07 勇者 VS 魔王
「覚悟しろ大食い魔王ッ! フレイムバーストッ!」
「うぎゃああああッ!」
「そのような攻撃では私に傷一つつけられませんよ。覚悟なさい、ストロベリープレッシャー!」
「ぐええええええッ!」
俺の制止を振り切り、二人は戦いを始めた。
「まだまだぁ! アイスニードルッ!」
「ぐふうううううッ!」
「ふふ、甘いわッ! アップルホールドー!」
「ぴぎいいいいいッ!」
なんだかよく分からない魔法の応酬。
「テメーらいい加減にしやがれええええッ! なんで二人とも俺を盾にしてんだよッ!」
「あんたが勝手に割り込んできたのがいけないんでしょ? そこをどきなさいよね!」
「ナイト、悲しいけどこれ戦争なのよね。退くことなどできませんッ!」
奇しくも両者と知り合いになった俺は、もしかしたら争いをやめさせられるんじゃね?
なんて思って止めに入った結果がコレですよ。
イヤになってしまいますね、全く。
「もう勝手にしやがれ!」
俺はボロボロになりながらも、なんとかその場から離れる。
全く、こいつらは一体何なんだよ。
勇者と魔王?
因縁の対決?
いや、こんな平和そうな村で最終バトルなんてどう考えてもおかしいだろう。
村人は、どっちが勝つか賭け始めてるし。
「シャルノちゃんがんばれー!」
「クレア様ー、ふぁいとおおおー!」
そんな和やかな声援が飛び交う。
勇者と魔王の一戦というのが嘘のように平和です。
まるで格闘技の試合を見るかのようなお気楽さ。
「これで終わりです、サンダーボルトォ!」
「なんのこれしき、グレープドロップ!」
数十分経過しただろうか。
二人は依然として戦い続けている。
よく疲れないなー。
「なあ、二人っていつもあんな感じなの?」
「そうニャ!」
ペタンと座って猫のように顔を洗っているレミエルの横に座ってみた。
「止めないの?」
「ニャ? 止める必要なんてないニャア! どうせもうすぐ終わるニャ!」
こんなのいつものことよ、と言わんばかりの態度だ。
一体、勇者と魔王の間に何があったのだろうか。
「まだまだいくよー、アースクエイクッ!」
「やったなー、ピーチフラッグ!」
二人は、ほぼ互角。
とても終わりそうには見えなかった。
しかし、突然、二人は動きを止めて笑い出した。
「やるわね魔王! 勝負は次回に持ち越しよ!」
「ええ、勇者もなかなかでした」
そういって、お互い反対方向に歩き出し、なにやらごそごそとし始めた。
ポカーンとして見ていると、レミエルが徐に立ち上がる。
「さあ、ナイトっちも準備するニャア!」
「準備って何の? 俺はもう戦わんぞ」
「エビフライ祭りの時間ニャア!」
バケツを手渡される俺。
そういやそのために来たんだったっけ。
「え、えっと、もしかしてエビフライ祭りのために一時休戦したのかあいつら」
「そうニャ! 当たり前ニャ! お祭りは戦いよりも大事ニャ!」
この世界の常識って一体何なんだろう。
俺は深く考えないようにした。
そのあとは、火傷したりしながらなんとか大量のエビフライをゲット。
シャルノはまたも大量のエビフライを一口で平らげる。
「うーん、エビフライ最高ー!」
「最高ニャア!」
幸せそうに食べるこいつらを見てると、なんだか俺まで幸せな気分になる。
そんな中、クレアが命がけで手に入れたエビフライを村の子どもたちに分けていた。
「う、嘘だろ?」
俺は思わず声に出してしまった。
あの傍若無人なクレアがそんな善人みたいな行動を取るなんて。
まるで勇者のようだ。
しかも、その横ではミルフィがエビフライ祭りで負傷した村人たちの治療をしている。
物凄い怖い顔で。
「どうしたの?」
「あ、いや、勇者が勇者らしい行動していて驚いただけだよ」
そういうと、シャルノが少し不満そうに頬をぷくーっと膨らませて見せた。
「なあ、どうして勇者と争ってるんだ?」
「たこ焼きです」
「はい?」
意味がわかりません。
「私が勇者のたこ焼きを食べてしまったんですよ」
聞かなければよかった。
なんというしょうもない理由。
子どものケンカかよ。
いや、現に子どもか。
そりゃ、誰も止めないわけだわ。
くだらなすぎて泣けてくる。
「じゃあさ、このエビフライを持って謝ってこいよ」
俺がシャルノにエビフライを手渡す。
「え? でも……」
顔を赤らめて恥ずかしそうにしているシャルノ。
「わかりましたっ! 行ってきます!」
少し考えてから、笑顔でかけていった。
めでたしめでたし。
と、思いきや。
「ハーッハッハッハ! 貴様のエビフライはいただいたッ! 返してほしければ三千万用意しろ!」
突如現れる仮面の男。
シャルノが持って行ったバケツ一杯のエビフライを奪い、高笑いをしている。
一体、コイツは何者なんだ!?




