39.たった15分電車に乗っただけで、めちゃめちゃ都会だった
「ごめん。」
うまく人混みをかわせずに、桜庭さんの後をついていくのが難しい。
こんなに人がいっぱいなんて、目が回りそうだ。
よく考えたら、東京ってこんなところだって思ってたのに、大学の周りがあまりにも穏やかで静かだからすっかり忘れていた。
「師匠、大丈夫?もしかして乗り物酔いとかする?」
「いや、ごめん人に酔ったかもしれない。この駅に降りるのは、初めてなんだ。」
うまく人を避けきれず、すみませんと謝りながらよろよろ歩く俺を見て、
「うふふ。大学の周りしかいなかったら、ここはちょっとびっくりしてしまうかもしれないわね。」
そう言って、桜庭さんは優しく笑った。
「でも、ここにはとっても素敵なカフェがいっぱいあって、おいしいデザートを提供しているお店がいっぱいあるの!師匠、お菓子作りが好きだって言ってたから、絶対に勉強になるし、楽しめると思うよ!」
この街が好きなんだろう。
桜庭さんの声は、楽しそうに弾んでいた。
「ゆっくり歩くから、頑張ってついてきてね。駅から歩いて5分ぐらいのところにあるから、すぐ着くよ!」
さっきよりゆっくりとしたペースで歩いてくれて、これなら見失うこともなさそうだ。
「ありがとう。助かるよ。」
駅を出て、メイン通りから横道に入り、少し歩くと大人の雰囲気な静かな感じになった。
東京は、不思議だ。
「少し路地に入るだけで全然違うんだな。」
「そうなの!大人の隠れ家みたいなカフェとかもいっぱいあるんだよ!」
「そうなんだ。」
ちょっと興味深い。
桜庭さんは、
「駅は、賑わいすぎだけどね。」
ぺろっと舌をだす。
田舎もんまる出しの俺のことをバカにしないで、にこやかに相手してくれて、桜庭さんはとても話しやすいな。
でも、倉島相手のように、『師匠はやめろ』とは、さすがにいいづらい……この先ずっと師匠と呼ばれるのだろか…恥ずかしい……はあ……
「師匠、着きました。このお店です。」
フランス語で書かれていた店名は……
うん、後で考えよう。
読めん!
桜庭さんが先頭で、戸を開けると、カランカランと少し鈍く明るすぎない、ちょっとカウベルを思い出すような、かわいいおしゃれな音がした。
「こんにちは。」
桜庭さんが、そう声をかけると、顔見知りのようで、
「いらっしゃいませ。美希ちゃんちょっと待ってて。呼んでくるね。窓際の奥の席ね。」
そう言い残して、カウンターへと戻っていった。
「師匠、明人さんが席予約してるって言ってたから大丈夫だよ。」
こっちこっちー!と言って、俺を窓際の1番奥の席とを促す。
そのテーブルにはリザーブドと書かれたプレートが置かれていた。
すると、そこへ
いらっしゃいませ。ようこそ。
丁寧に頭を下げ挨拶をしてくれる1人の男性が、テーブルの前に現れたのだった。




