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■第18話:小さな反抗
それは、ほんの些細な行動から始まった。
監視カメラの死角を歩く。
ログに残らない経路を選ぶ。
小さな違和感を、見過ごさない。
レイとカナは、ゆっくりと動き始めた。
「派手にやったら終わりだ」
「うん……少しずつ、ね」
端末の記録、保守ルート、非公開区画。
点と点を繋ぐように、情報を集める。
その中で、同じような“気配”に出会った。
視線を逸らす者。
言いかけてやめる者。
そして——一人の男。
「……気づいてるんだろ」
低い声だった。
レイは黙ってうなずく。
男は苦笑した。
「やめとけ。深く行くな」
「どうして?」
カナが問い返す。
男はしばらく沈黙し、やがて言った。
「知ったら……戻れない」
軽い言葉じゃない。
実感がこもっていた。
「ここはな、“知らないことで成立してる世界”だ」
レイは目を逸らさない。
「それでも、行く」
男は肩をすくめる。
「……好きにしろ。ただし——」
一歩、近づく。
「途中でやめるなよ」
その言葉は、警告ではなく覚悟だった。
レイは小さくうなずく。
もう、止まる気はなかった。




