28.サンキュー!倉島!
美希さんが友達と合流して、学食から立ち去った後、
「まじでアルバイト探してるんだな。」
しばらくして倉島がやってきた。
そして、
「おかん、お茶」
と、ふざけたことを言いながら、俺の前の席に座った。
おかんはよせと言いつつ、倉島のためにお茶を淹れる。
「あー、お前が淹れたお茶はマジうまい!心があらわれるようだ。」
「そうか。それはよかった。ならおかんはやめろ。しかし、なかなか見つからん。」
俺は、アルバイト情報誌を前に、頭を抱えていた。
授業を結構とっているので、いいなと思うバイトと時間が合わなかったりして、バイト探すの大変だと、少しへこたれそうになった。
そんな俺をみて、肩をポンポンとたたき、
「まぁ、ゆっくり探せよ。見つかるって。そのうち。」
といつものように、楽天家倉島は、ニカっと笑うのだった。
なんだかんだいって、この笑顔に救われている気がして解せぬが、やはり、倉島が見つかるっていうと、なんだか見つかる気がして不思議だ。
「そうだな。こんなにたくさんあるんだ。もう少し探してみるよ。」
アルバイト情報誌を片手にひらひらとしてみる。
「そうそう!そのいきだよオカン!諦めたらそこで終わりだ!」
うんうんと、素晴らしいことを言ったかのように、腕を組み目を閉じ、満足げにうなずいている。
「わかった。そうだな。諦めたら終わりだな。倉島、オカンっていうのやめろ。」
ちょっと睨むようにそういうと、
「あはははっ。さすが戸ノ岡!」
と言って、ツボにハマったのか、笑いがとまらない倉島なのであった。
おい。俺は、諦めないからな。
心の中で呟きながら、倉島が大笑いしている間、お茶を飲みながら、アルバイト情報誌のページを静かにめくるのだった。
「そういえば、倉島はバイトしてるのか?」
「俺?俺はしてない!しなくても大丈夫なお小遣いと、その範囲でしか遊んでない!というか、そもそも野球ばっかやってて、あんまり金使わないし、家近いから飯は家に帰って食ってるし、まあ、なんとか小遣いでやれてるから、そういえば考えたこともなかったな。」
うーん。
そうだな。
バイトか。
と、考えながら呟いている。
「そうか。やらなくて済むなら、好きなことに時間を使った方がいいと思う。」
心から思う。
やらなくていいことは、やらないに越したことはない。
俺が真面目にそう答えると、
「俺、お前のそういうとこ好き!」
と、なんだか嬉しそうな顔をし、
「好きだぜ!オカン!」
と、決め台詞を吐くようにいう倉島だった。
「よく分からんが、ありがとう。そして、オカンはやめろ。」
そういうと、倉島は、いつものように、ニカっと笑うのだった。
憎めないやつだな。
そんな倉島を、俺も気に入っている。
が、今は言うのをやめておこう。
なんか調子に乗る気がする。
なんて考えつつ、楽しいなと感じている自分に気がつき、心がほわっとあたたかく感じた。
「よく考えたら、学生アルバイトって今しかできない貴重な体験な気がしてきた。読み終わったら、それ俺にも見せてくれよ。」
そう言いながら、
俺の隣に座って、アルバイト情報誌を真剣に眺め出した倉島。
「ああ、いいけど。」
体をちょっと避けて、倉島にも見えやすいようにする。
「サンキュー。で、お前どんなの探してるの?」
「ええっと…」
付箋貼ったページをめくりながら、倉島に話し始めた。
なんでそのバイトが気になって、なんで候補止まりなのか、倉島に説明した。
そうしたら、一人で悩んでいた時には分からなかった気持ちや、理由が、なんとなくだけどはっきりしてきて、
そうか、俺、こういうとこが好きで、こういうのがあまり好きじゃないんだな・・・
とか、
少しずつ分かってきて、不思議だった。
倉島は、真剣に聞いてくれる。
なんだか、嬉しいな。
バイト見つかる気がする。
さっきまで、暗礁に乗り上げていたような気分だったのに、倉島と見ると、ちょっと楽しいなと、思ってしまった。
サンキュー!倉島!




