17/26
■ 第16話:選ばれた理由
夜。
人の気配が少ない通路で、レイとカナは足を止めた。
昼間と同じ場所なのに、夜になるだけで別の空間みたいに感じる。
静かすぎる。
「……なあ」
レイが壁にもたれながら言う。
「なんで開いたんだろうな」
あの扉のことだ。
触れてもいないのに、勝手に解錠された。
一度じゃない。
何度もだ。
「偶然じゃないよね」
カナもゆっくり答える。
不安そうな目で、通路の奥を見る。
誰もいない。
でも——見られている気がする。
そんな感覚だけが残る。
「俺たち、入れるようにされてたんじゃないか」
レイの言葉は、半分冗談のようで、半分本気だった。
カナは少し黙る。
そして、小さく言う。
「……誰に?」
その一言で、空気が少し重くなる。
答えはない。
でも、何かが動いている。
このコロニーの中で、
見えない“誰か”が。
「試されてるのかもな」
レイはそう言って、少しだけ笑った。
強がりだった。
本当は——怖い。
知らないままでいれば、楽だったかもしれない。
でも、もう戻れない。
カナも同じだった。
「……それでも、進むんでしょ」
確認するような声。
レイはうなずく。
「ああ」
短い言葉。
でも、それだけで十分だった。
止まらない。
もう、気づいてしまったから。
未完成の世界の中で、
何かに選ばれた理由を——確かめるために。




