで~、会った~が~100年ん目ぇ~♪』」


 ──絶妙な空気が流れていた。ヒトシを始め全員、先輩のあまりにひどい歌にうつむいていた。

 スピーカーは震え、鼓膜をキリで突かれるような歌声が、脳内に響いた。


「おいヒトシ、どこ行くんだよ」


「あ、ちょっとトイレに」


「お前、俺が歌ってる時ばっかにトイレ行くんじゃないか?」


「い、いえ、もう漏れそうなんすよ、先輩」


「ったく、頻尿かよ。うちの爺ちゃんみたいなやつだな」


 

 ──トイレに入ると、ヒトシは大きなため息をついた。


「は~、ひどい歌で頭がクラクラするよ。脳みそが揺さぶられて平衡感覚がおかしいな。いちおうオシッコしとくか……」


『三半規管、よわよわ♪』



挿絵(By みてみん)



「わわっ! アイちゃん。びっくりしたな、もう。オシッコがかかっちゃったじゃないか」


『きったなw で、あのひっどい歌、なんなの?』


「なんなのって、先輩の歌っていつもああなんだ。音痴なうえにひどい声でさ。そのくせ、マイクに口つけて大声で歌うんだ」


『誰か言ってやればいいじゃん。「ひどい歌」って』


「だって先輩だし。そうじゃなくても、言いづらいよ」


『言えないの? なっさけな~い♪』


「なんとでも言いなよ、もう」


『あたしが何とかしようか?』


「え?」



 ──トイレから帰り、ドアを閉めると、皆がヒトシを恨めしそうに見た。


「お、ヒトシ。次は俺の番だぞ。ちょうどよかったな」


(し、しまった。トイレに長居してしまった)


「お、始まった。『君と~の、日記は~、フルカラー~♪』ん? 誰か採点入れたのか?」


 全員が首を振った。だがカラオケの画面には音程バーが現れている。


「俺、これ苦手なんだよな。まあいい。『崖ぇっぷちの~、あ~ら~し~が~♪』」


 ──精神が削られて行く……。曲が終り、ヒトシたちは拷問のような時間から解放された。


「なんだこれ!? これが点数?」


 画面に映し出されたのは、『マイナス90点』だった。さらに、詳細な分析が表示される。


【あなたの歌は、とても下手ですが、そのくせ自己陶酔が激しく、周囲に迷惑です。世界平和のためにもカラオケはやめてください。ざぁこ♪】


 ──沈黙が流れた。どこかの部屋のカラオケの声が、聞こえてきた。


「お、俺。先に帰るわ。お前ら、あとは頼む」


 先輩がドアを閉めると、全員、はーっとため息をついた。嬉々としてカラオケを再開し、次々に選曲した。


「次はヒトシも歌いなよ。タンバリンばっか叩いてないでさ」


「そうよ。ヒトシくんの歌、聞かせてよ」


「そ、そう? じゃ、歌っちゃおうかなー」


 ヒトシが選曲し、番が来るとマイクを握った。


『目がさえる夜は睡眠薬♪ 今日は何粒いこうかな~♪ 今は眠剤、うざい、お惣菜っ♪ 東西っ、うざい、財務は健在っ♪』


 ────歌が終った。


「あ~、カラオケ歌うと、すっきりするね。あれ? みんなどうしたの?」


 ヒトシ以外の全員は、仏像のような表情になっていた。

 ある者は虚空を見つめ、ある者は悟りを開いたような表情だ。新人は、タンバリンを持ったまま石像になっている。


「お、俺、先に帰るわ」


 バイト仲間の1人が立ち上がった。


「あ、私も用事が……」


 ひとり、またひとり、そして誰もいなくなった。……ヒトシ以外は。



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 ──ヒトシは、部屋で寝そべりながらスマホを覗いていた。


「ねえアイちゃん。あれ以来、先輩がカラオケ行かなくなってさ~」


『ふーん。よかったじゃん』


「よくないよぉ。僕もカラオケに誘われなくなっちゃったよ!」


『残当っしょw へたっぴ♪ のヒトシには』


「やだよ。僕、ぼっちになっちゃうじゃん!」


『今でも十分ぼっちだよ?』


「そこまで言う?」


『はいはい。ほら、あたしのアプリでカラオケの練習もできるからさ』



 ──かくして、ヒトシは壁ドンにおびえながら、カラオケの特訓を始めるのであった。


※ちょっと実話が入ってます。

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