↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンとキス  作者: 雲母あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/43

33.俺ん家で飯食ってけよ

大学の図書館が、夏休みも開館していて助かる。


エアコン完備だし、レポートで必要な資料も大体あるし。

今日も朝から、レポートの宿題に取り組んでいると、一人の男が目に入った。

それは、図書館に全く似合わず存在が浮きまくっている倉島だった。

目立ってどうしても視界に入ってしまう。


倉島!ここは図書館だから、鼻歌歌いながら歩いてくるな!!

小さい声でも、静かだから響いてるって!!


俺が、身振り手振りで訴えるものの、まったく伝わらず、鼻歌まじりにこちらに向かって歩いてくる。


「よぉ!戸ノ岡!お前もレポートやりに来たのか?」


そう言って倉島は、俺の隣に座った。


「なんかお前、図書館に似合わないな。というか、歌いながら歩いてくるな。ここは図書館だぞ。」

俺が正直な感想を述べると、倉島は、ニカッと笑って、

「悪いおかん。お前見つけて嬉しくなって、無意識に鼻歌歌っていたか。気をつけるぜ!」

と、素直に認めるのだった。



俺に会えて嬉しいって、なんかちょっと喜んでいる自分が、少し恥ずかしい・・・



なんだかんだ倉島が、結構真面目にレポートに取り組んでいて驚いたけど、友達(友達って言っていいよな?)と一緒に勉強とか、なんか入学したての時に憧れたシチュエーションだなとか、心の中で、ネガティブ俺が顔を出す中、ちょっと嬉しく感じていたりした。


なんだかんだ俺も集中できて、レポートを一つ終わらせることができた。

本を書棚に戻して、席に戻ってくると、倉島も書き終えたようで、伸びをしながら満足げな顔をこちらに向けた。



「ひと段落ついたか?」

倉島に聞かれて、

「ああ。一本レポート終わらせたよ。」

「すごいな!俺も頑張ったぜ!」

ピースしながら、いつものようにニカっと笑うと、レポート用紙などをカバンに片付け始めた。

「確かに頑張ってたな。」

俺がそういうと、嬉しそうな顔をした。


俺も、机の上に出していた筆記具をカバンにしまうと、倉島と図書館を後にした。



校門へ向かって歩いていると、

「戸ノ岡、今日これから時間あるか?」

「ん?なんで?」

「お前、この後暇か?暇だろ?バイトも決まってないんだろう?」

「暇暇言われるとなんかなと思うが、暇だよ。」

そう答えると、

「なら、うちに来いよ!俺んちで飯食ってけよ!」

「え!?突然いいのか?家の方は大丈夫なのか?」

「本当にお前は、遠慮と気遣いのおかんだよな。大丈夫だって!いつもこんな感じだし。」

「・・・いつもってお前・・・。俺、初めてお邪魔するのに何にも手土産とか持ってないし。」

「!?なにそれ!?お見合いかなんかかよ!友達のうち行くのに手土産って、そんなものいらねーよ!!もっと気軽に来いよ!ちなにみ、お前んち行く時も俺はこんな感じだ!」

威張るように胸を張って、笑顔を向けた。

「でも、お前の母親、夕飯作るの急に一人増えて大変じゃないのか?」

急にお邪魔するのは、ご迷惑じゃないか、俺なんかが・・・ああ、またネガティブ俺が顔を出す・・・


「まったく、お前は可愛いやつだな!仕方ない!家に電話するから安心しろ!」

そう言いながら、もう携帯電話をポケットから取り出し、『もしもしおかん?』と通話を始めた。

「うん。そう!わかった。」

そう言って、電話を切ると、


「大丈夫だって!今日は、近所の人から野菜たくさんもらったから野菜炒めよ!って言ってた。お前食えないものなんかある?」

「いや、ない。」


「よかった。俺もない。そんな話をしていたら、着いたな!俺んち!ただいまーおかん!」

俺を促すように玄関を開けてそういうと、奥から、

「おかんはやめてって言ってるでしょう!」

と言いながら、エプロンをつけた女性が出てきた。

倉島に似ている。

倉島は、母親似なんだなと、心の中で思った。


「突然お邪魔してすみません。戸ノ岡と言います。倉島くんにはいつもお世話になっています。」

そう言ってお辞儀をした。

顔を上げると、目を丸くして驚いた顔をしていた。


倉島にそっくりだな。

心の中で思わず笑ってしまいつつ、何に驚いているのだろうと思っていると、

「達也、お前の友達にしては、なんて礼儀正しい子なの!本当にお前の友達なの?」

と、言った。やっぱり親子だ。本当によく似ている。

「友達だよ!あだ名は『おかん』本当におかんみたいなことばかり言うんだよ!」

「だから、おかんはやめろ。」

思わずいつもの癖でそういうと、そういえば、さっき、倉島のお母さんも『おかんはやめて』って言ってたな。なんだか面白い。声を出して笑ってしまった。小さな声だったけど、倉島には聞こえたようで、

「おかんが初めて声を出して笑ったのを見た。」

と、珍しいものを見るような眼差しで俺をみた。


思わず、顔に手をやると、

「え!?おかしかったか?」


変だっただろうか?笑ったの失礼だったか?


内心、ネガティブ俺が焦りまくっている。



倉島を見ると、驚いた顔から破顔して、

「ああ!めちゃおかしかった!お前、笑うんだな!楽しいな!」


なにを言っているのか分からなかったけど、なんだか嬉しそうに笑う倉島を見て、ああ笑って大丈夫だったんだとホッとして、なんだか楽しくて仕方がない気持ちになったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。