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プリンとキス  作者: 雲母あお


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29/43

29.絵画教室の日

ゼミの飲み会が終わって、

そう!あの一発芸をやった飲み会のことだ。

が、終わってから、始めての絵画教室。



今日は、俺も教室の日だ。

なぜ、わざわざそんな断りを入れるのか?

と、お思いかもしれないが、何を隠そう、隔週で受講しているのに、毎週絵画教室に足を運んでいるからだ。


それは、もちろん、かのこさんが待っている『あのベンチ』へ行くためである。 

まあ、本当に俺を待っているかは別として。

うん、別だな。

俺が勝手に、待っていると言ってるだけで・・・勝手に行っていて・・・

ネガティヴ俺がまたまたつぶやく。

自然に足が向いてしまうのだから仕方がない。

そして、かのこさんは、最初の方はびっくりして、「心配してくれるのは嬉しいけど、私は大丈夫なので・・・えっと・・・」などと言っていたけれど、だんだん俺がベンチに行くのも「当たり前」のことと、思ってくれていると感じるようになった。

かのこさんの優しさにつけこんでいるように感じて、罪悪感が時々顔を出すけど、「迷惑です。」と言われない限り、俺はあのベンチでかのこさんと話していたいと思っている。

あの時間があるから、1週間また、ここで頑張れていると思っている。


だから、この、絵画教室が終わった後の「ベンチタイム」を失いたくない、俺にとってとても大切な時間になった。


そして、今日は「ベンチタイム」で、かのこさんに一発芸の報告をしようと、絵画教室に行く前から気合いが入っている。


大学を出ようとしたら、倉島が、

「お前、今日おかしいぞ。何かあるのか?と言っても、まあ、いつもおかしいといえばおかしいんだけどな。」


一言も二言も余計だ。


「あれ?じゃあ、いつもと変わらないのか?」

とか、倉島は、自分で自分に突っ込んで、アホなことを言ってる。


「何もないが。」


「そうか?何緊張してるんだよ。体に力はいってるぞ。」


「そうか?」


「そうだよ。今日お前、朝からずっとなんか変だぞ。上の空だったり、ブツブツ何か呟いたり、そわそわしたり、カバンを何度も見たりしてさ。」

「えっ!?」

「えって、自覚なしかよ。」

そういって、俺を見て可笑しそうに笑っている。


正直驚いた。

俺、今日1日そんな感じだったのか。

右手で顔を覆い、今日1日を思い出す。


そんなだった?俺?


思ったよりもずっと考えていたことを知って自分でも驚いていた。


かのこさんに、一発芸が成功した報告をしたい気持ちでいっぱいだったのは、自覚があるが、何度もカバンを見てた?

ちょっと恥ずかしい。


「すまん。変だったか?」

「いや、おかんはいつも変だから気にしてはないが、なぜそうなっているのか、原因は気になった。」

「そうか。」

「ぷっ、やっぱり話す気ないな。予想通りだ!」

倉島は、笑いながら、難しい事件を推理したような、ちょっと得意げの顔をした。


「なら、話さない。」

俺がそういうと、

「えっ?話そうとしてくれたのか?いや、聞きたい!話せよ。」


「お前の予想を外してはいけないからな。」

「いやいや、それは嬉しいはずれで・・・」

と、慌てて手をふり、違う違うと言っている。


俺は、『嬉しいはずれ』という言葉が気になっていた。

「俺の話聞くの嬉しいのか?」

そういうことなのか?思わず口に出すと、

「もちろん!嬉しいぞ!」

と、威張るように胸をはり、どうだ!と言わんばかりの顔をしている。


なにゆえ、俺のこと聞いて嬉しいと胸を張って言っているのか。。。


本当に倉島はよくわからん。

でも、なんだか嬉しい気がしてきた。


「ありがとう。でも言わないけどな。」

ペロっと舌を出して、いたずらっぽくそういうと、

「えーなんだよ。いえよー!おかん!」

と、学食から、構内をでて、道中絡まれながら、駅へと向かう。


倉島とは、倉島の家の前で別れた。


なんせ大学から駅に向かう途中の家だったのだ。

入学した日から大学に行くときは必ず通る道端沿いに家があった。


いや、多分他の学生はあまり通らないかもしれない。

これは誰にも会うのが嫌で、メイン通りの1番近道を通らず、裏手の住宅を学生に合わないように縫うように歩いていたから。


そんなことを考えていたら、倉島から、

「今日、家に寄って行けよ!」と誘われたけど、

「今日は用があるから寄れないけど、また誘ってくれ。」


絵画教室があるから、理由を言わず、丁寧に断った。


すると!倉島はいつものようににかっと笑って、

「お前にも用事があるんだな。」

と、とても失礼なことを言われたけど、

「いつでも来い!また明日な!」

と、嬉しそうに笑って、家に入って行った倉島の背中を見て、やっぱり憎めないやつだなと、好ましく思っている自分がいた。


さて、かのこさんに報告するぞ!


それから、俺は、大学の最寄り駅から電車で数駅、俺のアパートと、絵画教室がある駅に降り立ったのである。



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