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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第一章 俺の知ってる異世界と違う
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08 正義の味方グレート仮面

「我こそは正義をこよなく愛する男。グレート仮面ッ! エビフライを返して欲しければ三千万用意しやがれってんだ!」


 仮面の男がマントを翻しそんなことを言う。


「正義の味方がどうしてエビフライを奪ったりお金を要求するんですかね?」

「さあ? アホなんじゃないかニャ?」


 だよな。

 レミエルにアホって言われるってことは相当アホだ。


「ど、どうしましょうナイト。私三千万なんて大金持ってないですよ」


 涙目になりながら、こっちに駆け寄ってくるシャルノ。

 あ、ここにもアホがいた。


「いや、払う必要ねーし! たかがエビフライだぞ?」

「はっ! 確かにそうですね。三千万あれば黄金プリンが買えてしまう値段ですもんね」


 黄金プリンたけえ。


「おい、貴様らァ! 我を無視するとはいい度胸である! この印籠が目に入らぬか!」


 どこのご隠居様ですかね。

 この世界の印籠など見せられても怖くもなんともないんだけど。


「あ、あれは……!」

「知っているのか雷電!」

「雷電って誰よ! あの印籠は、悪の秘密組織オリバーのものよ! その存在は都市伝説とされ、本当に存在するかどうかも疑わしい謎の組織なの」


 クレアが驚いた表情で語る。

 もしかして、あの頭が悪そうな仮面の男は実は相当な危険人物なの……か?


「ふふふ、我の正体が分かってもらえたかな?」

「いや、全然」

「何ィ!?」


 仮面の男は自信満々な表情だ。

 といってもおかしな仮面のせいで表情なんて見えないけど。

 そんなことよりいい加減、屋根から降りてきてくれないかなあ。

 首が疲れちゃったよ。


「オリバーって何? つーか、存在も疑わしい謎の組織なのになんで印籠が知られてるの? もうわけがわからないよ!」

「あーもう! 問答無用! さっさと三千万寄越しやがれってん……あ、うわああああ」


 仮面の男が苛立ちながら地団駄を踏む。

 そして、バランスを崩して屋根から落ちてきた。

 詰め寄るシャルノたち。


「いててて、はっ! 待て! 話せばわかる! いや、やめて、ちょ……アーッ!」


 




「それで、エビフライなんかを取って一体何をしようとしたんですかね」

「ご、ごめんなさい。ボクの母さんが病気なんだ。治療するためには大金が必要で……それで……」


 仮面をはぎ取られ、両手を縛られた少年が涙を流しながらそう語る。


「うぅ、なんていい話なの! 私がお金を用意してあげるわ。大丈夫、勇者だから人の家に忍び込んでタンスやツボからお金を集めるくらい容易いことよ!」


 明らかなお涙ちょうだい話なのにクレアは心を打たれたのか、目を潤ませている。

 なんかさらっと泥棒宣言してるけど、ツッコミを入れるべきなのだろうか。


「待ってください。この人の言うことを信用するんですか?」


 完全に信じ切ってるクレアのほうを見て、シャルノが冷静に言った。

 俺もこの男は信用できないと思う。

 なんていうか、ただひたすらに怪しい。

 そもそも悪の組織なのか正義の味方なのか設定に無理がありすぎるし。


「人を信じられなくなったら終わりよ! 勇者は人を信じて生きていくの!」


 クレアが良いことを言ってるけど、全然説得力がない。

 俺を力ずくで捕まえようとした横暴な勇者が何を言うって感じだよね。


「ほ、本当なんです。お願いです、信じてくださいッ!」


 自ら信じてくださいって言い出すやつほど信じられないものはない。

 かといって、疑惑があるだけでこのまま拘束しておくのも気が引ける。


「よし、じゃあその病気の母さんとやらに会いに行くか」

「え、えっと、それは……無理です」

「なんで無理なんだ? やっぱり嘘だったのか? ああん?」

「い、いえ、そうじゃなくて……えっと、その、こっから遠いんですよ! 片道だけで三年はかかっちゃいますよ!」


 取ってつけたような言い訳だなおい。

 だが甘いな。

 こちらには勇者がいるんだぞ。


「大丈夫、勇者の移動魔法でひとっ飛びだから、な?」

「ええ、場所はどこなの? 早く行きましょう!」

「えっ! いや、無理です無理無理! ほら、悪の組織オリバーのアジトなんで、場所をバラしたら殺されてしまいます!」


 ほう、なかなかうまい言い訳を考えたものだな。

 そもそも悪の組織っていうのすら疑わしいけど。


「言わなきゃこの場で殺すがよろしいか」

「そ、そんなっ! や、やめてください。死にたくない。助けて勇者様ぁ!」

「ちょっとナイト、見損なったわ! こんなイケメンが嘘をつくわけないじゃない!」


 え、俺が悪いの?

 てか、俺を牢獄に捕まえた時のクレアの真似をしてみただけなんだが……。

 そもそもイケメンだからといって嘘をつかない理由にはなりませんが。


「ライアン! あんた何やってんの!」


 そんな言い争いをしていると、突然外から四〇代くらいのおばさんがやってきた。


「か、母ちゃんっ!」


 少年が叫ぶ。

 どうやら、仮面男の母親らしい。

 やっぱり病気じゃなかったようだ。

 そして、仮面男をフライパンのようなもので何度も小突く。


「いて、いてええ。ごめん、ごめんよ母ちゃん。もうしないから許してええええ」

「許すもんですか、あんたって子は! いつもいつも嘘ばっかりついて周りに迷惑かけて!」


 どうやらこの少年、エビル村の住人らしい。

 なんでもっと早く教えてくれなかったんだ。

 

「ライアン、なんでこんなことしたんだ?」

「言えません。シャルノちゃんとお話したかっただけなんて口が裂けても言えませんっ!」


 言っとるがな。

 こうして、謎の仮面男は親御さんに引き取られエビフライも無事に帰ってきたのだった。

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