06 俺の知ってる回復魔法と違う
「うがあああ。腹が、腹が痛いいいいいッ!」
俺はその夜、強烈な腹痛で転げまわっていた。
女の子の家にお泊り。
もっと素敵なイベントを期待していた俺がバカだったようです。
「どうしました、ナイト。大丈夫ですか?」
俺が叫び狂っていると、シャルノが心配して駆けつけてくれた。
悶え苦しむ俺の頭を優しく撫でるその姿はまさに天使そのものだった。
「はぁはぁ、シャルノ、なんだかとってもお腹が痛いんだ。俺はもうダメかも……ぐふっ」
「しっかりして。すぐに治療しますから!」
そう言って、俺の手をぎゅっと握ってくれた。
なんだか力が湧いてくるようなそんな気がした。
「ぐああああああああああッ! 痛いッ! 痛いってえええええ。何、ちょっと待って。おかしいって。俺、病人なんだよ? これは何をやってるんの? もうやめてえええええッ!」
「回復魔法です、大人しくしてください。レミエル、ナイトが暴れないようにしっかりと押さえつけて」
「はいニャ!」
か、回復魔法?
俺の知ってる回復魔法と違う。
なんかぶっとい待ち針のようなものが腹の辺りにグサグサと刺されていく。
正直、もう俺は殺されるんじゃないかと思った。
「ハァハァ、なんとか助かったあ」
「ご無事で何よりです。慣れない回復魔法を使った甲斐がありましたね」
朝になり、ようやく痛みも治まってきた。
腹の痛みよりも治療の痛みのほうがヤバかった気がするけど……。
「にしても、なんだったんだよ。急にあんなに腹が痛くなるなんて……」
「魚です」
はい?
「ナイトが食べた魚。あれ、ポイズンフィッシュと呼ばれる毒を持つ魚なんですよ」
「あー、それでか。なんか毒々しい色してると思ったんだー。っておいいい、ちょっと待てえええ! なんで毒と分かってて食べさせた? おかしいよね? 俺を殺す気だったの? ねえ?」
「ごめんなさい、有名な魚なので当然知ってるもんだと思ってました」
どうやら、ポイズンフィッシュに毒があるというのはこの世界では常識らしい。
それを知らずに食べた俺は、生死を彷徨い一晩苦しみ続けたというわけだ。
「まぁ助かったから良かったけどさ。こんなんで死んだらしゃれにならんで」
「よく生きてましたね。凄いです!」
なんて他人事!
お前が調理して差し出したくせに!
「そもそも、お前やレミエルも食べてただろう。なんでケロッとしてんのよ」
「私魔王ですし」
なんだそりゃ答えになってるのか?
魔王なら毒を食べても平気だとでも言うのかよ。
そもそもシャルノはガチ魔王なの?
「ならレミエルはどうなんだよ。あいつは別に魔王ってわけじゃないんだろ?」
「ポイズンフィッシュを食べ続けることによって耐性をつけたのです」
なんで毒を食べ続けるんだよ、おかしいだろ。
「いやいや、耐性をつけるも何もそこまでして食べる必要ないだろ。毒なんだぞ」
「にゃはは! わかってないニャア! 魚は美味しいニャ! 毒があろうとなんだろうと食べなきゃ損なのニャ!」
アホだ、こいつ絶対アホだ。
「はー、とりあえず少し寝ようか。昨日は全然眠れなかったし」
「ダメです」
え?
「もう時期、エビフライ祭りの時間です。急いで支度しないと間に合わなくなりますよ」
「いやいや病み上がりだし、そんな脂っこいものを食べる気分じゃないよ」
から揚げの次はエビフライですかそうですか。
全くこの世界の食文化は一体どうなってやがるんですかね。
「月に一度しか食べられないんですよ? 気分とかそんなこと言ってる場合ではありません!」
「そ、そんな真剣な表情で熱弁されましても」
こいつは頭の中は食べることしかないのだろうか。
「それに私、毎日、『天の恵み』を食べないと死んでしまうんです」
「天の恵み? 空から降ってくる料理のことか?」
「そうです」
死んでしまう、の意味がよく分からない。
まあ、ただの口実なんだろうけど。
「ったく、しょうがねえなあ。何度も助けてもらってるし、そのエビフライ祭りとやらに行こうぜ」
「はい、ではドラゴンを召喚しますね」
え?
ドラゴンって、昨日のチビドラゴン?
「なあ、やっぱり俺行くのやめ……」
「それでは、エビル村までレッツゴー!」
「ぎゃあああああああああッ!」
そしてまた、ドラゴンブレスに乗って空を飛んでいく。
着地方法は、知らない。
もう勘弁してください。
「うぐぅ、いてててて。もう少しマシな移動方法ないのかよ。勇者は移動魔法使ってたぞ……」
「移動魔法は勇者のユニークスキルですからね。魔王が使えるわけないじゃないですかー」
だからって、こんな危ない移動方法はイヤだ。
帰りは時間があるだろうし、ゆっくりと帰ろうそうしよう。
「待ってたわよ! 魔王! 今日こそ決着をつけてやるんだから! あ、ナイト? なんであんたもここに? ちょっと、私から逃げただけじゃ飽き足らず魔王の傘下に入ったわけええ?」
エビフライ祭りの準備をしていると、どこからともなく現れた勇者クレア。
こんな生活、もうイヤだアアアアアッ!




