04 勇者からは逃げられない
「見つけたー! 総員確保じゃあああああッ!」
「えっ!? ちょ待っ……うわああああッ!」
から揚げを食べながらおじさんと談笑していたその時だった。
突然、大量の兵士と共にクレアがやってきた。
俺は為す術もなく捕まってしまう。
そして、城の牢獄へと放り込まれた。
「おい、何しやがるんだテメー。捕まるようなことなんて何もしてねえだろ!」
「勇者である私から逃げた罪よ!」
そんな無茶苦茶な。
「俺は悪くない。無罪を主張するッ!」
「へぇ? そんな強気な態度を取っていいと思ってるんだ? その気になれば死刑にだってできるのよ?」
不敵な笑みを浮かべるクレア。
やはり俺の知ってる勇者とは何か違う。
どう見ても悪人です、本当にありがとうございました。
「ごめんなさい、ここから出してください。お願いします」
「ふふ、良いわよ。私の壁として働いてくれるならね」
なんだそりゃ。
強制かよ。
せっかく俺がジャンピング土下座で頼んでるっていうのに。
「イヤだと言ったら?」
「んー、このまま冷たい牢獄の中で一生を終えることになるだけよ?」
おい、誰かこの勇者を取り押さえろッ!
横暴すぎだろうが!
どうしよう。
このまま牢獄暮らしなんてイヤだ。
けど、こいつにこき使われるのはもっとイヤだ。
城の厳重な牢獄。
簡単に脱獄できそうな場所ではない。
仲間になると見せかけて逃亡するというのはどうだろうか。
そんなことを考えていると城の警報が鳴り響く。
「ちょっと、何があったのよ?」
「はっ、この城に何者かが侵入した模様です!」
クレアと城の兵士が何やら険しい顔して話している。
「仕方ないわね、ちょっと見てくるわ。しばらく、大人しくしててちょうだい」
そう言って、俺の前から立ち去るクレアと兵士たち。
俺は、なんとか脱走できないかと頭をフル回転させる。
まずは、この金属の柵だ。
思いっきり力を入れてみる。
びくともしない。
……ダメか。
窓が一つある。
だが抜け出すにはあまりにも小さすぎる。
手を出すのがやっとだろう。
ふむ、困った。
「よし、諦めよう」
人生諦めが肝心だ。
俺は、あの性悪女の言いなりになって魔王と戦わされてあっけなく殺されてしまうのだ。
ああ、なんて不幸なのだろう。
こんなことなら、大人しく地獄へ行ったほうがマシだったかもしれない。
などと考えていたちょうどその時だった。
物凄い爆音と共に牢獄の壁が破壊される。
そして、俺もその爆発に巻き込まれてぶっ飛んだ。
「いってええええ。一体何が起こ……」
「にゃはっ! 助けに来たニャアッ!」
黒っぽいローブに身を包んだ猫耳の女が立っていた。
こっちを見ながらなにやらニコニコしている。
「ニャニャッ!? 怪我されてますね、大丈夫ですかニャ?」
「この怪我はテメーが躊躇なく牢屋ぶっ壊したせいだろうがっ!」
「これは、失礼しましたニャ。でも、今は時間がないニャ。早く出るニャッ!」
そういって、俺の身体をひょいと持ち上げて担がれた。
おう、猫娘さん意外と力持ちー。
って、そんなこと言ってる場合かッ!
こいつは、仲間なのか?
それとも、この前、大量に死んだネコの怨霊か何かか?
助ける振りして俺を殺したりしないよな?
まあ、このまま牢獄暮らしするよりはマシか。
もうどうにでもなれってんだ。
「ハァハァ、なんとか逃げ切れたか」
「にゃははっ! あたしが助けに来たんだから当然ニャ!」
追いかけてくる兵士を振り切り、なんとか小高い丘までやってきた。
「ありがとう、助かったよ。俺はナイト、よろしくな!」
「あたしはレミエル。よろしくさんニャア!」
しかし、いくら猫耳だからって語尾に『ニャ』は狙ってるのだろうか。
「なんで俺なんかを助けてくれたんだ? 一歩間違えば命を落としかねないだろうに」
「ボスの命令ニャ! なんでも命の恩人だから助けてこいって言われたのニャ! 面倒だって断ったんだけど、夕飯に魚を食べさせてくれるっていうから手を打ったニャ!」
俺が命の恩人?
何かの手違いじゃないだろうな?
それにしても、魚程度でこんな危ない橋を渡るなんて何を考えてるんだコイツは。
「レミエル、ご苦労様でした」
「お安い御用ニャア!」
奥から出てきた少女。
その顔を見て、ハッとした。
「あ、妖怪から揚げ食い少女!」
「なんですかそれ?」
町はずれに住むという大食いの少女シャルノ。
どうやら彼女はから揚げのお礼にと俺を助けてくれたらしい。
部下も部下ならボスもボスだな。
たかが食べ物で命をかけるなんて考えられん。
「なあ、勇者とこの国を敵に回したことになるが大丈夫なのか?」
「大丈夫です、問題ありません。元から私の敵ですから」
「どういうこと?」
「あれ、知らないかったんですか? 私、魔王なんですよ」
少女は、無邪気な笑いながらとんでもないことを言い放ったのだった。




