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プリンとキス  作者: 雲母あお


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38.移動中

大学の最寄駅から、電車に乗り込んだ。

夏休みなこともあって、電車は空いていた。

それでも、席は空いていなくて、吊り革に捕まって並んで立った。


「レシピをもらったその日のうちに作って、彼氏に食べてもらったの。そうしたら、とっても喜んでくれて、とっても嬉しかったんだ。それで、お礼に戸ノ岡君にも渡そうと思ってラッピングして次の日持っていったんだけど、会えなくて。その後、さらに機会を逃してしまっていたの。お礼が遅くなってしまって、本当にごめんなさい。」


「そんなの気にしなくてよかったのに。でも、ありがとう。気持ち嬉しかった。それに、俺も一発芸のとき、受け取ってもらえて嬉しかったから。」


俺がそう言うと、桜庭さんは、ふんわりと笑った。

なんだか、それが嬉しかった。




俺は、遠慮ばかりしてきたけど。

俺なんかがもらっていいのかなんて、ずっと考えてきたけど。

あまり人から物をもらったことなくて、どうしていいかわからなかったけど。



でも、ゼミの飲み会の一発芸で、自分が用意した物を、受け取ってもらう嬉しさを知ったんだ。


作ってきたものを嬉しいと言って受け取ってもらえる嬉しさを知ったから……


だから今日、きっと桜庭さんも、こんな僕でも受け取ったら嬉しいって思ってくれるんじゃないかって思えたんだ。


そう思えるようになったのは、一発芸を頑張れたから。

そして、頑張れたのは、一発芸の相談に一生懸命になって考えてくれた、かのこさんのおかげだ。


そして今日は、その経験を生かして、素直に受け取れて、桜庭さんの嬉しそうな顔を見ることができた。


あー、なんか俺もかのこさんにお礼が言いたくなってきたな。


今日クッキー喜んでくれるといいな。

また、『なんで?私何もしてあげられてないのに』って言われちゃうかもしれないけど、それでも、この気持ちを伝えたい。


いつものお礼ですって、感謝の気持ちを伝えることにしよう。


ありがとう


かのこさん


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