21/26
■第20話:境界線
扉の前で、二人は止まる。
わずかな静寂。
だがその奥に、確かな“何か”がある。
「行くの?」
カナの声は小さい。
けれど逃げてはいない。
不安と覚悟。
両方が混ざっていた。
レイは振り返る。
少しだけ、柔らかい目で。
「ここにいても、何も変わらない」
それは、ずっと感じていたこと。
閉じた世界。
管理された空気。
与えられた安全。
——それだけの場所。
「だから、確かめる」
カナは数秒、黙る。
そして、小さく笑った。
「……だよね」
手が、重なる。
「一人じゃないなら、行ける」
レイはうなずく。
ゆっくりと、扉に手をかける。
冷たい金属の感触。
力を込める。
——開く。
光。
だが、それは知っている光じゃない。
歪み。
揺らぎ。
形を持たない“外”。
「……これが」
言葉にならない。
でも、確実にわかる。
ここは——今までの世界じゃない。
未完成の空の、その外側。
境界を越えた先。
レイは一歩踏み出す。
カナも続く。
その瞬間、背後の扉が静かに閉じた。
もう戻れない。
それでも——
二人は、前を向いていた。




